なぜ世界でサイバー攻撃が急増しているのか?企業のデジタル化とAI利用が生む新たなリスク

サイバー攻撃が爆発的に増加している現実

最近のアサヒグループやアスクルのシステム障害、覚えていますか?実はこれらの事件は「たまたま起きた偶然」ではありません。世界的にサイバー攻撃は急激に増えており、過去4年間で週間の平均的な攻撃件数が2倍以上になったという驚愕のデータがあります。

フォレンジックアナリストとして数多くの事案を調査してきた経験から言えば、この増加傾向は今後もさらに加速すると予想されます。なぜなら、攻撃の「成功率」と「収益性」が飛躍的に向上しているからです。

企業のデジタル化が生んだ「致命的な弱点」

ERP(統合基幹業務システム)という諸刃の剣

現在多くの企業が導入している「エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)」システム。これは確かに経営効率を大幅に向上させる素晴らしい仕組みですが、同時にサイバー攻撃者にとって「ワンストップで全てが手に入る宝庫」になってしまっています。

実際の調査事例をお話しすると、ある中小製造業では営業部門への攻撃から始まったランサムウェアが、ERPシステム経由で製造管理、経理、人事まで全て暗号化されてしまいました。バックアップも同一ネットワーク上にあったため、復旧に3週間を要し、損失額は数億円規模に達しています。

AI技術の悪用で「誰でもハッカー」時代に突入

ChatGPTで作られるランサムウェア

驚くべき事実ですが、日本国内でも実際にChatGPTを利用してランサムウェアを開発した事案が摘発されています。これまでサイバー攻撃には高度なプログラミング知識が必要でしたが、AIの登場により「素人でも攻撃可能」な時代になってしまいました。

AIによるフィッシング攻撃の巧妙化

フォレンジック調査で最近目立つのが、AIを活用した極めて精巧なフィッシングメールです。従来の「日本語が不自然」「送信者アドレスが怪しい」といった判別方法が通用しなくなっています。

  • 企業の文体や書式を完璧に模倣
  • 実在する担当者名を正確に使用
  • 業務の時期や内容に合致したタイミングで送信

個人・中小企業が直面するリアルな脅威

VPN 経由での侵入が急増

リモートワークの普及により、VPN 0やリモートデスクトップ接続の利用が爆発的に増えました。しかし、適切なセキュリティ設定を行っていない場合、これらが攻撃の「入り口」になってしまいます。

実際の事例では、個人事業主の税理士事務所で、無料VPNサービス経由でランサムウェアに感染し、顧客の重要な税務データが全て暗号化されてしまいました。復旧費用と損害賠償で事業継続が困難になったケースもあります。

中小企業の約8割がセキュリティ対策不十分

調査結果によると、従業員100名以下の企業の約8割が基本的なセキュリティ対策すら十分に実施できていない状況です。「うちは狙われるほど大きくないから大丈夫」という考えは非常に危険です。

攻撃者は「セキュリティが甘い企業」を効率的に狙い撃ちしており、中小企業の方がむしろ被害を受けやすい状況にあります。

今すぐ実践すべき対策

個人レベルでできること

  • 信頼できるアンチウイルスソフト 0の導入:無料ソフトでは検知できない最新の脅威に対応
  • セキュアなVPN 0の利用:無料サービスは避け、企業レベルの暗号化技術を採用したサービスを選択
  • 定期的なデータバックアップ(オフライン保存)
  • OS・ソフトウェアの自動更新設定

企業が取り組むべき対策

  • Webサイト脆弱性診断サービス 0の定期実施:外部からの脆弱性を事前に発見・修正
  • 従業員向けセキュリティ教育の徹底
  • 多要素認証の導入
  • ネットワークの分離・セグメント化
  • インシデント対応体制の構築

フォレンジック専門家からの重要なアドバイス

サイバー攻撃を受けた場合、初動対応が被害の拡大を左右します。「とりあえず再起動」や「怪しいファイルを削除」といった対応は、重要な証拠を消失させる可能性があります。

攻撃を受けた際の正しい初動対応:

  1. 影響範囲の特定と隔離
  2. ログの保全
  3. 専門機関への連絡
  4. 証拠保全を意識した復旧作業

まとめ:「いつか被害に遭う」前提での対策を

サイバー攻撃の増加は止まりません。むしろ、AI技術の発達と企業のデジタル化により、さらに激化すると予想されます。

重要なのは「攻撃を受けない方法を考える」のではなく、「攻撃を受けることを前提とした備え」です。適切なセキュリティツールの導入と、定期的な脆弱性チェックこそが、あなたの大切なデータと事業を守る最も確実な方法なのです。

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