2025年10月、衝撃的なニュースが韓国から飛び込んできました。ソウル市および傘下機関に対するサイバー攻撃の試行件数が、今年1月から8月までのわずか8ヶ月間で約798万件に達し、過去最多を記録したのです。月平均100万件という数字は、まさに現代のデジタル戦争の激化を物語っています。
増加する攻撃の実態 – データが示す恐ろしい現実
フォレンジックアナリストとして数多くのサイバー攻撃事例を分析してきた経験から言うと、この数字の背景にある脅威の質的変化が非常に気になります。ソウル市が公開したデータを詳しく見てみましょう。
2025年の攻撃内容(1-8月):
- 情報収集:403万件(前年比67%増)
- 情報流出試行:約40万件(45%増)
- 不正な権限取得:約123万件
- ウェブページ改ざん:約43万件
- 不正アクセス試行:約17万件(289%増!)
- サービス拒否(DDoS等):約112万件
- マルウェア(悪性コード):約58万件(25%増)
特に注目すべきは、不正アクセス試行が前年比289%増という驚異的な数字です。これは単なる愉快犯的な攻撃ではなく、明確な目的を持った組織的な攻撃が増加していることを示しています。
なぜ自治体がターゲットになるのか
私が過去に調査した事例では、自治体への攻撃は主に以下の理由で行われています:
1. 住民情報の宝庫
自治体は住民基本台帳、税務情報、福祉関連データなど、個人情報の宝庫です。これらの情報は闇市場で高値で取引される貴重な「商品」となります。
2. セキュリティ投資の遅れ
多くの自治体では、限られた予算の中でセキュリティ対策が後回しになりがちです。民間企業と比べて脆弱性が多く存在することが攻撃者に狙われる要因となっています。
3. 社会的インパクト
自治体への攻撃が成功すれば、住民生活に直接的な影響を与え、大きな社会問題となります。攻撃者にとっては「成果」が見えやすいターゲットなのです。
実際の被害事例から学ぶ教訓
ソウル市は幸い過去3年間で実被害ゼロを維持していますが、世界各地では自治体への攻撃が実際に成功している例が後を絶ちません。
典型的な被害パターン:
ケース1:ランサムウェア攻撃による業務停止
ある中規模都市では、職員が開いた添付ファイル経由でランサムウェアが侵入。住民票発行システムから税務システムまで全面的に暗号化され、復旧まで3週間を要しました。この間、住民サービスは完全に停止し、復旧費用だけで数億円が必要となりました。
ケース2:個人情報大量流出事件
別の自治体では、Webサイトの脆弱性を突かれ、住民約10万人分の個人情報が流出。被害者への損害賠償、システム再構築、信頼回復のためのコストは総額で10億円を超えました。
個人・中小企業が学ぶべき防御戦略
ソウル市の成功事例から、私たちが学べることは何でしょうか。同市が導入したAIベースのセキュリティ監視体制や専門部署の設置は、規模は違えど個人や中小企業にも応用可能です。
1. 多層防御の重要性
ソウル市の事例で注目すべきは、単一の対策ではなく複数のセキュリティ層を組み合わせていることです。個人レベルでも、アンチウイルスソフト
による基本防御は必須です。特に最新のAI機能を搭載した製品なら、未知の脅威にも対応可能です。
2. ネットワーク通信の暗号化
攻撃の多くがネットワーク経由で行われる現在、通信の暗号化は基本中の基本です。特にリモートワークが普及した今、VPN
は個人情報保護の生命線となります。
3. Webサイトの脆弱性対策
企業のWebサイトを運営している場合、定期的な脆弱性診断は欠かせません。Webサイト脆弱性診断サービス
を利用することで、攻撃者に先回りして脆弱性を発見・修正できます。
CSIRTアナリストが見る今後の展望
ソウル市の事例は、サイバー攻撃の量的増加だけでなく、質的変化も示しています。単純なスキャンから、具体的な意図を持った標的型攻撃への移行は、今後さらに加速するでしょう。
特に気になるのは、AIやIoTの普及に伴い、攻撃の自動化・効率化が進んでいることです。攻撃者は少ないコストで大規模な攻撃を仕掛けることが可能になっており、防御側も従来の手法では対応が困難になりつつあります。
まとめ:今こそ行動を
ソウル市への800万件の攻撃は、決して遠い国の出来事ではありません。日本の自治体、そして私たち個人や企業にとっても、明日起こりうる現実です。
重要なのは、攻撃を完全に防ぐことではなく、攻撃を受けても被害を最小限に抑えることです。そのためには、適切なセキュリティツールの導入と、継続的な対策の見直しが不可欠です。
「うちは大丈夫」「個人情報なんて大したものはない」という考えは、今すぐ捨ててください。攻撃者は、あなたが思っている以上に身近なところまで迫っているのです。

