2025年版防衛白書で国際情勢が「戦後最大の試練」と表現される中、私たちが直面している脅威は物理的なものだけではありません。サイバー空間における攻撃は、もはや国家レベルの安全保障問題として位置づけられています。
現役CSIRTとして数々のサイバー攻撃事案を分析してきた立場から、今この瞬間も企業や個人を狙う脅威の実態と、効果的な防御策について詳しく解説します。
急増するサイバー攻撃の実態
2024年だけでも、国内企業を標的としたサイバー攻撃は前年比で約40%増加しました。特に中小企業においては、適切なセキュリティ対策が講じられていないケースが多く、攻撃者にとって格好の標的となっています。
私が実際に対応した事例を紹介しましょう。関西の製造業A社(従業員約200名)では、経理部門のパソコンがランサムウェアに感染し、顧客情報を含む重要データが暗号化されました。攻撃者は500万円の身代金を要求し、システム復旧には3週間を要しました。
フォレンジック調査で判明した侵入経路
デジタルフォレンジック調査の結果、攻撃者は以下の手順で侵入していました:
- 従業員の個人メールアドレスに偽装したフィッシングメール送信
- 添付ファイルを開かせることでマルウェアを感染
- 社内ネットワークに潜伏し、3か月間情報収集
- 管理者権限を奪取後、ランサムウェアを展開
驚くべきことに、この企業ではアンチウイルスソフト
すら導入されておらず、基本的なセキュリティ対策が皆無でした。
個人を狙った巧妙な攻撃手法
企業だけでなく、個人も標的となっています。特に在宅勤務が普及した現在、自宅のネットワークセキュリティの脆弱性を悪用した攻撃が増加しています。
実際の被害事例:個人情報流出
東京都内の会社員B氏のケースでは、自宅のWi-Fiルーターが侵害され、オンラインバンキングの認証情報が窃取されました。攻撃者はVPN
を使用していない通信を盗聴し、約150万円の不正送金を実行しました。
フォレンジック分析により、攻撃者は以下の手順で個人情報を窃取していました:
- 脆弱性のあるWi-Fiルーターにアクセス
- 中間者攻撃により通信内容を盗聴
- 暗号化されていない通信からログイン情報を取得
- オンラインバンキングに不正アクセス
企業が実装すべき多層防御戦略
「戦後最大の試練」とされる現在の国際情勢において、企業は国家レベルの脅威に対応できるセキュリティ体制を構築する必要があります。
基本的なセキュリティ対策
まず最低限実装すべきは、以下の対策です:
- アンチウイルスソフト
の導入による悪意あるソフトウェアの検出・除去
- 定期的なセキュリティアップデートの実施
- 従業員への継続的なセキュリティ教育
- バックアップシステムの構築
Webサイトの脆弱性対策
企業のWebサイトは、攻撃者にとって最も狙いやすい入口の一つです。実際に、Webサイト脆弱性診断サービス
を実施していない企業の約70%で、何らかの脆弱性が発見されています。
私が分析した事例では、ECサイトを運営するC社で、SQLインジェクション攻撃により約1万件の顧客情報が漏洩しました。この攻撃は、定期的な脆弱性診断を実施していれば防げた可能性が高いものでした。
個人ユーザーが今すぐできる対策
個人レベルでも、適切な対策を講じることで多くの攻撃を防ぐことができます。
通信の暗号化
在宅勤務や外出先でのインターネット利用時は、VPN
の使用が不可欠です。特に公共Wi-Fiを使用する際は、通信内容が第三者に盗聴されるリスクが高まります。
エンドポイント保護
個人のパソコンやスマートフォンには、必ずアンチウイルスソフト
を導入しましょう。最新の脅威情報に基づいたリアルタイム保護機能により、未知の攻撃も防御できます。
緊急時の対応策
万が一サイバー攻撃を受けた場合の対応も重要です。
インシデント対応の基本
- 感染の疑いがある機器をネットワークから隔離
- 証拠保全のためのデータ取得
- 関係機関への報告(必要に応じて)
- 専門家によるWebサイト脆弱性診断サービス
の実施
早期発見・早期対応により、被害の拡大を最小限に抑えることができます。
まとめ
2025年版防衛白書が示す「戦後最大の試練」の時代において、サイバーセキュリティは国防の一翼を担う重要な要素となっています。企業・個人を問わず、適切な対策を講じることで、巧妙化する攻撃から身を守ることができます。
今こそ、アンチウイルスソフト
やVPN
の導入、定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
の実施など、包括的なセキュリティ対策を検討する時です。