SharePoint脆弱性CVE-2025-53770が企業に与える深刻な脅威
私がフォレンジック調査で関わった事案の中でも、SharePointの脆弱性を狙った攻撃は特に悪質で、被害の影響範囲が広範囲に及ぶケースが多いんです。
今回GMOサイバーセキュリティが発表したCVE-2025-53770は、CVSSスコア9.8という最高レベルの危険度を持つ脆弱性。実際の攻撃現場を数多く見てきた立場から言うと、これは本当に危険な脆弱性です。
実際のインシデント事例から見る被害の実態
昨年私が調査した中堅製造業A社の事例では、SharePointの脆弱性を突かれて以下のような被害が発生しました:
- 社内の機密文書約5万件が外部流出
- 顧客情報データベースへの不正アクセス
- ランサムウェア感染による業務停止3日間
- 復旧費用と損害賠償で約2億円の被害
攻撃者は最初SharePointの脆弱性から侵入し、その後社内ネットワーク全体に拡散していったんです。
CVE-2025-53770の技術的詳細と攻撃手法
この脆弱性の特に恐ろしい点は「リモートコード実行」が可能であることです。つまり、攻撃者がインターネット経由で特別な認証なしに、あなたの会社のSharePointサーバー上で好きなプログラムを実行できてしまうんです。
攻撃者が狙う典型的なパターン
- 初期侵入:SharePointの脆弱性を悪用してシステム内部に侵入
- 権限昇格:管理者権限を奪取
- 横展開:Active Directoryなど他のシステムにも侵入
- データ窃取:機密情報を外部に送信
- 破壊活動:ランサムウェア展開や証拠隠滅
中小企業こそ狙われやすい理由
フォレンジック調査の現場で感じるのは、中小企業ほどSharePointの脆弱性対策が後手に回りがちだということです。
中小企業が陥りやすい落とし穴
- IT専任者がいないため脆弱性情報をキャッチできない
- アップデート作業を先延ばしにしてしまう
- SharePointの利用状況を把握していない
- 外部からアクセス可能な設定になっていることに気づいていない
実際、私が調査した小売業B社では、3年前から放置されていたSharePointサーバーが攻撃の踏み台にされていました。経営者も「そんなサーバーがあったなんて知らなかった」と言っていたほどです。
GMO ASMツールによる検出機能の実用性
今回GMOが機能拡張したASMツールは、非常に実用的だと感じています。特に以下の2点の診断項目が追加されたのは大きな前進です:
新追加された診断機能
- 既知脆弱性の検出:SharePoint serverの脆弱性を自動検知
- 高リスク脆弱性の可能性判定:CVE-2025-53770の存在可能性を非侵襲的に判別
特に「非侵襲的な手法」というのがポイントで、実際のサービスに影響を与えることなく脆弱性をチェックできるんです。
緊急で実施すべき対策手順
CSIRTメンバーとして、以下の優先順位で対策を実施することを強く推奨します:
即座に実施すべき対策(今日中)
- SharePointサーバーの棚卸し:どこにどんなSharePointがあるか把握
- 外部アクセスの遮断:緊急措置として外部からのアクセスを一時的に遮断
- ログの保全:既に攻撃を受けている可能性があるため、ログを保存
1週間以内に実施すべき対策
- パッチ適用:Microsoftから提供されるセキュリティパッチの適用
- 脆弱性診断:Webサイト脆弱性診断サービス
による専門的な診断実施
- アクセス制御の見直し:最小権限の原則に基づく設定変更
個人ユーザーも無関係ではない脅威
「うちは企業じゃないから関係ない」と思っている個人の方も要注意です。在宅勤務でVPN経由で会社のSharePointにアクセスしている場合、あなたのPCが攻撃の入り口になる可能性があります。
個人ができる対策
- セキュリティソフトの導入:アンチウイルスソフト
で悪意のあるファイルをブロック
- VPNの利用:VPN
で通信経路を暗号化
- 定期的なシステム更新:OSやアプリケーションを常に最新に保つ
フォレンジック調査で見えた攻撃の実態
SharePoint攻撃の怖いところは、侵入から実際の被害発生まで数ヶ月かかることがあることです。私が調査したケースでは、最初の侵入から実際にランサムウェアが展開されるまで6ヶ月も潜伏していました。
攻撃者の潜伏戦略
- 長期間にわたって情報収集を継続
- バックアップシステムまで感染拡大
- 復旧を困難にするため、ログも削除
- 最大の被害を与えるタイミングで攻撃実行
経営層が理解すべきリスク
CVE-2025-53770のような脆弱性は、単なるIT部門の問題ではありません。経営リスクそのものです。
想定される経営への影響
- 事業継続性:業務停止による売上損失
- 顧客信頼:情報漏洩による信頼失墜
- 法的責任:個人情報保護法違反による罰金
- 復旧コスト:システム復旧と損害賠償
まとめ:今すぐ行動を起こそう
SharePoint脆弱性CVE-2025-53770は、放置すれば確実に悪用される危険な脆弱性です。フォレンジック調査の現場で数々の被害企業を見てきた経験から言えるのは、「対策は早ければ早いほど良い」ということです。
明日また別の緊急案件が入って対策が後回しになる前に、今日中にでも現状把握から始めてください。あなたの会社の未来は、今日の行動にかかっています。