2025年5月の情報漏えい被害、保険見直し本舗が510万件で第1位
2025年5月、またしても大規模な情報漏えい事件が発生しました。今回の被害規模第1位は、株式会社保険見直し本舗グループへのランサムウェア攻撃により、約510万件もの顧客情報が漏えいした可能性があるという衝撃的な事件でした。
この数字、実は福岡県の人口(約509万人)とほぼ同じ規模なんです。想像してみてください。一つの県の全住民の個人情報が一度に流出してしまう可能性があるということです。
不正アクセスが7割以上を占める現実
2025年5月に報告された情報漏えい事件56件のうち、なんと40件(71.4%)が「不正アクセス」によるものでした。これは決して大企業だけの問題ではありません。私がフォレンジック調査で関わった事例を見ても、個人事業主や小規模な会社でも同様の攻撃を受けているケースが増えています。
実際のランサムウェア攻撃事例から学ぶ
個人経営の歯科医院でのケース
先日調査した事例では、従業員5名程度の歯科医院がランサムウェア攻撃を受けました。犯人は以下の手順で侵入していました:
1. スタッフが開いた偽装メールから初期侵入
2. 院内ネットワークへの横断的な侵害
3. 患者データベースの暗号化
4. 身代金要求(約300万円)
この医院では幸い、毎日のバックアップがあったため業務は3日で復旧しましたが、患者情報の一部流出は避けられませんでした。
中小企業での被害拡大パターン
製造業の中小企業(従業員約50名)では、以下のような被害拡大が起きました:
– 経理システムのデータ暗号化
– 顧客データベースへの不正アクセス
– 取引先への二次攻撃(サプライチェーン攻撃)
– 復旧まで2週間、損失額は推定1,500万円
保険業界が狙われる理由
今回の統計を見ると、保険会社の被害が目立ちます:
1位:保険見直し本舗(約510万件)
2位:大手損保4社合計(約261万件)
これは偶然ではありません。保険会社は以下の理由で攻撃者にとって魅力的なターゲットなのです:
– 膨大な個人情報(氏名、住所、電話番号、収入情報など)
– 医療情報や資産情報といった機密性の高いデータ
– 高額な身代金を支払う可能性が高い業界特性
個人・中小企業でも実装できる防御策
1. エンドポイント保護の強化
個人でも企業でも、最初の防御線となるのがアンチウイルスソフト
です。従来のウイルス対策だけでは不十分で、AI技術を活用した次世代のアンチウイルスソフト
が必要です。
特に以下の機能は必須:
– リアルタイム脅威検知
– ランサムウェア専用保護
– フィッシングメール対策
– Webサイト保護
2. 通信の暗号化
在宅勤務やカフェでの作業時には、VPN
による通信暗号化が重要です。公衆Wi-Fiを使用する際は、VPN
なしでは機密情報が筒抜けになる可能性があります。
3. データのバックアップ戦略
フォレンジック調査で痛感するのは、適切なバックアップがあるかどうかで被害の深刻度が大きく変わることです:
– 3-2-1ルール:3つのコピー、2つの異なるメディア、1つはオフサイト
– 定期的な復旧テストの実施
– バックアップデータの暗号化
被害に遭った時の初動対応
万が一攻撃を受けた場合の対応手順:
1. **システムの隔離**:感染拡大を防ぐため即座にネットワークから切断
2. **証拠保全**:フォレンジック調査のためログや痕跡を保護
3. **関係者への連絡**:警察、監督官庁、取引先への報告
4. **専門家への依頼**:CSIRT チームまたはセキュリティ専門業者
まとめ:今すぐできる対策を始めよう
保険見直し本舗の510万件流出事件は、決して他人事ではありません。サイバー攻撃は規模の大小を問わず、誰もが標的になり得る時代です。
最低限、以下の対策は今すぐ実装しましょう:
– 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入
– VPN
による通信保護
– 定期的なデータバックアップ
– 従業員のセキュリティ教育
「うちは小さな会社だから大丈夫」「個人だから狙われない」という考えは、現在のサイバー攻撃の実態を知らない危険な思い込みです。
攻撃者は規模の大小を問わず、脆弱性のあるシステムを狙っています。今回の統計からも分かるように、情報漏えいは「いつか起こるかもしれない問題」ではなく、「いつ自分に起こってもおかしくない現実的な脅威」なのです。