2025年10月29日、オフィス用品通販大手のアスクル株式会社がランサムウェア攻撃を受けた後、医療機関・介護施設向けに限定的な手動出荷を再開したことを発表しました。この事件は、現代の企業がいかにサイバー攻撃の脅威にさらされているかを如実に示しています。
私は企業のインシデント対応を数多く支援してきたフォレンジックアナリストとして、今回のアスクルの事例から企業が学ぶべき重要なポイントを詳しく解説いたします。
アスクル攻撃の被害状況と対応
今回のランサムウェア攻撃により、アスクルは以下のような深刻な影響を受けています:
停止している主要機能
- 新規注文受付(Web・FAX)
- 倉庫管理システム
- 新規利用登録
- 返品・回収サービス
- 医薬品の問い合わせ・受注業務
特に注目すべきは、既存注文のアスクル在庫商品がすべてキャンセルになったことです。これは事業継続の観点で極めて深刻な事態といえます。
段階的復旧への取り組み
アスクルは社会的影響を考慮し、医療機関・介護施設を優先して手動での限定出荷を開始しました。これは危機管理として適切な判断です。しかし、手動対応には限界があり、完全復旧には相当な時間を要することが予想されます。
企業のランサムウェア被害の実態
私がこれまで対応した事例では、ランサムウェア攻撃を受けた企業の約80%が復旧に1ヶ月以上を要しており、中には半年以上システムが完全復旧しないケースもありました。
典型的な被害パターン
中小企業A社の事例では、メールの添付ファイルからランサムウェアが侵入し、以下のような被害が発生しました:
- 基幹システム完全停止(2ヶ月間)
- 顧客データベース暗号化
- バックアップサーバーも同時感染
- 復旧費用:約5,000万円
- 売上損失:約2億円
このような被害を防ぐためには、多層防御の考え方が重要です。
効果的なランサムウェア対策
1. エンドポイント保護の強化
個人・中小企業レベルでも実装可能な最も基本的な対策は、高性能なアンチウイルスソフト
 の導入です。従来型のアンチウイルスでは検知が困難な最新のランサムウェアに対しても、AI技術を活用した製品なら未知の脅威も検出可能です。
の導入です。従来型のアンチウイルスでは検知が困難な最新のランサムウェアに対しても、AI技術を活用した製品なら未知の脅威も検出可能です。
2. ネットワークセキュリティの確保
リモートワークの普及により、VPN
 の利用は必須となっています。特に企業の機密データにアクセスする際は、暗号化された通信経路を確保することで、攻撃者による通信の盗聴や改ざんを防げます。
の利用は必須となっています。特に企業の機密データにアクセスする際は、暗号化された通信経路を確保することで、攻撃者による通信の盗聴や改ざんを防げます。
3. Webアプリケーションの脆弱性対策
企業のWebサイトやアプリケーションは、ランサムウェアの侵入経路となることがあります。定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
 により、セキュリティホールを事前に発見・修正することが重要です。
により、セキュリティホールを事前に発見・修正することが重要です。
インシデント発生時の対応手順
もしランサムウェア攻撃を受けた場合、以下の手順で対応することが重要です:
緊急対応フェーズ(24時間以内)
- 感染端末の即座なネットワーク遮断
- 被害範囲の初期調査
- 関係者への緊急連絡
- フォレンジック調査の開始
復旧フェーズ(1週間以内)
- クリーンなバックアップからの復旧
- セキュリティ強化措置の実施
- 業務継続計画の発動
- 顧客・取引先への通知
予防投資の重要性
今回のアスクルの事例を見ても分かるように、ランサムウェア攻撃を受けてからの対応コストは膨大になります。私の経験上、事前のセキュリティ投資は攻撃を受けた際の復旧コストの1/10程度で済むことが多いのです。
特に個人事業主や中小企業の方は、「自分は狙われない」と考えがちですが、実際には無差別攻撃の対象となるケースが増加しています。早めの対策実施をお勧めします。
まとめ
アスクルのランサムウェア攻撃事例は、現代企業がサイバー脅威に対していかに脆弱であるかを示しています。しかし、適切な事前対策により、被害を最小限に抑えることは可能です。
重要なのは、セキュリティを「コスト」ではなく「投資」として捉えることです。今日から始められる対策もありますので、ぜひ検討してみてください。

 
  
  
  
  
 
 

