愛知県の調査で判明!中小企業の34.9%がサイバー攻撃被害を経験
帝国データバンクが愛知県内の企業を調査した結果、実に34.9%の企業が過去にサイバー攻撃を受けた経験があることが明らかになりました。つまり、3社に1社以上が既に何らかの被害を受けているということです。
私は長年フォレンジックアナリストとして様々なサイバー攻撃の事後対応に携わってきましたが、この数字は決して他人事ではありません。特に中小企業は大企業への攻撃の「踏み台」として狙われることが多く、被害が深刻化する傾向にあります。
ランサムウェア攻撃の恐ろしい実態
2024年のランサムウェア被害件数は222件で、その6割以上を中小企業が占めています。実際に私が対応したケースでは、製造業のA社(従業員50名)が突然全てのファイルが暗号化され、「72時間以内に5万ドルの仮想通貨を支払え」という脅迫メッセージが表示されました。
最近の攻撃手法はより悪質化
従来のランサムウェアは単純にデータを暗号化するだけでしたが、最近の攻撃は:
- データの暗号化
- 機密情報の窃取・公開脅迫
- 取引先への二次攻撃・脅迫
といった複合的な手法を取っています。建設業のB社では、顧客情報が盗まれ、顧客にも直接脅迫メールが送られるという事態に発展しました。
身代金を払っても解決しない理由
「お金を払えば元に戻るのでは?」と考える経営者の方もいらっしゃいますが、これは非常に危険な判断です。
私が関わった事例では、身代金を支払った企業の約30%で復旧に失敗しています。さらに、一度支払うと「良いカモ」と判断され、再攻撃のターゲットになる可能性も高まります。
基本中の基本:パスワード管理とアップデート
フォレンジック調査で攻撃経路を分析すると、ほとんどのケースで以下のいずれかが原因となっています:
1. パスワードの問題
- 使い回し(異なるサービスで同一パスワード)
- 簡単すぎるパスワード(「password123」など)
- 長期間変更していない
2. アップデート不備
- OSの古いバージョンを使用
- セキュリティパッチの未適用
- ソフトウェアの放置
実際の被害事例として、税理士事務所のC社では、3年前のOSを使用し続けていたパソコンから侵入を許し、顧客の税務データが全て暗号化される事態が発生しました。
個人の方でも同様のリスクがあります。アンチウイルスソフト
で基本的なセキュリティを確保し、外出先でのインターネット利用時はVPN
で通信を保護することをお勧めします。
年1回は「健康診断」を受けましょう
人間が年1回健康診断を受けるように、ITシステムも定期的なチェックが必要です。特に自社のWebサイトは24時間365日攻撃にさらされています。
脆弱性診断の重要性
製造業のD社では、定期的にWebサイト脆弱性診断サービス
を利用していたため、攻撃者が侵入前に脆弱性を発見・修正できました。一方、診断を怠っていた同業のE社は、Webサイトから侵入され、数千万円の被害を受けています。
ペネトレーションテストという選択肢
より高度な対策として、「ホワイトハッカー」による実際の攻撃手法を模したテストがあります。これは数百万円の投資になりますが、大企業への攻撃の踏み台となるリスクを考えれば、決して高い投資ではありません。
今すぐできる対策チェックリスト
個人・小規模事業者向け
- パスワードマネージャーの導入
- OSの自動アップデート設定
- 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入
- 公衆WiFi使用時のVPN
利用
企業向け
- 定期的なバックアップ(オフライン保存)
- 従業員への教育・訓練
- 年1回のWebサイト脆弱性診断サービス
実施
- インシデント対応計画の策定
まとめ:後悔する前に行動を
「うちは狙われないだろう」という油断が最も危険です。実際に被害を受けてからでは、事業継続に深刻な影響を与えかねません。特に中小企業は復旧に時間がかかり、顧客離れや信用失墜のリスクも高いのが現実です。
基本的なセキュリティ対策から始めて、段階的に強化していくことが重要です。個人の方も企業の方も、今すぐできることから始めてみてください。