2025年10月20日、楽天グループで大規模なシステム障害が発生し、楽天市場や楽天ペイなど主要サービスが一時利用困難となりました。午前11時頃に発生したこの障害について、現役のCSIRTメンバーとしての視点から詳しく解説します。
楽天システム障害の概要と影響範囲
今回の障害は楽天のデータセンター内の一部システムで発生し、以下のサービスに影響が出ました:
- 楽天市場(ログイン・購入機能)
- 楽天ペイ(QRコード決済サービス)
- その他楽天関連サービス
幸い、楽天側の発表では「外部からのサイバー攻撃によるものではない」とされており、内部システムの技術的な問題が原因とのことです。正午頃には復旧作業が進み、各サービスの不具合は解消に向かっているとのことでした。
システム障害とサイバー攻撃の見分け方
フォレンジック調査の現場では、システム障害とサイバー攻撃を素早く区別することが重要です。今回の楽天の件では以下の特徴からサイバー攻撃ではないと判断されたと考えられます:
内部障害の特徴
- 特定の時間帯に集中して発生
- 影響範囲が予測可能
- システムログに外部からの異常アクセスが見られない
- 復旧パターンが通常の運用手順に沿っている
サイバー攻撃の場合の特徴
- 不規則な時間帯での発生
- 予期しない影響範囲の拡大
- 外部IPからの大量アクセスや異常な通信パターン
- データの改ざんや流出の痕跡
大手ECサイトでの過去の事例分析
過去の事例を見ると、大手ECサイトは様々なリスクに晒されています:
2019年 某大手ECサイトの事例
決済システムへの不正アクセスにより、約40万件のクレジットカード情報が流出。被害総額は数億円に上り、信用回復まで1年以上を要しました。
2022年 海外大手企業の事例
ランサムウェア攻撃により全サービスが48時間停止。復旧費用だけで数十億円、売上機会損失を含めると被害は計り知れませんでした。
個人ユーザーができる対策
大手サービスでも障害やセキュリティインシデントは発生します。個人ユーザーとして備えておくべき対策をご紹介します:
1. 複数の決済手段を準備
楽天ペイのような電子決済サービスが使えなくなった場合に備え、複数の決済手段を用意しておきましょう。
2. セキュリティソフトの導入
システム障害に紛れて悪意のあるフィッシングサイトが出現することがあります。アンチウイルスソフト
を導入し、偽サイトからの保護を徹底しましょう。
3. 安全な通信環境の確保
外出先での買い物時は、公衆Wi-FiではなくVPN
を使用することで、通信内容の傍受や改ざんから身を守ることができます。
企業が取るべきシステム防護策
今回の楽天の迅速な対応は評価できますが、中小企業では同様の対応は困難です。特に重要なのが以下の対策です:
Webサイトの脆弱性診断
システム障害時に攻撃者が脆弱性を狙ってくるケースが多々あります。定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
により、事前にリスクを把握し対策を講じることが重要です。
インシデント対応体制の整備
障害発生時の対応手順を明確化し、顧客への迅速な情報提供体制を構築しておくことで、信用失墜を最小限に抑えることができます。
今回の教訓と今後の展望
楽天のような大手企業でも予期しないシステム障害は発生します。重要なのは:
- 迅速かつ透明性のある情報公開
- 原因調査の徹底と再発防止策の実施
- ユーザーへの適切な補償対応
個人ユーザーとしても、一つのサービスに依存しすぎず、セキュリティ対策を怠らないことが大切です。