2025年前半、韓国軍のインターネットを狙ったサイバー攻撃が9262件と、過去5年間で最高を記録したことが明らかになりました。この数字は前年同期の6349件と比較して約46%も増加しており、現代戦がサイバー空間にまで拡大していることを如実に示しています。
フォレンジックアナリストとして数々のサイバーインシデントを調査してきた経験から申し上げると、このような国家レベルの攻撃は決して「遠い国の話」ではありません。実際、私たちが日常的に使用するデジタルインフラは、想像以上に脆弱性を抱えているのが現実です。
急増するサイバー攻撃の実態
韓国軍サイバー作戦司令部の発表によると、攻撃の内訳は以下の通りです:
- ホームページへの侵入企図:9193件
- ハッキングメール送付:69件
- マルウェア攻撃:0件(今年前半)
注目すべきは、過去の推移を見ると明確に攻撃が激化していることです。2021年前半の6146件から始まり、一時的に減少したものの、2025年には急激に増加しています。
IPアドレスの解析により、これらの攻撃の多数が北朝鮮からのものと推定されています。国家が支援するサイバー攻撃グループ(APT:Advanced Persistent Threat)による組織的な攻撃である可能性が高いのです。
民間企業も標的に:防衛産業への攻撃が16倍に急増
さらに深刻なのは、防衛産業企業へのサイバー攻撃届出件数です。2021年から2023年までは1桁だったものが、2024年には16件に急増しました。これは氷山の一角に過ぎません。
私が過去に調査した事例では、ある中小の防衛関連企業が標的型攻撃を受け、機密情報の漏洩が発覚したケースがありました。最初の侵入は、たった1通のフィッシングメールから始まったのです。従業員がうっかりクリックしたリンクから、攻撃者は内部ネットワークに潜伏し、数ヶ月間にわたって機密データを窃取していました。
個人・中小企業が今すぐ実施すべき対策
国家レベルの攻撃が増加する中、個人や中小企業も同様のリスクに晒されています。実際、私が調査したインシデントの多くは、基本的なセキュリティ対策の不備から始まっています。
1. エンドポイントセキュリティの強化
まず最も重要なのは、デバイスレベルでの防御です。従来のアンチウイルスソフト
では検知できない高度な攻撃が増加しているため、AIを活用した次世代のセキュリティソリューションが必要不可欠です。
特に、ゼロデイ攻撃(未知の脆弱性を狙った攻撃)に対する防御力が重要となります。私が調査した事例では、攻撃者が既知のマルウェアを巧妙に改変し、従来のシグネチャベースの検知を回避していました。
2. 通信経路の暗号化
サイバー攻撃の多くは、通信の盗聴から始まります。特にリモートワークが増加した現在、公衆Wi-Fiの利用や自宅ネットワークからの業務アクセスが攻撃の入り口となるケースが急増しています。
私が対応したある企業では、従業員がカフェの無料Wi-Fiから社内システムにアクセスした際、通信を傍受され、認証情報が盗まれていました。VPN
の利用により、このような中間者攻撃を効果的に防ぐことができます。
3. Webサイトの脆弱性対策
企業のWebサイトは、攻撃者にとって格好の標的です。SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング、不適切なアクセス制御など、様々な脆弱性が攻撃の入り口となります。
ある小規模ECサイトの事例では、古いWordPressプラグインの脆弱性を突かれ、顧客の個人情報約3000件が漏洩しました。定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
の実施により、このような脆弱性を事前に発見し、対策を講じることが可能です。
フォレンジック調査から見えるサイバー攻撃の手口
現場でのフォレンジック調査を通じて見えてくるのは、攻撃者の手口の巧妙さです。彼らは以下のような段階的なアプローチを取ります:
- 偵察段階:標的組織の情報収集、従業員のSNS調査
- 初期侵入:フィッシングメール、水飲み場攻撃等
- 権限昇格:脆弱性を悪用した管理者権限の取得
- 横展開:内部ネットワークでの潜伏・拡散
- 目的実行:データ窃取、破壊活動、身代金要求
このような多段階攻撃に対抗するためには、単一の防御策では不十分です。包括的なセキュリティ戦略が必要となります。
CSIRTからの緊急提言
現在の国際情勢を踏まえ、個人・企業問わず、以下の対策を緊急に実施することを強く推奨します:
- 多要素認証の導入:全てのアカウントで実施
- 定期的なセキュリティ教育:フィッシング攻撃の見分け方など
- インシデント対応計画の策定:攻撃を受けた際の初動対応
- バックアップの確保:ランサムウェア攻撃への備え
- 脅威インテリジェンスの活用:最新攻撃手法の把握
特に重要なのは、「攻撃されることを前提とした対策」を講じることです。完全な防御は不可能であり、いかに早期に攻撃を検知し、被害を最小限に抑えるかが勝負となります。
まとめ:今こそ行動を起こすべき時
韓国軍への大規模サイバー攻撃は、現代のデジタル社会が直面するリスクの氷山の一角に過ぎません。国家支援によるAPTグループは、既に次の標的を物色している可能性が高いのです。
フォレンジック調査の現場で痛感するのは、「あの時対策を講じていれば」という後悔の念です。被害を受けてからでは遅いのです。今こそ、包括的なサイバーセキュリティ対策を実施し、デジタル資産を守るための行動を起こしましょう。
サイバー攻撃の脅威は日々進化しています。しかし、適切な知識と対策があれば、リスクを大幅に軽減することが可能です。あなたの大切な情報とプライバシーを守るため、今すぐ行動を開始してください。
一次情報または関連リンク
