2025年6月、ファッション通販サイト「PAL CLOSET(パルクローゼット)」で、なんと194,307件もの不正ログインが発生しました。これは決して他人事ではありません。現役のフォレンジックアナリストとして数々のサイバー攻撃の調査に携わってきた私が、この事件の詳細と、あなたが今すぐできる対策をお伝えします。
事件の概要:深夜に起きた大規模攻撃
6月15日深夜1時頃、多くのPAL CLOSETユーザーに「ログイン通知メール」が一斉に届きました。これが事件発覚のきっかけです。調査の結果、以下の被害が明らかになりました:
- 攻撃手法:パスワードリスト型攻撃(Credential Stuffing)
- 試行回数:1,722,379件
- 成立件数:194,307件
- 影響範囲:マイページ情報(氏名、住所、電話番号など)が閲覧された可能性
幸い、クレジットカード情報の流出や二次被害は確認されていませんが、個人情報が見られた可能性は残っています。
パスワードリスト攻撃とは?現場で見た攻撃の実態
私がCSIRTで対応した事例では、攻撃者は以下のような手順で攻撃を行います:
- 他サイトから流出したID・パスワード情報を収集
- 自動化ツールで大量のログイン試行を実行
- 成功したアカウントで個人情報を収集
- 収集した情報をダークウェブで販売または悪用
実際の調査では、攻撃者が1秒間に数百回のログイン試行を行っているケースも珍しくありません。人間では不可能な速度での攻撃が、この手法の特徴です。
個人・中小企業で実際に起きた被害事例
私が調査した実際の事例をいくつかご紹介します(もちろん、詳細は匿名化しています):
事例1:個人ECサイトユーザーの被害
あるファッション通販サイトのユーザーが、同じパスワードを複数のサイトで使い回していたため、不正ログインされました。攻撃者は:
- ポイントを不正利用して商品を購入
- 登録されていたクレジットカードで追加の買い物を実行
- 個人情報を使って他のサービスへの不正登録を試行
事例2:中小企業の業務システム侵入
従業員が個人のメールパスワードを業務システムでも使用していたため、会社の顧客データベースにアクセスされました:
- 顧客情報約5,000件が閲覧された可能性
- 調査・対応費用で約200万円の損失
- 信用失墜による取引先からの契約解除
今すぐできる!効果的な対策方法
1. パスワード管理の基本
- サイトごとに異なるパスワードを使用
- 12文字以上の複雑なパスワードを設定
- 定期的なパスワード変更
2. 二段階認証の活用
可能な限り二段階認証(2FA)を有効にしましょう。これだけで不正アクセスのリスクを大幅に下げられます。
3. セキュリティソフトウェアの導入
現役フォレンジックアナリストとして強く推奨するのが、信頼性の高いアンチウイルスソフト
の導入です。これらのソフトウェアは:
- フィッシングサイトからの保護
- マルウェア感染の防止
- 不審な通信の検知と遮断
を提供してくれます。特に個人情報を扱うECサイトを利用する際は必須といえるでしょう。
4. 安全な通信環境の確保
公共Wi-Fiでのオンラインショッピングは危険です。外出先でどうしてもアクセスが必要な場合は、信頼できるVPN
を使用しましょう。通信の暗号化により、第三者による盗聴を防げます。
企業側の対策も重要
今回のPAL CLOSETの対応は比較的迅速でしたが、企業側でも以下の対策が重要です:
- ログイン試行回数の制限
- CAPTCHA認証の導入
- 異常なアクセスパターンの検知システム
- 定期的なセキュリティ監査
被害に遭ったと思ったら
もし不審なログイン通知が届いたり、身に覚えのない活動があった場合は:
- すぐにパスワードを変更
- 他のサイトでも同じパスワードを使っていないか確認
- クレジットカードの利用明細をチェック
- 必要に応じて関連サービスに連絡
まとめ:予防が最大の防御
今回のPAL CLOSET事件は、パスワードの使い回しがいかに危険かを改めて示しています。サイバー攻撃は日々進化しており、完全に防ぐことは難しいのが現実です。
しかし、適切な対策を講じることで、被害を最小限に抑えることは可能です。特にアンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせは、個人レベルでできる最も効果的な防御策の一つです。
「自分は大丈夫」と思わず、今すぐセキュリティ対策を見直してください。明日被害に遭うのは、あなたかもしれません。