組み込み機器のサイバーセキュリティ対策が急務!製造業の実態調査から見えた深刻な現状

製造業の組み込み機器を狙うサイバー攻撃が増加中

IoT時代の到来と共に、製造業の組み込み機器を狙ったサイバー攻撃が急速に増加しています。

MONOist編集部が2024年12月に実施した「組み込み機器向けサイバーセキュリティ対策の動向調査」では、製造業289社を対象に、組み込み機器のセキュリティ対策の実態を調査しました。

現役CSIRTの立場から言うと、この調査結果は製造業界にとって非常に重要な警鐘となっています。

調査で明らかになった衝撃的な実態

調査結果を見ると、「自社で設計開発した組み込み機器がサイバー攻撃を受けた経験」があると回答した企業は6.9%という結果でした。

一見すると低い数字に見えますが、これは氷山の一角です。多くの場合、組み込み機器への攻撃は発見が困難で、被害に気づいていない企業が相当数存在すると考えられます。

実際、私たちCSIRTが対応したインシデントでは、攻撃を受けてから発見まで平均200日以上かかっているケースが多いのです。

組み込み機器を狙う攻撃手法の進化

実際に発生している攻撃事例

現場で対応した実際の事例をいくつか紹介します:

**事例1:製造装置のリモートハッキング**
– 大手部品メーカーの製造装置がランサムウェアに感染
– 生産ライン全体が3日間停止
– 復旧費用約2,000万円、逸失利益約1億円

**事例2:IoTセンサーを踏み台とした内部侵入**
– 工場内のIoTセンサーが乗っ取られ、社内ネットワークに侵入
– 機密設計図面の窃取が発覚
– 競合他社への情報流出により市場優位性を失う

**事例3:組み込み機器のファームウェア改ざん**
– 製品出荷後にファームウェアが改ざんされる
– 顧客先でマルウェアが拡散
– 製品リコールにより約50億円の損失

攻撃者の狙いと手法

組み込み機器を狙う攻撃者の主な目的は以下の通りです:

**1. 知的財産の窃取**
– 製造プロセスの機密情報
– 製品設計図面
– 顧客情報

**2. 生産システムの破壊**
– 製造ライン停止による損失
– 品質データの改ざん
– 安全システムの無効化

**3. 踏み台としての利用**
– 企業ネットワークへの侵入口
– 他のシステムへの攻撃拠点
– ボットネットの一部として利用

セキュリティ対策の現状と課題

対策導入状況の実態

調査によると、「サイバー攻撃に対応可能な機能や手法の導入状況」については:

– 導入済み:18.3%
– 導入を進めている/検討している:31.8%
– 合計:50.1%

約半数の企業が対策に向けて動き出していますが、これは決して十分な数字ではありません。

特に中小企業では、コストや人材不足により対策が遅れている傾向があります。

よくある対策の落とし穴

多くの企業が陥りがちな対策の問題点を指摘します:

**1. 従来のIT向け対策の単純適用**
– 組み込み機器特有のリソース制約を考慮していない
– リアルタイム性要求との両立ができていない

**2. 設計段階でのセキュリティ考慮不足**
– 後付けでの対策は限界がある
– セキュリティ・バイ・デザインの重要性

**3. 運用段階でのセキュリティ管理不備**
– 定期的なセキュリティ更新の仕組みがない
– 脆弱性管理プロセスの欠如

効果的なセキュリティ対策の実装

個人・中小企業での基本対策

限られたリソースでも実施可能な対策を紹介します:

**1. 基本的なセキュリティ対策**
– 開発用PCにアンチウイルスソフト 0を導入
– 社内ネットワークと外部接続はVPN 0で暗号化
Webサイト脆弱性診断サービス 0でWebサイトの脆弱性を定期チェック

**2. 組み込み機器特有の対策**
– デフォルトパスワードの変更
– 不要なサービスの無効化
– 定期的なファームウェア更新

**3. 開発プロセスでの組み込み**
– 脅威モデリングの実施
– セキュアコーディングガイドラインの策定
– 定期的なセキュリティレビュー

企業規模別の対策アプローチ

**中小企業向け**
– コストを抑えた段階的導入
– 外部専門家の活用
– 業界団体での情報共有

**大企業向け**
– 包括的なセキュリティフレームワーク
– 専門チームの設置
– サプライチェーン全体でのセキュリティ強化

今後の展望と提言

業界動向と規制強化

組み込み機器のセキュリティ対策は、今後ますます重要になります:

**1. 法規制の強化**
– サイバーセキュリティ基本法の改正
– 製造物責任法への影響
– 国際標準への対応

**2. 市場要求の高まり**
– 顧客からのセキュリティ要求
– 調達条件としてのセキュリティ対策
– 企業価値への影響

**3. 技術進歩への対応**
– AI・機械学習の活用
– 量子コンピューティングへの備え
– エッジコンピューティング環境での対策

実践的な提言

現役CSIRTとして、以下を強く推奨します:

**1. 早期の対策開始**
– 攻撃は待ってくれません
– 小さな一歩から始める

**2. 専門家との連携**
– 社内リソースだけでは限界
– 外部専門家の積極的活用

**3. 継続的な改善**
– 一度の対策で終わりではない
– 定期的な見直しと更新

まとめ

MONOistの調査結果は、製造業における組み込み機器のセキュリティ対策の現状を如実に示しています。

6.9%という攻撃被害率は決して低い数字ではありません。むしろ、発見されていない攻撃を考慮すれば、実際の被害はより深刻である可能性が高いです。

約半数の企業が対策に向けて動き出している一方で、残りの半数はまだ対策が不十分な状況です。

組み込み機器のセキュリティは、もはや「あったらいいもの」ではなく、「なければならないもの」です。

今すぐ行動を起こし、自社の組み込み機器を守り、ビジネスを継続させるためのセキュリティ対策を始めましょう。

一次情報または関連リンク

MONOistポッドキャスト:組み込み機器向けサイバーセキュリティ対策の動向調査 2024

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