急増するサプライチェーン攻撃の脅威
サイバー攻撃の手口が日々巧妙化する中、新たな脅威として注目されているのが「サイバードミノ」と呼ばれるサプライチェーン攻撃です。これは、セキュリティが比較的脆弱な中小企業を足がかりにして、最終的に大企業を狙う攻撃手法です。
米SecurityScorecardの調査によると、サイバー攻撃被害の2件に1件が取引先を経由しているという驚くべき実態が明らかになっています。つまり、どれだけ自社のセキュリティを強化しても、取引先のセキュリティが甘ければ、そこから攻撃を受けるリスクがあるのです。
「サイバードミノ」が企業に与える深刻な影響
ビジョナルグループのアシュアードが実施した調査では、大手企業の73%が取引先企業に対してセキュリティ上の不安を感じており、実に64%で取引先起因のセキュリティ被害が発生していることが判明しました。
この背景には、企業が抱える取引先の数の多さがあります。企業規模によっては数千、数万社に上ることもあり、すべての取引先のセキュリティ状況を把握することは現実的に困難です。
サプライチェーン攻撃の典型的な流れ
- 標的選定:攻撃者がセキュリティの弱い中小企業を特定
- 初期侵入:脆弱性を突いて中小企業のシステムに侵入
- 権限拡大:システム内で権限を拡大し、重要情報を窃取
- 横展開:取引先である大企業への攻撃経路を確保
- 最終攻撃:本来の標的である大企業を攻撃
個人でもできるサプライチェーン攻撃対策
企業レベルの対策だけでなく、個人や小規模事業者でも実践できる対策があります。まず重要なのは、基本的なセキュリティ対策の徹底です。
1. アンチウイルスソフト の導入と定期更新
サプライチェーン攻撃の多くは、マルウェアや不正プログラムを使用します。信頼できるアンチウイルスソフト
を導入し、定期的にアップデートすることで、既知の脅威から身を守ることができます。特に、リアルタイム保護機能があるものを選ぶことが重要です。
2. VPN でネットワーク通信を保護
取引先とのやり取りや重要なデータのアップロード・ダウンロード時には、VPN
を使用して通信を暗号化しましょう。これにより、通信の盗聴や改ざんを防ぐことができます。
3. 定期的なソフトウェア更新
OS、ブラウザ、各種アプリケーションは常に最新版に更新しておきましょう。セキュリティパッチが含まれることが多く、既知の脆弱性を塞ぐことができます。
企業が実践すべき包括的なサプライチェーンセキュリティ
取引先セキュリティ評価の重要性
アシュアードが提供開始した「Assured企業評価」のように、取引先のセキュリティ状況を客観的に評価する仕組みが注目されています。これは200以上の項目で取引先企業のセキュリティリスクを評価し、統一された指標で共有するサービスです。
具体的な対策項目
- 取引先選定基準の明確化:セキュリティレベルを取引開始の判断基準に含める
- 定期的なセキュリティ監査:年1回以上の頻度で取引先のセキュリティ状況をチェック
- インシデント対応計画の策定:取引先でセキュリティ事故が発生した場合の対応手順を明確化
- セキュリティ教育の提供:取引先向けのセキュリティ研修やガイドライン提供
個人情報保護とプライバシー対策
サプライチェーン攻撃では、個人情報や機密データが狙われることが多いため、以下の対策も重要です:
- データの最小化:必要以上の個人情報を収集・保存しない
- 暗号化:保存データと通信データの両方を暗号化
- アクセス制御:重要なデータへのアクセスを必要最小限に制限
- ログ管理:データアクセスの履歴を記録し、異常検知に活用
まとめ:今すぐ始められるサプライチェーンセキュリティ対策
サイバードミノによる被害を防ぐためには、自社だけでなく取引先全体のセキュリティレベル向上が不可欠です。個人や小規模事業者の方は、まず信頼できるアンチウイルスソフト
とVPN
の導入から始めることをおすすめします。
企業においては、取引先のセキュリティ評価を定期的に実施し、リスクの高い取引先に対しては適切な支援や指導を行うことが重要です。セキュリティは「最も弱い輪」で決まるため、サプライチェーン全体でのセキュリティ向上に取り組むことが、現代のサイバー脅威に対する最も効果的な防御策と言えるでしょう。