韓国金融業界で明らかになった深刻なセキュリティ格差
2025年10月、韓国国会で衝撃的な事実が明らかになりました。ロッテカードやウェルカム金融グループなど、韓国の第2金融圏(ノンバンク)で相次ぐハッキング事故の背景には、想像以上に深刻なセキュリティ人材・予算不足があったのです。
国会政務委員会のキム・サンフン議員が入手した金融監督院の資料によると、その実態は目を疑うほどでした。
数字が物語る深刻な人材不足
情報保護人材の比較(2025年上半期基準)
- キャピタル業者:わずか101人
- カード会社:289人
- 銀行:約9-10倍の人材を配置
この数字を見ると、第2金融圏がいかに脆弱な体制でサイバーセキュリティに取り組んでいるかが分かります。現役のCSIRTメンバーとして様々な金融機関のインシデント対応を支援してきた経験から言えば、これは非常に危険な状況です。
予算格差が示すセキュリティ投資の現実
人材不足以上に深刻なのが、IT関連予算の格差です。
2025年IT予算の比較
- 銀行:5兆779億ウォン
- キャピタル社:3,647億ウォン(銀行の約14分の1)
- カード会社:1兆2,044億ウォン(銀行の約5分の1)
この予算格差は、セキュリティ対策の質に直結します。十分なセキュリティツールを導入できず、アンチウイルスソフト
のような基本的な防御すら不完全になりがちです。
なぜ第2金融圏が狙われるのか
フォレンジック調査の現場で見てきた事例から、攻撃者が第2金融圏を狙う理由は明確です:
1. セキュリティ対策の甘さ
- 監視体制が不十分
- セキュリティパッチの適用遅れ
- 従業員のセキュリティ意識不足
2. 規制の緩さ
金融当局の規制強度が銀行と比べて緩いため、セキュリティ投資へのプレッシャーが少ないのも事実です。
3. 攻撃の成功率の高さ
実際のフォレンジック事例では、第2金融圏への攻撃は銀行と比べて成功率が高い傾向があります。
個人・中小企業への影響と対策
金融機関のセキュリティ問題は、利用者にも直接的な影響を与えます。
実際に起こりうる被害例
- 個人情報の大量流出
- 不正な金融取引
- クレジットカード情報の悪用
- 金融サービスの長期停止
個人でできる対策
金融機関のセキュリティに頼るだけでなく、個人レベルでもしっかりとした対策が必要です:
- 通信の暗号化:VPN
を使用してオンライン取引時の通信を保護
- 端末のセキュリティ強化:アンチウイルスソフト
で端末を常に最新の状態に保つ
- パスワード管理の徹底:金融サービス毎に異なる複雑なパスワードを使用
中小企業が金融サービスを選ぶ際の注意点
中小企業の経営者として金融サービスを選択する際は、以下の点を確認することをお勧めします:
セキュリティ体制のチェックポイント
- 情報セキュリティ認証(ISO27001等)の取得状況
- セキュリティインシデント対応体制の有無
- 定期的なセキュリティ監査の実施状況
- 従業員向けセキュリティ研修の充実度
自社のWebサイトやシステムについても、Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施して脆弱性を把握しておくことが重要です。
金融業界全体に求められる改革
今回の韓国の事例は、日本の金融業界にとっても他人事ではありません。第2金融圏のセキュリティ強化には、以下のような取り組みが急務です:
制度面での改革
- 規制当局による統一的なセキュリティ基準の策定
- 情報保護人材の最低配置基準の設定
- セキュリティ投資への優遇措置
業界レベルでの取り組み
- セキュリティ人材の育成プログラム
- 脅威情報の共有体制構築
- インシデント対応の標準化
まとめ:セキュリティは投資、コストではない
韓国第2金融圏の事例が示すのは、セキュリティ投資を怠った場合の深刻な結果です。一度大規模なセキュリティインシデントが発生すれば、その復旧コストと信頼回復にかかる費用は、事前の投資額を遥かに上回ります。
個人・企業を問わず、今こそセキュリティ対策の見直しと強化に取り組む時期です。アンチウイルスソフト
やVPN
といった基本的な防御ツールの導入から始めて、段階的にセキュリティレベルを向上させていきましょう。
一次情報または関連リンク
ロッテカード、ウェルカム金融グループなど第2金融圏でハッキング事故が相次ぐ – 毎日経済
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