最近、企業のIT環境がどんどん複雑になってきているのを肌で感じています。フォレンジックアナリストとして数々のインシデント対応に携わってきた経験から言うと、特にハイブリッドクラウド環境での脅威は年々深刻化しています。
先日、Cloudbase株式会社が発表した新機能「Cloudbase Sensor」のニュースを見て、「ついにこういうソリューションが出てきたか」と思いました。今回は、なぜオンプレミスとクラウドの統合セキュリティ管理が重要なのか、実際の被害事例を交えてお話しします。
実際にあったハイブリッド環境での攻撃事例
昨年対応した中小製造業のケースが印象的でした。この企業は基幹システムをオンプレミスで運用しながら、新しいサービスはクラウドで展開していました。攻撃者はまずクラウド側の設定ミスを狙って侵入し、そこから社内ネットワークに横展開。最終的にはオンプレミスの重要なデータベースまで到達されてしまいました。
問題は、クラウドとオンプレミスそれぞれ別々のセキュリティツールで管理していたため、攻撃の全体像を把握するまでに時間がかかったことです。「こっちでは異常を検知したけど、あっちでは何も起きていない」という状況が続き、結果として被害が拡大してしまったんです。
脆弱性管理の落とし穴
特に厄介なのが脆弱性管理です。クラウド側では自動アップデートが効いていても、オンプレミス側で古いバージョンのソフトウェアが放置されているケースをよく見かけます。
先月調査した事例では、オンプレミスのWebサーバに3年前の脆弱性が残っていて、そこが攻撃の入り口になっていました。企業側は「クラウドのセキュリティは万全だから大丈夫」と思っていたのですが、実際にはオンプレミス側に大きな穴が空いていたんです。
SBOM(Software Bill of Materials)の重要性
最近のインシデント対応で感じるのは、「何がどこにインストールされているか分からない」企業が意外と多いことです。特にハイブリッド環境では、オンプレミスとクラウドそれぞれに散らばったソフトウェア資産を把握するのが困難です。
SBOMを自動生成できる機能は、フォレンジック調査でも非常に重要です。インシデントが発生した際、影響範囲を特定するために「どのシステムに脆弱なコンポーネントが含まれているか」を素早く把握する必要があります。手動で調べていたら、それだけで数日かかってしまいます。
個人ユーザーも他人事じゃない
「うちは大企業じゃないから関係ない」と思われがちですが、実は個人や小規模事業者こそ注意が必要です。最近は個人でもクラウドストレージとローカルPCを併用している方が多いですよね。
テレワークが普及した影響で、個人のPCがマルウェアに感染し、そこからクラウドサービスのアカウントが乗っ取られるケースが増えています。こうした場合、アンチウイルスソフト
できちんと防御することが第一歩です。
また、公共Wi-Fiを使ってクラウドサービスにアクセスする際は、VPN
で通信を暗号化することをお勧めします。実際に、空港のWi-Fiで中間者攻撃を受けてクラウドアカウントを乗っ取られた事例も報告されています。
優先度付けの自動化がカギ
SSVCベースでの脆弱性の優先度判定機能も注目ポイントです。フォレンジック調査をしていると、「どの脆弱性から対処すべきか分からない」という声をよく聞きます。特に中小企業では、セキュリティ専任者がいないことも多く、数百件の脆弱性情報を前に途方に暮れてしまうケースが少なくありません。
「即時対応」「優先対応」「随時対応」「対応不要」の4段階自動判定は、限られたリソースを効率的に活用するために非常に有効です。実際の攻撃では、攻撃者も「対処しやすい脆弱性」から狙ってくるので、この優先順位は実践的だと感じます。
まとめ:統合的なセキュリティ管理の時代へ
ハイブリッドクラウド環境のセキュリティは、もはや「点」ではなく「面」で考える必要があります。オンプレミスとクラウドを別々に管理していては、攻撃者の巧妙な手口に対応できません。
企業規模に関わらず、統合的なセキュリティ管理の重要性は今後ますます高まっていくでしょう。個人レベルでも、アンチウイルスソフト
とVPN
を組み合わせることで、基本的なセキュリティ対策を講じることができます。
サイバー攻撃は日々進化しています。私たちも対応策をアップデートし続けなければなりません。今回のようなソリューションの登場は、その一歩として評価できると思います。
一次情報または関連リンク
Cloudbase、オンプレミス環境やプライベートクラウドの資産管理および脆弱性の検出・管理を実現する新機能「Cloudbase Sensor」をリリース