最近、韓国で起きている一連のサイバー攻撃事件を見ていると、正直ゾッとします。SKテレコムやKTといった通信業界の巨人が軒並みやられているんです。しかも、これらの攻撃は一夜にして起きたものではなく、攻撃者が数年かけて周到に準備してきた結果だったということが判明しています。
今回は現役CSIRTメンバーとして、これらの事件を詳しく分析し、日本の企業や個人が今すぐ取るべき対策について解説していきます。
韓国サイバー攻撃ラッシュの実態
2025年4月以降に韓国で発覚した主要なサイバー攻撃事件をまとめると以下のようになります:
- SKテレコムUSIM不正利用事件:少なくとも4年前から侵入拠点が仕掛けられていた
- KTフェムトセル悪用事件:小型基地局を悪用した不正少額決済被害
- 中国系ハッキング集団による攻撃:公的機関や通信会社が標的
- イエス24ランサムウェア攻撃:オンライン書店への暗号化攻撃
- ロッテカード顧客情報流出:金融機関での個人情報漏洩
これらの事件に共通するのは、攻撃者が長期間かけて標的組織の情報を収集し、複数の侵入口を確保していたという点です。従来の「侵入→即座に攻撃」というパターンとは明らかに異なる、より高度で戦略的なアプローチが取られています。
国家関与型攻撃の恐るべき手口
私がフォレンジック調査で扱った類似事例でも、国家関与型とみられる攻撃では以下のような特徴が見られました:
長期潜伏型の侵入
ある日本企業の事例では、初回侵入から実際の攻撃まで2年以上の空白期間がありました。攻撃者はその間、システム内部を静かに探索し、重要なアクセス権限を段階的に獲得していたのです。
複数経路からの情報収集
KT事件でも明らかになったように、攻撃者はフェムトセルの悪用だけでなく、利用者名や電話番号などの情報を別のルートから事前に入手していました。これは「サプライチェーン攻撃」の一種で、一つの脆弱性に頼らず、複数の侵入口を確保する高度な戦術です。
企業の「継ぎはぎ対応」では限界
韓国の通信業界は政治的圧力を受けて5年間で1兆ウォンの投資を約束しましたが、記事でも指摘されているように「具体的に何が改善されるのかは不透明」な状況です。
これは日本企業でもよく見る光景です。インシデント発生後に慌てて対策を講じるものの、根本的な問題解決には至らず、また別の経路から攻撃を受けてしまうという悪循環に陥っているケースが非常に多いんです。
中小企業で実際に起きた事例
先日調査した製造業A社では、ランサムウェア攻撃を受けた後、新しいアンチウイルスソフト
を導入しただけで「対策完了」と考えていました。しかし、フォレンジック調査の結果、攻撃者は別のWebアプリケーションの脆弱性を通じて再侵入を試みていることが判明しました。
このようなケースでは、Webサイト脆弱性診断サービス
によって全体的なセキュリティ状況を把握することが不可欠です。
持続可能なセキュリティ戦略の構築
国家関与型の攻撃に対抗するためには、以下のような継続的な取り組みが必要です:
1. 売上の一定割合をセキュリティに投資
私が推奨しているのは、売上の3-5%を継続的にセキュリティ投資に充てることです。これにより、新たな脅威に対して機動的に対応できる体制を維持できます。
2. 多層防御の実装
単一の防御手段に頼らず、以下のような多層的な対策を組み合わせることが重要です:
- エンドポイント保護(アンチウイルスソフト
の導入)
- ネットワーク通信の暗号化(VPN
の活用)
- 定期的な脆弱性診断(Webサイト脆弱性診断サービス
の実施)
- 従業員のセキュリティ教育
3. インシデント対応計画の策定
攻撃を100%防ぐことは困難です。重要なのは、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応できる体制を整えておくことです。
個人ユーザーが取るべき対策
企業だけでなく、個人ユーザーも国家関与型攻撃の標的になる可能性があります。特に以下のような対策は必須です:
- 信頼性の高いアンチウイルスソフト
の導入:未知のマルウェアにも対応できるAI搭載型がおすすめ
- VPN
の常時使用:公衆Wi-Fiでの通信暗号化は必須
- 定期的なソフトウェアアップデート:脆弱性を放置しない
- 多要素認証の有効化:パスワード単体での認証は危険
アジア太平洋地域での中国系ハッカー集団の活発化
米グーグル傘下のマンディアント社の報告によると、アジア太平洋地域で中国系ハッカー集団の活動が活発化しています。日本も例外ではなく、今後さらなる攻撃の激化が予想されます。
このような状況下では、国際的な共助体制の構築も重要ですが、まずは自社・自身のセキュリティレベルを適切に保つことが最優先です。
まとめ:今すぐ始めるべき対策
韓国で起きている一連の事件は、決して「対岸の火事」ではありません。同様の攻撃が日本でも起きる可能性は十分にあります。
重要なのは事後対応ではなく、継続的な予防策です。個人であれば信頼性の高いアンチウイルスソフト
とVPN
の導入、企業であればWebサイト脆弱性診断サービス
による定期的な脆弱性チェックから始めてみてください。
サイバーセキュリティは「やったから安全」ではなく「続けるから安全」なのです。今日からでも遅くありません。できることから始めていきましょう。