DeFi(分散型金融)の世界でまた大規模なハッキング事件が発生しました。今回被害を受けたのは「ガーデンファイナンス(GardenFinance)」というプラットフォームで、なんと約1,100万ドル(約16億円相当)もの資金が不正に流出してしまいました。
この事件、実は単純なハッキングではなく、過去のマネーロンダリング疑惑とも絡んだ複雑な背景があるんです。暗号資産に投資している方、これから始めようと考えている方にとって、知っておくべき重要な事例として詳しく解説していきますね。
事件の概要:当初550万ドルが最終的に1,100万ドルの被害に
2024年10月31日、ガーデンファイナンスの公式Xアカウントから衝撃的な発表がありました。当初の発表では被害額は550万ドル以上とされていましたが、その後の調査で約1,080万〜1,100万ドルという巨額の資金が不正流出していることが判明したのです。
特に厄介なのは、攻撃者が盗み出した資金をすぐに「凍結不可能なトークン」にスワップさせてしまったこと。これにより、通常のハッキング事件では可能な場合もある資金の凍結や追跡が極めて困難になってしまいました。
現在のところ、流出した資金の回収目処は全く立っていない状況です。ガーデンファイナンス側は攻撃者に対してオンチェーン上でメッセージを送り、「流失額の10%をホワイトハット報酬として支払うので、残りを返金してほしい」と交渉を試みていますが、攻撃者からの反応はありません。
過去のマネーロンダリング疑惑が事件を複雑化
実は、このガーデンファイナンス、今回のハッキング事件が起こる前から問題を抱えていました。2024年6月、オンライン調査員として有名なザックエックスビーティー(ZachXBT)氏により、衝撃的な事実が指摘されていたのです。
ザックエックスビーティー氏の調査によると、ガーデンファイナンスのプラットフォーム収益の80%以上が、北朝鮮のハッカー組織「ラザルスグループ」などによる違法な取引から生まれていたというのです。具体的には、2024年2月に発生した暗号資産取引所「バイビット(Bybit)」のハッキング事件で流出した資金の洗浄に協力し、その手数料で稼いでいたとされています。
これに対してガーデンファイナンスの共同創設者であるジャズ・グラティ(Jaz Gulati)氏は「手数料の大部分はバイビット事件以前に徴収されたものだ」と反論し、この主張を「誤情報」として否定しています。
しかし、ザックエックスビーティー氏は過去に数多くのハッキング事件やマネーロンダリング事件の調査で実績を上げており、暗号資産コミュニティでの信頼度は非常に高いのが現実です。そのため今回のハッキング事件についても、「マネーロンダリングに協力しておきながら、今度は自分たちが被害者面している」という皮肉的な反応が多く見られています。
DeFiハッキングの手法と対策:個人投資家が知るべきこと
DeFi(分散型金融)プラットフォームのハッキング事件は、残念ながら珍しいことではありません。フォレンジックアナリストとして多くの事例を見てきた経験から言うと、DeFiハッキングには主に以下のようなパターンがあります:
- スマートコントラクトの脆弱性を狙った攻撃:プログラムコードの欠陥を突いて資金を流出させる
- フラッシュローン攻撃:短時間の大量借入を悪用した市場操作
- ガバナンストークン攻撃:投票権を不正に取得してプロトコルを乗っ取る
- ブリッジ攻撃:異なるブロックチェーン間の橋渡し機能を悪用
今回のガーデンファイナンス事件では、具体的な攻撃手法の詳細は公表されていませんが、攻撃者が迅速に資金を移動・変換している点から、事前に綿密に計画された攻撃である可能性が高いと考えられます。
個人投資家ができるセキュリティ対策
DeFi投資を行う際は、以下のような対策が重要です:
1. プラットフォームの選択は慎重に
監査を受けたスマートコントラクトを使用しているか、開発チームの透明性はあるか、過去にセキュリティ事件を起こしていないかなど、事前の調査が不可欠です。
2. 資金の分散投資
一つのプラットフォームに全資金を預けるのは危険です。複数のプラットフォームに分散することでリスクを軽減できます。
3. セキュリティツールの活用
暗号資産取引を行う際は、アンチウイルスソフト
の導入が基本中の基本。マルウェアによる秘密鍵の盗難を防ぐために必須のツールです。
4. VPN接続での取引
公衆WiFiなどの不安定な回線での取引は避け、VPN
を使用して通信を暗号化することで、中間者攻撃などを防げます。
企業が狙われる理由と対策
DeFiプラットフォームが攻撃者に狙われる理由は明確です:
- 大量の暗号資産が一箇所に集中している
- 従来の金融機関と比べて規制が緩い
- 匿名性が高く、資金の追跡が困難
- スマートコントラクトの脆弱性が存在する可能性
特に中小企業でDeFi関連事業を行っている場合、セキュリティ対策が不十分だと今回のような大規模被害を受ける可能性があります。
企業としては、定期的なセキュリティ監査に加えて、Webサイト脆弱性診断サービス
を実施することで、Webアプリケーションの脆弱性を事前に発見し、攻撃を未然に防ぐことが可能です。
今後の暗号資産投資で注意すべきポイント
今回のガーデンファイナンス事件から学ぶべき教訓は多くあります:
過去の実績と透明性を重視する
高いAPY(年率)に目を奪われがちですが、そのプラットフォームがどのようにして利益を上げているのか、収益源は健全かを必ず確認しましょう。
コミュニティの声に耳を傾ける
ザックエックスビーティー氏のような信頼できる調査員や、暗号資産コミュニティの意見は貴重な情報源です。投資前に必ずチェックしましょう。
「Too good to be true(うますぎる話)」に注意
市場平均を大幅に上回る利回りを提供しているプラットフォームは、何らかの理由があります。その理由が合法的で持続可能なものかを見極めることが重要です。
まとめ:DeFi投資はセキュリティ意識を最優先に
ガーデンファイナンスのハッキング事件は、DeFi投資の持つリスクを改めて浮き彫りにしました。約1,100万ドルという巨額の損失、そして過去のマネーロンダリング疑惑など、複雑な背景を持つこの事件から学ぶべきことは多くあります。
DeFi投資を行う際は、高い利回りに惹かれるだけでなく、プラットフォームの安全性や透明性を最優先に考える必要があります。個人投資家の皆さんも、適切なセキュリティツールを使用し、リスクを最小限に抑えた投資を心がけてください。
暗号資産の世界は確かに魅力的ですが、常にリスクと隣り合わせであることを忘れずに、慎重な投資判断を行っていきましょう。
一次情報または関連リンク
DeFi(分散型金融)プラットフォームの「ガーデンファイナンス(GardenFinance)」がハッキング被害を受けたことが10月31日に公式Xから発表された。

