証券口座乗っ取り被害が急増!補償格差の実態とフォレンジック専門家が教える防御策

証券口座の不正アクセス被害が深刻化

証券口座への不正アクセスによる被害が2025年に入ってからも続発しており、投資家の間で不安が広がっています。私たちフォレンジックアナリストの現場では、従来のフィッシング詐欺とは一線を画す高度なサイバー攻撃手法が確認されており、個人投資家だけでなく企業の役員クラスまでもが標的となっているのが実情です。

特に注目すべきは、NISA口座までもが攻撃対象となっている点です。これまで「少額投資だから大丈夫」と考えていた方々も、もはや安全とは言えない状況になっています。

被害の実態:1時間で2000万円の損失も

実際の被害事例を見ると、その深刻さがよく分かります。ある個人投資家のケースでは、朝の通勤時間帯にスマートフォンで株価をチェックしていたところ、リアルタイムで自分の保有株が勝手に売買されている様子を目撃。わずか1時間程度で約2000万円の損失を被りました。

この事例で特に恐ろしいのは、被害者が「目の前で乗っ取りが進行していく」様子を見ていたにも関わらず、すぐには取引を停止できなかった点です。犯罪者グループは被害者のログイン情報だけでなく、取引パスワードや二段階認証まで突破していたのです。

証券会社による補償対応の格差

今回の不正アクセス被害で最も問題視されているのが、証券会社による補償対応の格差です。

対面証券:事実上の全額補償

野村証券をはじめとする対面証券大手(大和、SMBC日興、三菱UFJモルガン・スタンレー、みずほ)は、顧客の口座を「原状回復」する方針を決定しました。これは事実上の全額補償にあたります。

野村ホールディングスのCFOは決算会見で「被害に遭われたほぼ全てのお客様と直接コミュニケーションがとれている。今後も寄り添って対応していきたい」と述べ、2025年4〜6月期だけで約66億円の補償費用を計上したことを明らかにしています。

ネット証券:半額補償が主流

一方、ネット証券各社の対応は大きく異なります。多くのネット証券では被害額の半額程度の補償にとどまっており、被害者の中には証券会社を相手に提訴に踏み切るケースも出てきています。

この格差の背景には、対面証券とネット証券のビジネスモデルの違いがあります。対面証券は手厚いサポートを売りにしている一方、ネット証券は手数料の安さと手軽さで顧客を獲得してきました。しかし、セキュリティ事故が発生した際の対応格差は、利用者にとって大きな判断材料となりそうです。

フォレンジック分析から見える攻撃手法の高度化

私たちが現場で目にする証券口座乗っ取り事件の手法は、年々巧妙化しています。従来のフィッシングメールやマルウェア感染だけでなく、複数の攻撃ベクトルを組み合わせた「多段階攻撃」が主流となっています。

闇サイトでの情報売買

特に深刻なのが、ダークウェブ上での個人情報取引です。私たちの調査では、証券口座のログイン情報が約14万件も闇サイトで売買されていることが判明しています。これらの情報は、過去の大規模データ漏洩事件で流出したパスワードと、SNSやその他のサービスで収集された個人情報を組み合わせて作成されています。

ワンタイムパスワードの突破

さらに驚くべきことに、一部の攻撃では「ワンタイムパスワード」までもが突破されています。これは、SIMスワッピング攻撃や、マルウェアによるSMS傍受などの高度な技術が使われているためです。

多くの個人投資家が「二段階認証を設定しているから安全」と考えていますが、現実はそう甘くありません。

個人ができる効果的な防御策

フォレンジックアナリストとして、個人投資家の皆さんに実践していただきたい防御策をご紹介します。

1. 強固な認証基盤の構築

まず最も重要なのは、アンチウイルスソフト 0の導入です。証券取引に使用するデバイスには、必ず信頼性の高いセキュリティソフトをインストールしてください。無料版ではなく、リアルタイム保護機能を備えた有料版を選ぶことが重要です。

2. ネットワークセキュリティの強化

自宅のWi-Fi環境だけでなく、外出先での取引時にはVPN 0の利用を強く推奨します。公衆Wi-Fiでの証券取引は、盗聴や中間者攻撃のリスクが非常に高いためです。

3. メールセキュリティの徹底

証券会社を騙るフィッシングメールは日々巧妙化しています。「メールはすべて疑ってかかる」という姿勢で、リンクのクリックや添付ファイルの開封は避けましょう。

4. 定期的な口座監視

最低でも1日1回は口座残高と取引履歴をチェックしてください。不審な取引を早期発見することで、被害を最小限に抑えることができます。

企業が取るべきセキュリティ対策

証券会社や金融機関も、この事態を受けて対策強化を進めています。金融庁と日本証券業協会は、多要素認証の必須化などを盛り込んだ指針改定案を策定しました。

Webサイトの脆弱性対策

特に金融関連のWebサービスを運営している企業では、Webサイト脆弱性診断サービス 0の定期的な実施が欠かせません。攻撃者は常にシステムの弱点を探しており、発見されていない脆弱性(ゼロデイ脆弱性)を悪用した攻撃も増加しています。

今後の展望と対策

証券口座乗っ取り被害のペースは2025年6月以降やや縮小傾向にあるものの、完全に解決したわけではありません。犯罪者グループの手法は常に進化しており、新たな攻撃手法が確認される可能性があります。

個人投資家としては、「自分だけは大丈夫」という考えを捨て、常に最新のセキュリティ対策を心がけることが重要です。また、証券会社選びの際には、手数料だけでなくセキュリティ対策や補償内容も重要な判断基準として検討することをおすすめします。

投資家が今すぐ確認すべきポイント

1. 利用している証券会社の補償内容
2. 現在設定している認証方法の見直し
3. 定期的なパスワード変更の実施
4. セキュリティソフトの更新状況

これらの確認と対策実施により、証券口座乗っ取り被害のリスクを大幅に軽減することができます。

一次情報または関連リンク

朝日新聞デジタル – 証券口座乗っ取り、対面は「全額」ネットは「半額」補償 何が判断分けた

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