【現役CSIRT解説】大塚商会のWasabiクラウドストレージサービスがランサムウェア対策に革命をもたらす理由

大塚商会がWasabiクラウドストレージサービスを開始、その狙いとは

大塚商会が米ワサビ・テクノロジーズのクラウドストレージを基盤とした「Wasabiクラウドストレージサービス」の提供を開始しました。このサービスの最大の特徴は、改ざん不可能な状態でのデータ保存を実現する点にあります。

現役CSIRTメンバーとして多くのインシデント対応を経験してきた私から見ると、このサービスは企業のランサムウェア対策において画期的な意味を持っています。

なぜ今、改ざん不可能なバックアップが必要なのか

近年、ランサムウェア攻撃は巧妙化し、従来のバックアップシステムすら標的にするようになっています。実際に私が対応したケースでも、攻撃者がバックアップサーバーに侵入し、復旧用データを暗号化したり削除したりする事例が急増しています。

具体的な被害事例:
– 中小製造業A社:バックアップサーバーまで暗号化され、3週間の業務停止
– 医療機関B病院:電子カルテのバックアップが削除され、紙での運用を余儀なくされた
– IT企業C社:開発中のソースコードバックアップが改ざんされ、製品リリースが6ヶ月延期

Wasabiクラウドストレージサービスの革新的な特徴

1. 不変性(Immutability)機能

Wasabi Hot Cloud Storageの最大の武器は、Object Lock機能による不変性です。一度保存されたデータは、設定した保存期間中は誰も変更・削除できません。これは、ランサムウェアに対する最強の防御策といえます。

2. コスト効率の高さ

従来のクラウドストレージと比較して、Wasabiは大幅にコストを削減できます:
– データ転送料金が無料
– API呼び出し料金が無料
– ストレージ容量のみの課金

3. 高可用性とセキュリティ

11 9’s(99.999999999%)の耐久性を誇り、地理的に分散したデータセンターでデータを保護します。

現実的なランサムウェア対策としての活用法

3-2-1バックアップルールの完成形

私が企業に推奨している「3-2-1バックアップルール」は以下の通りです:
– データのコピーを3つ作成
– 異なる2つのメディアに保存
– 1つはオフサイトに保管

Wasabiクラウドストレージサービスは、この「オフサイト」部分を最適化し、さらに改ざん不可能という要素を加えています。

実際のインシデント対応での威力

私が対応したランサムウェア事件では、不変性バックアップがあった企業は平均24時間以内に復旧できました。一方、従来のバックアップのみの企業は平均2週間の復旧時間を要しています。

中小企業にこそ必要な理由

サイバー攻撃の民主化

現在、ランサムウェア攻撃は「RaaS(Ransomware as a Service)」により、技術的知識のない犯罪者でも実行できるようになっています。つまり、どんな小さな企業でも標的になる可能性があるのです。

復旧費用の現実

IPAの調査によると、中小企業がランサムウェア攻撃を受けた場合の平均復旧費用は500万円を超えています。しかし、適切なバックアップ戦略があれば、この費用を大幅に削減できます。

導入時の注意点と推奨設定

適切な保存期間の設定

Object Lockの保存期間は、業界や法的要件に応じて設定する必要があります:
– 一般企業:30日~90日
– 金融機関:7年以上
– 医療機関:5年以上

アクセス制御の徹底

不変性を活用するためには、適切なアクセス制御が不可欠です。特に、管理者権限の分離と多要素認証の実装は必須です。

セキュリティ専門家が推奨する追加対策

Wasabiクラウドストレージサービスを最大限活用するために、以下の対策も並行して実施することをお勧めします:

エンドポイント保護の強化

ランサムウェアの侵入を防ぐため、高性能なアンチウイルスソフト 0の導入は必須です。AI駆動型の検知機能を持つソリューションを選択することで、未知の脅威にも対応できます。

ネットワークセキュリティの向上

リモートワークが常態化した現在、VPN 0を活用することで、安全な通信環境を構築できます。特に、クラウドストレージへのアクセス時には、VPN経由での接続を強く推奨します。

定期的な脆弱性診断

システムの弱点を事前に発見するため、Webサイト脆弱性診断サービス 0の利用も検討すべきです。特に、Webアプリケーションを通じた侵入を防ぐために、定期的な診断が重要です。

まとめ:データ保護の新時代へ

大塚商会のWasabiクラウドストレージサービスは、単なるバックアップサービスを超えて、企業のデータ保護戦略を根本的に変える可能性を秘めています。

現役CSIRTメンバーとして断言できるのは、ランサムウェア対策において不変性バックアップは必須だということです。攻撃者がどれだけ巧妙な手法を使っても、改ざんできないデータがあれば、企業は確実に復旧できます。

特に中小企業にとって、コスト効率と高いセキュリティを両立できるこのサービスは、まさに救世主的な存在といえるでしょう。

サイバー攻撃が日常的な脅威となった現代において、従来の「バックアップがあれば大丈夫」という考えは既に通用しません。真の意味でのデータ保護を実現するため、不変性を持つクラウドストレージの導入を強く推奨します。

一次情報または関連リンク

大塚商会、「Wasabiクラウドストレージサービス」提供開始 – 電波新聞デジタル

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