ランサムウェア攻撃者による認証情報窃取の手口と対策 – インフォスティーラー感染を防ぐ重要ポイント

こんにちは。現役CSIRTのフォレンジックアナリストとして、数々のランサムウェア事案を調査してきた私が、最近増加している「認証情報窃取」による侵入手口について解説します。

2025年に入ってから、アサヒグループホールディングスやアスクルなど、大手企業でもランサムウェア被害が相次いでいます。これらの事案を調査していて分かるのは、攻撃者の手口がより巧妙化していることです。

ランサムウェア攻撃者の侵入手口が変化している理由

従来のランサムウェア攻撃では、システムの脆弱性を突いた侵入が主流でした。しかし最近では、正規ユーザーの認証情報を盗み取って「なりすまし」で侵入する手口が急増しています。

なぜこの手口が増えているのか?理由は簡単です。セキュリティ対策が進んだ結果、システムの脆弱性を突くより、人間の心理を突いた方が効率的だと攻撃者が気づいたからです。

インフォスティーラー – 認証情報を狙う危険なマルウェア

私がフォレンジック調査で頻繁に遭遇するのが、「インフォスティーラー」と呼ばれるマルウェアです。これは文字通り、パソコン内の認証情報を「盗む」ことに特化したマルウェアです。

実際のインフォスティーラー被害事例

先月調査した中小企業の事例を紹介しましょう(詳細は匿名化しています)。

経理担当者が業務メールと思って添付ファイルを開いたところ、インフォスティーラーに感染。このマルウェアは以下の情報を窃取していました:

  • ブラウザに保存されたパスワード
  • VPN接続情報
  • 社内システムのログイン情報
  • メールアカウントのパスワード

攻撃者は盗んだVPN情報を使って社内ネットワークに侵入し、3日後にランサムウェアを展開。全社のファイルが暗号化される被害となりました。

インフォスティーラーの侵入経路と対策

インフォスティーラーの主な侵入経路は以下の2つです:

1. メール経由の感染

最も多いのがメール添付ファイルによる感染です。請求書、履歴書、契約書などを装ったファイルが送られてきます。私の調査経験では、約70%の感染がメール経由です。

対策:

  • 添付ファイルを開く前に送信者の確認を徹底する
  • アンチウイルスソフト 0でファイルをスキャンしてから開く
  • 不審なメールは即座にIT部門に報告する

2. Web経由の感染

偽のソフトウェア配布サイトや、改ざんされたWebサイトからダウンロードしたファイルによる感染も増えています。

対策:

  • ソフトウェアは公式サイトからのみダウンロードする
  • ダウンロードしたファイルは実行前に必ずスキャンする
  • VPN 0を使用してWebアクセス時のセキュリティを強化する

企業が取るべき認証情報保護対策

フォレンジック調査の現場で痛感するのは、個人用のセキュリティソフトでは限界があるということです。

なぜ企業用セキュリティ製品が必要なのか

実際に調査した事例では、従業員のパソコンがマルウェアに感染していたにも関わらず、個人用ウイルス対策ソフトでは検知できていませんでした。しかも、感染の事実を知っていたのは当該従業員のみ。IT部門への報告もありませんでした。

企業用製品であれば:

  • 管理者が全端末の状況を一元管理できる
  • 感染発覚時の追加調査が可能
  • インシデント対応を迅速に開始できる

多層防御の重要性

私がCSIRTとして企業に推奨する対策は以下の通りです:

  1. エンドポイント保護:アンチウイルスソフト 0による端末保護
  2. ネットワーク保護:VPN 0による通信の暗号化
  3. Webアプリケーション保護:Webサイト脆弱性診断サービス 0による脆弱性の事前発見
  4. 従業員教育:定期的なセキュリティ研修の実施

被害を最小限に抑えるための事前準備

万が一インフォスティーラーに感染してしまった場合でも、被害を最小限に抑える方法があります。

即座に実行すべき対応

  1. 感染端末のネットワーク遮断
  2. 全パスワードの変更(VPN、メール、社内システム等)
  3. フルスキャンの実行
  4. フォレンジック調査の実施(必要に応じて)

特に重要なのは、感染を発見した時点ですべての認証情報を無効化することです。攻撃者が既に情報を窃取している可能性があるためです。

まとめ:今すぐ実行すべき対策

ランサムウェア攻撃者による認証情報窃取は、もはや「他人事」ではありません。アサヒグループHDやアスクルのような大企業でも被害に遭う時代です。

今すぐ実行すべき対策:

私のフォレンジック調査経験から言えるのは、事前対策にかけるコストは、被害後の復旧コストと比べて遥かに安いということです。

特に中小企業の皆さん、「うちは狙われない」という考えは危険です。攻撃者は規模に関係なく、脆弱な組織を狙ってきます。今すぐ対策を始めることを強く推奨します。

一次情報または関連リンク

日経xTECH – ランサムウエア攻撃者による認証情報の窃取

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