2025年のサイバー攻撃被害が深刻化している現状
元フォレンジックアナリストとして、2025年に発生したサイバー攻撃事例を見ていると、その巧妙さと影響範囲の広さに改めて危機感を覚えます。今回は、個人ユーザーの皆様にも関係する重要な事例をピックアップし、私たちができる対策について詳しく解説します。
国内企業を襲った主要なサイバー攻撃事例
1. 損保ジャパン – 1,748万件の情報漏えい可能性
2025年4月、損保ジャパンのWebサブシステムに不正アクセスが発生し、最大1,748万件の顧客情報が外部から閲覧可能になった可能性があります。漏えいの対象となった情報は以下の通りです:
- 氏名、住所、電話番号
- メールアドレス
- 生年月日
- 契約内容
幸い、クレジットカード情報やマイナンバーは含まれていませんでしたが、これだけの個人情報が漏えいすると、フィッシング詐欺や不正利用のリスクが高まります。
2. 近鉄エクスプレス – 物流網全停止の衝撃
4月23日未明、近鉄エクスプレスがランサムウェア攻撃を受け、全国規模の貨物輸送が停止しました。この攻撃により、JALの貨物輸送にも影響が及び、サプライチェーン全体に深刻な打撃を与えました。
3. 大阪医科薬科大学 – 教育・医療機関への脅威
4月17日、大阪医科薬科大学がランサムウェア感染により、全国7キャンパスの通信を遮断する事態となりました。教育・医療業務の一時停止は、学生や患者への直接的な影響を与える深刻な問題です。
海外企業の事例から学ぶグローバルな脅威
Oracle – ガバメントクラウドにも影響
Oracleが2度のサイバー攻撃を受け、600万件超のログイン情報が流出した可能性があります。特に注目すべきは、Oracleが日本の「ガバメントクラウド」として認定されている点です。これにより、政府システムへの潜在的な影響も懸念されます。
ラグジュアリーブランドも標的に
Dior、Cartierといった高級ブランドも攻撃を受け、顧客の個人情報が流出しました。これらの事例は、どの業界も安全ではないことを示しています。
個人ユーザーができる具体的な対策
1. 強固なアンチウイルスソフトの導入
従来のウイルス対策だけでは不十分です。現在のサイバー攻撃は、正規ツールを悪用した「Living off the land」攻撃が主流となっており、従来のアンチウイルスソフトでは検知できない場合があります。
そこで重要なのが、以下の機能を持つセキュリティソフトの選択です:
- リアルタイム監視機能
- ランサムウェア対策
- 不正サイトのブロック機能
- フィッシングメール検知
2. VPNを活用した通信の暗号化
公衆Wi-Fiを利用する際は、VPNの使用が必須です。損保ジャパンの事例のように、Webシステムへの不正アクセスが頻発している現在、通信の暗号化は基本的な防御策となります。
VPNを使用することで:
- 通信内容の暗号化
- IPアドレスの秘匿
- 地理的制限の回避
- ISPによる監視の回避
といったメリットがあります。
3. 多要素認証(MFA)の必須化
パスワードだけでは不十分です。重要なアカウントには必ず多要素認証を設定しましょう:
- 銀行・証券会社のオンラインバンキング
- メールアカウント
- クラウドストレージサービス
- SNSアカウント
4. 定期的なバックアップの実施
ランサムウェア攻撃に備え、重要なデータは定期的にバックアップを取りましょう:
- 週1回のフルバックアップ
- オフライン環境への保存
- 復元テストの実施
- 3-2-1ルール(3つのコピー、2つの異なるメディア、1つはオフサイト)の適用
現役CSIRTが教える実践的なセキュリティ習慣
フィッシングメールの見分け方
最近のフィッシングメールは非常に巧妙です。以下のポイントをチェックしましょう:
- 送信者のメールアドレスの確認
- リンク先URLの事前確認(マウスオーバーで表示)
- 緊急性を煽る文言への注意
- 添付ファイルの安易な開封の禁止
ソフトウェアの更新管理
脆弱性を狙った攻撃を防ぐため、以下を心がけましょう:
- OS・ソフトウェアの自動更新有効化
- セキュリティパッチの即座適用
- 不要なソフトウェアのアンインストール
- 定期的な脆弱性スキャン
企業のセキュリティ事故が個人に与える影響
今回の事例を見ると、企業のセキュリティ事故は個人にも大きな影響を与えます:
- 個人情報の悪用:なりすまし、不正契約等のリスク
- サービス停止:日常生活に必要なサービスの利用不可
- 二次被害:漏えいした情報を使った標的型攻撃
これらのリスクから身を守るためには、個人レベルでの対策が不可欠です。
まとめ:多層防御でサイバー脅威に備える
2025年のサイバー攻撃事例から学べることは、「完璧な防御は存在しない」ということです。しかし、適切なアンチウイルスソフトとVPNの組み合わせ、そして基本的なセキュリティ習慣の実践により、リスクを大幅に軽減できます。
重要なのは:
- 脅威を正しく理解する
- 適切なツールを選択・導入する
- 継続的にセキュリティ意識を維持する
- 定期的に対策の見直しを行う
今日からでも始められる対策ばかりです。サイバー攻撃の被害者にならないよう、しっかりと備えていきましょう。