政府の個人情報保護委員会から発表された年次報告によると、2024年度の個人情報漏えい・紛失件数が約1万9000件と過去最多を記録しました。この数字は、私たちの個人情報がいかに危険にさらされているかを如実に示しています。
個人情報漏えいの実態が深刻化
今回の報告で注目すべき点は、以下の通りです:
- 民間事業者による個人情報漏えい・紛失:19,056件(2017年度調査開始以降最多)
- マイナンバー関連の漏えい・紛失:2,052件(前年度の6倍以上)
- 個人情報保護法に基づく勧告:1件、指導・助言:395件
これらの数字から分かるのは、企業規模に関係なく、あらゆる組織が個人情報漏えいのリスクにさらされているということです。
実際に起きた深刻な事例
フォレンジック調査の現場で実際に目にする事例をいくつか紹介します:
NTT西日本子会社の大規模情報流出
元派遣社員による大量の個人情報不正流出事件は、内部犯行の恐ろしさを物語っています。この事例では、情報を買い取った名簿業者まで刑事告発され、罰金の略式命令を受けました。企業の信頼失墜と経済的損失は計り知れません。
マイナンバーカード関連のヒューマンエラー
高松市のコンビニで発生した別人の住民票交付事件は、システムの脆弱性とヒューマンエラーが組み合わさった典型例です。こうした事例は氷山の一角に過ぎません。
サイバー攻撃による被害の拡大
個人情報保護委員会は「サイバー攻撃による1つの不正アクセス事案から被害が広範囲にわたるケースが発生し件数の増加につながった」と指摘しています。
現役CSIRTとして数多くのインシデント対応を行ってきた経験から言えることは、サイバー攻撃の手法が年々巧妙化しているということです。特に以下のような攻撃が増加しています:
- ランサムウェア攻撃:データを暗号化し身代金を要求
- 標的型攻撃:特定の組織を狙った長期潜伏型攻撃
- 供給網攻撃:信頼できる取引先を経由した攻撃
個人・中小企業でもできる具体的な対策
大企業だけでなく、個人や中小企業も標的になる時代です。実際のフォレンジック調査で分かった効果的な対策をご紹介します:
1. セキュリティソフトによる多層防御
最新のアンチウイルスソフト
は、従来のウイルス対策に加えて、ランサムウェアやフィッシング攻撃、不正なWebサイトからの保護機能を備えています。特に個人事業主や小規模事業者の方には必須のツールです。
2. 通信の暗号化とプライバシー保護
公衆Wi-Fiや不安定なネットワーク環境での作業が多い方には、VPN
サービスの利用を強く推奨します。通信内容の暗号化により、中間者攻撃やデータ盗聴を防ぐことができます。
3. 定期的なセキュリティ更新
OSやソフトウェアの脆弱性を狙った攻撃が非常に多いため、自動更新の設定は必須です。
被害に遭った場合の対応手順
もし個人情報漏えいの被害に遭った場合、以下の手順で対応してください:
- 証拠保全:関連するデータや通信記録を保存
- 被害範囲の特定:影響を受けた情報の範囲を調査
- 関係機関への報告:必要に応じて警察やJPCERT/CCに相談
- フォレンジック調査:専門機関による詳細調査の実施
まとめ:今すぐ始められる対策を
個人情報漏えい件数が過去最多となった今、「自分は大丈夫」という考えは危険です。サイバー攻撃は日々進化しており、個人・法人を問わず誰もが標的になり得ます。
特に重要なのは、信頼できるアンチウイルスソフト
とVPN
を導入することです。これらのツールは、日々の業務や生活の中で知らず知らずのうちに遭遇するリスクから、あなたの大切な情報を守ってくれます。
セキュリティ対策は「転ばぬ先の杖」です。被害に遭ってからでは手遅れになることも多いため、今すぐ行動を起こしましょう。