韓国で検察詐称ボイスフィッシング詐欺が急増中
韓国の最高検察庁が運営する「チンセンター」への相談件数が、ここ1年間で驚異的な増加を見せています。2025年1月から8月までの期間で5万920件の相談が寄せられ、これは前年同期の2万7496件と比較して約2倍、月平均では実に**3倍近い急増**となっています。
私がフォレンジックアナリストとして数多くの詐欺事例を分析してきた中で、これほど短期間で急激に増加した詐欺手法は珍しく、その巧妙さには正直驚かされます。
チンセンターとは何か
チンセンターは、市民がボイスフィッシング犯罪組織から検察官や捜査官の名前、令状、出席要求書などを提示された際に、最高検察庁が即座に真偽を確認するサービスです。つまり、「本当に検察から連絡が来ているのか?」を確認できる窓口というわけですね。
知能化する検察詐称の手口
最近のボイスフィッシング詐欺師たちの手口は、私たちが想像する以上に巧妙化しています。
実在する検事の写真を悪用
実際に勤務している検察官のプロフィール写真を入手し、それを使って商品券購入を誘導する手口が報告されています。被害者は本物の検察官だと信じ込んでしまい、指示に従ってしまうのです。
精巧な偽造書類の作成
裁判所行政処長名義の「押収捜索・拘束令状許可書」を偽造し、これを証拠として提示する事例も確認されています。一般市民にとって、こうした公文書の真偽を判断するのは非常に困難です。
勤務時間外を狙った「電子送達」詐欺
勤務時間外に「電子送達」を口実として偽サイトへの接続を誘導したり、偽造された拘束令状を提示する新たな手口も登場しています。
なぜ検察詐称詐欺が急増しているのか
フォレンジック調査の現場で感じるのは、詐欺師たちが**権威への恐怖心理**を巧みに利用していることです。検察官からの連絡というだけで、多くの人が冷静な判断力を失ってしまいます。
特に以下のような要因が急増の背景にあると考えられます:
- デジタル技術の発達により、偽造書類の作成が容易になった
- SNSや公開情報から実在する検察官の情報を入手しやすくなった
- コロナ禍以降、非対面でのやり取りが一般化し、違和感を感じにくくなった
- 高齢者を中心に、デジタルリテラシーが追いついていない
個人でできる対策と防御法
私がCSIRTでの経験を通じて学んだ、効果的な防御策をお伝えします。
1. 冷静な対応を心がける
検察官を名乗る人物から連絡があった場合、まず深呼吸をして冷静になることが重要です。本当に緊急の案件であれば、正式な手続きを踏んで連絡があるはずです。
2. 独自に確認を取る
相手から提示された連絡先ではなく、自分で調べた検察庁の公式番号に電話して確認しましょう。これだけで多くの詐欺を防げます。
3. 個人情報を絶対に教えない
本物の検察官であっても、電話で口座番号や暗証番号、個人情報を聞くことはありません。これらの情報を求められたら、間違いなく詐欺です。
4. セキュリティソフトの活用
怪しいサイトへのアクセスを防ぐため、信頼できるアンチウイルスソフト
を導入しておくことをお勧めします。これにより、偽サイトへの誘導を未然に防げます。
企業が取るべき対策
個人だけでなく、企業も従業員を守るための対策が必要です。
従業員教育の実施
定期的な詐欺対策研修を実施し、最新の手口について情報共有することが重要です。特に経理担当者や管理職は標的になりやすいため、重点的な教育が必要です。
通信環境の見直し
社外からのアクセスが必要な業務では、安全なVPN
を利用して通信を暗号化し、不正アクセスのリスクを軽減しましょう。
Webサイトのセキュリティ強化
自社のWebサイトが詐欺サイトの模倣対象とならないよう、Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施し、脆弱性の早期発見・修正に努めることが重要です。
被害に遭ってしまった場合の対処法
もし詐欺に遭ってしまった場合、迅速な対応が被害の拡大を防ぎます。
即座に金融機関に連絡
口座情報を教えてしまった場合は、すぐに該当する金融機関に連絡し、口座の凍結を依頼しましょう。
警察への届出
証拠保全のため、通話記録やメッセージのスクリーンショットを保存し、速やかに警察に被害届を提出してください。
フォレンジック調査の活用
企業が被害を受けた場合、詳細な被害状況の把握と再発防止策の策定のため、専門のフォレンジック調査を検討することをお勧めします。
まとめ:日頃の備えが何より重要
ボイスフィッシング詐欺の手口は日々巧妙化しており、完全に防ぐことは困難です。しかし、正しい知識と適切な対策があれば、被害を大幅に減らすことができます。
特に重要なのは:
– 権威を装った連絡に対する健全な疑いの心
– 独自の確認手段の確保
– 適切なセキュリティツールの導入
– 定期的な情報更新と教育
私たちフォレンジックアナリストが現場で見る被害の多くは、「まさか自分が」という油断から生まれています。この記事が皆さんの防御力向上の一助となれば幸いです。