最近のサイバー攻撃、本当に巧妙になってきましたよね。特に厄介なのが「サプライチェーン攻撃」という手法です。これは直接的な標的企業を攻撃するのではなく、関連する取引先やパートナー企業の脆弱性を狙って、そこから本命の標的にアクセスする攻撃手法なんです。
現役のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)として数多くのインシデント対応を経験してきましたが、実際にこのサプライチェーン攻撃による被害は年々増加しています。今回は、そんな現代のセキュリティ脅威に対する新しい対策ツール「SecurityScorecard」について、フォレンジックの観点から詳しく解説していきます。
実際に見た被害事例:サプライチェーン攻撃の恐ろしさ
私が実際に対応した事例を一つご紹介しましょう。ある中小企業のECサイトが突然アクセス不能になり、顧客情報が流出した事件がありました。調査を進めていくと、直接的な原因は同社が利用していたウェブサイト制作会社のサーバーが侵害されていたことでした。
攻撃者は以下のような手順で攻撃を実行していました:
1. まず、制作会社の古いCMSの脆弱性を悪用して侵入
2. 制作会社のサーバー内で権限昇格を実行
3. 制作会社が管理する複数のクライアントサイトへアクセス
4. 最終的に標的企業のデータベースへ到達
この事例で特に印象的だったのは、被害を受けた企業自体のセキュリティ対策は決して悪くなかったことです。しかし、サプライチェーンの一部に存在した脆弱性が、結果的に大きな被害をもたらしました。
SecurityScorecardとは?セキュリティを「見える化」する革命的ツール
株式会社Jストリームが販売を開始した「SecurityScorecard」は、まさにこうした問題に対処するためのツールです。これは単なるセキュリティ診断ツールではなく、企業のセキュリティ状況を定量的なスコアで評価し、サイバー攻撃による侵害リスクを可視化するシステムなんです。
SecurityScorecardの3つの特徴
1. 具体的なスコアによる評価
セキュリティ状況を数値化することで、経営陣や取引先との間で明確な目標設定が可能になります。「なんとなく安全」ではなく、「スコア85点で業界平均を上回る」といった具体的な議論ができるようになるんです。
2. 攻撃者視点での情報収集
実際の攻撃者が攻撃前に行う初期調査で収集する情報を、システムに負荷をかけることなく収集できます。これにより、攻撃者から見た自社の脆弱性を事前に把握できるというわけです。
3. リアルタイムな変動監視
スコアの変動を素早く把握できるため、脆弱性が発見された際の対応時間を大幅に短縮できます。攻撃に脆弱な期間を最小限に抑えることが可能になります。
フォレンジック調査で見えた現実:WAF導入率の低さが招く被害
興味深い統計があります。総務省の令和5年通信利用動向調査によると、WAF(Web Application Firewall)の導入率は2023年度時点でわずか15.9%にとどまっています。これは本当に驚くべき数字です。
私がフォレンジック調査を行った案件の約7割が、WAFを導入していれば防げた可能性が高い攻撃でした。特に以下のような被害が目立ちます:
- SQLインジェクション攻撃による顧客データベースの流出
- XSS(Cross-Site Scripting)攻撃による管理者権限の奪取
- CMSの脆弱性を悪用した不正アクセス
これらの攻撃は、適切なアンチウイルスソフト
とWAFの組み合わせで防げたケースが多いんです。
個人・中小企業が狙われる理由と対策
「うちは小さな会社だから狙われない」と思っている方、それは大きな間違いです。実際には、中小企業の方が狙われやすい傾向があります。理由は以下の通りです:
1. セキュリティ投資の不足
予算や人材の制約により、セキュリティ対策が後回しになりがちです。
2. 専門知識の不足
セキュリティ専門家を雇用できない企業が多く、適切な対策が取れていません。
3. サプライチェーンの入り口
大企業への攻撃の足がかりとして利用されることがあります。
SecurityScorecardの活用場面
SecurityScorecardは以下のような場面で特に有効です:
ECサイト・オンラインサービス運営企業
顧客情報を扱う事業者にとって、セキュリティリスクの可視化は必須です。スコアの変動を監視することで、攻撃を受けやすい期間を最小限に抑えられます。
BtoB企業
取引先からのセキュリティ監査や、新規取引先の評価に活用できます。M&Aの際のセキュリティデューデリジェンスにも有効です。
CMS利用企業
WordPressなどのCMSを利用している企業は、脆弱性が発見された際の対応が特に重要です。リアルタイムなスコア監視により、迅速な対応が可能になります。
個人ユーザーができるセキュリティ対策
企業レベルの話が続きましたが、個人ユーザーの皆さんも他人事ではありません。サイバー攻撃の手法は日々巧妙化しており、個人の情報資産も狙われています。
特に重要なのが以下の対策です:
1. 包括的なセキュリティ対策
アンチウイルスソフト
を導入し、マルウェアやフィッシング攻撃から身を守ることが基本中の基本です。最新の脅威に対応できる製品を選ぶことが重要です。
2. 通信の暗号化
公共Wi-Fiを利用する際や、プライバシーを保護したい場合はVPN
の利用が効果的です。特にリモートワークが増えた現在、通信の安全性確保は必須と言えるでしょう。
価格とコストパフォーマンス
SecurityScorecardの価格は20,000円/レポートからとなっており、継続利用や対象ドメイン数によって変動します。JストリームのCDNサービス「J-Stream CDNext」のWAFオプションとの同時利用でディスカウントが適用されるのも魅力的ですね。
フォレンジック調査の経験から言えば、サイバー攻撃を受けた後の対応費用は、事前の対策費用の10倍以上になることも珍しくありません。SecurityScorecardによる定期的なリスク評価は、長期的に見れば非常にコストパフォーマンスの高い投資と言えるでしょう。
まとめ:見える化こそがセキュリティ対策の第一歩
SecurityScorecardの登場は、セキュリティ対策における「見える化」の重要性を改めて示しています。サイバー攻撃の脅威が日々増大する中、「なんとなく安全」ではなく、具体的な数値に基づいた客観的な評価が求められています。
特にサプライチェーン攻撃の増加を考えると、自社だけでなく取引先も含めたセキュリティリスクの把握は、もはや選択肢ではなく必須の対策と言えるでしょう。
個人の皆さんも、企業のセキュリティ対策から学べることは多いはずです。適切なアンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせで、自分の情報資産をしっかりと守っていきましょう。
サイバーセキュリティは「完璧」を目指すものではなく、「継続的な改善」を行うものです。SecurityScorecardのような可視化ツールを活用して、一歩ずつセキュリティレベルを向上させていくことが、結果的に最も効果的な対策になるのです。