2025年10月、投資界に激震が走る事件が発生しました。著名個人投資家のテスタ氏が楽天証券口座を第三者に乗っ取られる被害に遭い、同時期に「証券口座への不正アクセスにSTB(セットトップボックス)が踏み台として利用された」との報道も浮上。現役CSIRTの視点から、この事件の真相と対策を徹底解説します。
STB踏み台報道の真相は?日本ケーブルテレビ連盟が緊急発表
一部メディアで「STB(セットトップボックス)が証券口座への不正アクセスの踏み台に使われた」と報道されましたが、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟は2025年10月24日、加盟事業者およびSTB製造メーカーへの確認調査を実施した結果、現時点で報道に該当する不正アクセス事象は確認されていないと公式発表しました。
フォレンジック調査の現場では、このような「踏み台」疑惑が浮上した際、まず通信ログの詳細分析を行います。今回のケースでも、各STB製造メーカーが定期的なソフトウェア更新や脆弱性確認を通じて安全性確保に努めており、問題となる不正通信や具体的被害は発見されませんでした。
テスタ氏の証券口座乗っ取り事件から見える攻撃の巧妙さ
著名個人投資家のテスタ氏は、日頃からウイルス対策ソフトを二重で導入し、毎日スキャンを実施していたにも関わらず、楽天証券口座を乗っ取られる被害に遭いました。これは現代のサイバー攻撃がいかに巧妙化しているかを物語る事例です。
私がフォレンジック調査で扱った類似事例では、セキュリティ意識の高いIT企業の経営者でさえ、巧妙なフィッシング攻撃により証券口座の資産を数百万円単位で盗まれるケースが増加しています。攻撃者は従来の「怪しいメール」ではなく、本物と見分けがつかないほど精巧な偽サイトを構築してきます。
証券口座乗っ取りの典型的手口を現役CSIRTが解説
1. フィッシング・ソーシャルエンジニアリング
最も頻繁に観察される手口です。攻撃者は証券会社を装った偽メールや偽SMSを送信し、「緊急メンテナンス」「セキュリティ更新」などの名目でログイン情報を詐取します。実際のフォレンジック事例では、楽天証券やSBI証券を装った偽サイトのURLが、本物と1文字だけ違う巧妙なドメインだったケースも確認しています。
2. クレデンシャルスタッフィング攻撃
過去の大規模データ流出で漏洩したID・パスワードの組み合わせを、自動化ツールで大量の証券口座に試行する攻撃です。パスワードの使い回しをしている利用者が狙われます。
3. 多要素認証(MFA)回避技術
現在の攻撃者は多要素認証も巧みに回避してきます。リアルタイムフィッシングでワンタイムパスワードを即座に悪用したり、「疲労攻撃」と呼ばれる手法でPush通知を連続送信し、利用者が誤って承認するまで攻撃を継続します。SIMスワップによりSMS受信を奪取する事例も急増中です。
4. 端末乗っ取り・セッションハイジャック
マルウェアにより利用者端末を遠隔操作し、正規の通信に見せかけて不正取引を実行します。ブラウザのセッションクッキーを窃取し、認証を回避する高度な攻撃も確認されています。
個人・中小企業が今すぐ実装すべき対策
エンドポイント保護の強化
テスタ氏のケースでも、従来型のアンチウイルスソフト
では検知できない攻撃が使われた可能性があります。現代の証券口座狙いのマルウェアは、AIを活用した振る舞い検知技術を搭載した最新のアンチウイルスソフト
でないと対応困難です。
通信経路の暗号化とIP偽装対策
証券取引時は必ずVPN
を使用し、通信経路を暗号化しましょう。攻撃者による通信傍受や、公共Wi-Fi経由での情報窃取を防げます。特に外出先からの取引ではVPN
は必須です。
企業のWebサイトセキュリティ強化
証券会社や金融機関のWebサイトも標的になりやすいため、Webサイト脆弱性診断サービス
により定期的な脆弱性チェックが重要です。SQLインジェクションやXSS攻撃による顧客データ漏洩を防ぐ必要があります。
フォレンジック調査で明かされる攻撃の実態
実際のフォレンジック調査では、証券口座乗っ取り犯は以下のような痕跡隠蔽工作を行います:
- 出金先口座の事前登録変更:攻撃の数日前から徐々に設定を変更し、不正を目立たせません
- 相場急変時を狙った取引:市場のボラティリティが高い時間帯に紛れ込ませて検知回避を図ります
- 複数の踏み台経由:VPNやTorネットワーク、感染端末を経由し、追跡を困難にします
- 少額から開始:いきなり大金を動かさず、まず小額取引でシステムの反応を確認します
被害に遭った場合の緊急対応手順
もし証券口座への不正アクセスが疑われる場合、以下の手順で迅速に対応してください:
- 即座にパスワード変更:すべての関連アカウントのパスワードを変更
- 証券会社への連絡:取引停止と被害状況の確認を依頼
- 警察への届出:サイバー犯罪相談窓口への通報
- 端末の完全スキャン:感染の有無をアンチウイルスソフト
で徹底確認 - フォレンジック証拠保全:専門業者による詳細調査の実施
まとめ:多層防御で証券資産を守り抜く
STB踏み台報道は現時点で根拠が確認されていませんが、証券口座を狙った攻撃は確実に高度化・巧妙化しています。テスタ氏のような上級者でも被害に遭う現実を受け、従来以上の厳格なセキュリティ対策が必要です。
最新のアンチウイルスソフト
、VPN
による通信保護、そして企業であればWebサイト脆弱性診断サービス
による定期的な脆弱性チェックを組み合わせた多層防御が、あなたの大切な資産を守る最後の砦となります。

