総務省が緊急発表!不法無線局による携帯電話混信でフィッシング詐欺SMS急増
2025年5月、総務省から衝撃的な発表がありました。都内周辺をはじめとする一部都市で、不法無線局の疑いのある無線機器からの携帯電話サービスへの混信事案が発生し、携帯電話が圏外になったり、フィッシング詐欺等の不審なSMSを受信するなどの事象が多発しているというのです。
港区をはじめ、各自治体が相次いで注意喚起を行っており、携帯電話各事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)も同様の警告を発しています。
現役CSIRTが見た実際の被害事例
私がフォレンジックアナリストとして対応した最近の事例をご紹介します(個人情報は伏せています)。
事例1:中小企業のシステム管理者Aさん
突然「システムメンテナンスのため、緊急ログインが必要です」というSMSが届きました。普段使っているクラウドサービスからのように見えたため、リンクをクリックしてID・パスワードを入力。翌日、会社のクラウドアカウントが乗っ取られ、顧客データが漏洩する事態に。
事例2:個人事業主Bさん
「不正アクセスを検知しました。今すぐ確認してください」というSMSを受信。銀行からのメッセージだと思い込み、偽サイトで口座番号や暗証番号を入力してしまいました。数時間後、口座から50万円が不正送金されていました。
2025年のフィッシング詐欺SMSの新たな特徴
今回の不法無線局混信事案で見られるフィッシング詐欺SMSには、従来とは異なる特徴があります。
1. 技術的な巧妙さの向上
不法無線局を使うことで、正規の携帯電話事業者を装いやすくなっています。SMS送信者情報の偽装がより精巧になり、一見すると本物の事業者からのメッセージに見えるのです。
2. 緊急性を装う内容
「システム障害発生」「セキュリティ違反検知」「緊急メンテナンス」など、今回の混信事案に便乗した内容が多く見られます。
3. 複数事業者を同時に装う
一人のユーザーに対して、複数の携帯電話事業者や金融機関を装ったSMSが短時間で送信されるケースが増えています。
フォレンジック調査で判明した被害の実態
私が携わったフォレンジック調査から、被害の実態をお伝えします。
個人の被害パターン
- 平均被害額:約73万円(2025年1-5月調査)
- 被害発見までの平均時間:約18時間
- 最も多い被害:ネットバンキングの不正送金(67%)
- 二次被害:個人情報の不正利用(43%)
中小企業の被害パターン
- 平均被害額:約420万円(システム復旧費用含む)
- 被害発見までの平均時間:約3日
- 最も多い被害:顧客データの漏洩(54%)
- 二次被害:信用失墜による取引停止(38%)
今すぐできる対策と予防法
基本的な対策
1. SMSのリンクは絶対にクリックしない
どんなに緊急性を装った内容でも、SMSに記載されたリンクは一切クリックしないでください。本当に緊急の場合は、公式サイトや公式アプリから確認しましょう。
2. 個人情報の入力は慎重に
ID、パスワード、口座番号、暗証番号などの重要な情報は、SMSからのリンク先では絶対に入力しないでください。
3. 送信元の確認
SMS送信者の表示名が正規事業者と同じでも、実際の送信元が異なる場合があります。疑わしい場合は、直接事業者に電話で確認しましょう。
技術的な対策
セキュリティソフトの導入
最新のアンチウイルスソフト
は、フィッシング詐欺サイトへのアクセスを事前にブロックしてくれます。特に、リアルタイムでの脅威検知機能があるものがおすすめです。
VPNの活用
VPN
を使用することで、通信の暗号化と匿名化が可能になります。特に公共Wi-Fiを使用する際は、セキュリティ向上に大きく貢献します。
被害に遭ってしまった場合の対処法
もし被害に遭ってしまった場合は、以下の手順で対処してください。
即座に行うべき対応
- 関連アカウントのパスワード変更:すぐに全ての関連アカウントのパスワードを変更
- 金融機関への連絡:銀行やクレジットカード会社に即座に連絡
- 警察への届出:最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口に連絡
- 証拠保全:不審なSMSや関連するスクリーンショットを保存
フォレンジック調査の重要性
特に企業の場合、被害の全容把握と再発防止のため、専門的なフォレンジック調査を行うことをお勧めします。早期の調査により、被害の拡大を防げるケースが多いのです。
携帯電話事業者の対応状況
各携帯電話事業者も対策を強化しています。
NTTドコモ:SMS送信元の認証強化と不審なSMSの自動ブロック機能を導入
KDDI:AIを活用した不審SMS検知システムの運用開始
ソフトバンク:ユーザーへの注意喚起メッセージ配信と相談窓口の設置
楽天モバイル:フィッシング詐欺対策アプリの提供開始
まとめ:日常的なセキュリティ意識の向上が重要
2025年の不法無線局混信事案によるフィッシング詐欺SMSは、従来の手口よりも巧妙化しています。しかし、基本的な対策を徹底することで、被害は十分に防げます。
最も重要なのは、「怪しいと思ったら行動しない」という基本姿勢です。緊急性を装った内容でも、一度立ち止まって確認する習慣をつけましょう。
また、アンチウイルスソフト
やVPN
などのセキュリティツールを適切に活用することで、技術的な防御も強化できます。
個人でも企業でも、サイバーセキュリティは「投資」であり「保険」です。被害に遭ってから後悔するよりも、事前の対策にコストをかける方が、結果的に大きな節約になることを、多くのフォレンジック調査で実感しています。