【現役CSIRT解説】療育福祉センター個人情報漏えい事件から学ぶ!医療機関でも起こる情報セキュリティの落とし穴

高知県療育福祉センターで発生した個人情報漏えい事件の概要

7月に高知県の療育福祉センターで起きた個人情報漏えい事件は、デジタル化が進む医療現場でも「人的ミス」が最大のセキュリティリスクであることを物語っています。

事件の経緯:

  • 看護師がパソコン画面で「1人手前」の患者情報を表示
  • 別患者の名前、生年月日、住所を診断書に記入
  • 本来の会計時確認を省略し、その場で直接手渡し
  • 保護者がその場で間違いに気づき発覚

私がこれまで対応してきた医療機関のインシデント対応で、このような「基本的な確認不足」による情報漏えいは決して珍しくありません。むしろ、サイバー攻撃よりも頻繁に発生しているのが現実です。

医療機関で頻発する個人情報漏えいパターン

パターン1:電子カルテシステムの操作ミス

昨年対応した案件では、ある中規模病院で医師が電子カルテの画面切り替えを間違え、A患者の検査結果をB患者の家族に説明してしまいました。がん告知という深刻な内容だったため、両家族への影響は甚大でした。

パターン2:印刷物の取り違え

プリンター周りでの書類取り違えも多発しています。特に忙しい外来診療時間帯に、複数の患者の検査結果や診断書が同時印刷されると、スタッフが慌てて取り違えるケースが頻発します。

パターン3:メール誤送信による大量漏えい

個人クリニックで、患者リストを含むExcelファイルを誤って全患者にBCC送信すべきところをCC送信し、約300名の個人情報が一斉漏えいした事例もありました。

なぜ医療機関でこうした事故が多発するのか

1. 時間的プレッシャーとマルチタスク

医療現場は常に時間との勝負です。限られた時間内で多くの患者を診なければならず、確認作業が疎かになりがちです。

2. システムの複雑化とヒューマンエラー

電子カルテや各種医療システムの導入で効率化は図られましたが、操作の複雑さが新たなリスクを生んでいます。

3. 情報セキュリティ意識の格差

医療従事者の中でも、ITリテラシーや情報セキュリティ意識にばらつきがあります。

個人レベルでできる情報セキュリティ対策

家庭のパソコンやスマホのセキュリティ強化

医療機関だけでなく、私たち個人の情報も狙われています。実際、医療関係者を狙ったフィッシング攻撃で、自宅のパソコンから病院システムに不正アクセスされた事例も確認しています。

個人でできる基本対策として、アンチウイルスソフト 0の導入は必須です。特にリアルタイム保護機能があるものを選ぶことで、未知のマルウェアからも守れます。

インターネット接続時のプライバシー保護

フリーWi-Fiを使う機会が多い方は、VPN 0の利用をおすすめします。医療機関のスタッフがカフェで業務連絡を取る際にも、暗号化された通信が重要になります。

中小企業・クリニック向けセキュリティ対策

Webサイトの脆弱性診断の重要性

多くの医療機関がホームページで予約システムや患者向けサービスを提供していますが、これらのセキュリティは大丈夫でしょうか?

私が対応した事例で、地方の歯科医院のWebサイトが改ざんされ、患者情報が流出した案件がありました。定期的なWebサイト脆弱性診断サービス 0で事前にリスクを発見できていれば防げた事故でした。

スタッフ教育とマニュアル整備

技術的対策だけでなく、人的要因への対策も重要です:

  • 定期的な情報セキュリティ研修の実施
  • ダブルチェック体制の構築
  • インシデント発生時の報告体制整備

今回の事件から学ぶべき教訓

「基本的な確認」の徹底こそが最強の防御

今回の療育福祉センターの事件は、高度なサイバー攻撃ではなく「確認不足」が原因でした。これは私たちが日常的に気をつけるべき点でもあります。

システムに依存しすぎない姿勢

デジタル化は効率を上げますが、最終的には人間の注意力と責任感が情報を守ります。

迅速な対応と透明性

高知県が翌日に謝罪し、再発防止策を公表したのは評価できます。隠蔽することなく、問題を公にして改善に取り組む姿勢が信頼回復につながります。

まとめ:個人情報保護は全員の責任

医療機関の個人情報漏えい事件は他人事ではありません。私たち一人ひとりが情報セキュリティ意識を高め、適切な対策を講じることが重要です。

特に以下の点を心がけましょう:

今回の療育福祉センターの事件を教訓に、私たち全員が情報セキュリティについて真剣に考える機会にしていきましょう。

一次情報または関連リンク

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