VPNがサイバー攻撃の標的になる時代
企業のリモートワークが当たり前になった現在、VPN
は多くの組織にとって必要不可欠なツールとなっています。しかし、私がフォレンジック調査で関わった案件を振り返ると、実はVPNこそがサイバー攻撃者にとって格好の侵入経路となっているケースが増えているのが現実です。
2023年に調査した中小企業のランサムウェア被害事例では、攻撃者は脆弱性のあるVPNゲートウェイを突破し、社内ネットワーク全体に感染を拡大させました。この企業は「VPNがあるから安全」と過信していましたが、結果的に数千万円の損害を被ることになったのです。
Runetaleが提案する革新的なアプローチ
そんな中、ネットワークセキュリティを手掛けるRunetale(ルーンテイル)が、従来のVPNに代わる新しい通信プロダクトを開発し、2024年9月から日本での本格展開を開始しました。
Runetaleのソリューションは、パソコンなどの端末に専用ソフトウェアを導入し、他の端末との通信を暗号化する仕組みです。従来のVPNとは根本的に異なるアーキテクチャを採用することで、サイバー攻撃の標的になりやすいVPNの弱点を克服しようとしています。
現場で見たVPNの脆弱性とは
私がCSIRTメンバーとして対応してきた実際のインシデント事例をご紹介します。
事例1:製造業A社のVPN侵害
従業員数約200名の製造業で発生した事件です。攻撃者は古いバージョンのVPNソフトウェアの脆弱性を突いて侵入し、約3か月間にわたって社内システムに潜伏していました。発見時には顧客情報約5万件が窃取されており、対応費用だけで2000万円を超える損害となりました。
事例2:サービス業B社の認証突破
VPNの多要素認証が適切に設定されていなかった企業では、パスワードスプレー攻撃により複数のアカウントが侵害されました。攻撃者は正規ユーザーになりすまして長期間活動を続け、機密文書の大量窃取に成功していました。
これらの事例から分かるのは、VPNは「設定すれば安全」なツールではなく、適切な運用管理が不可欠だということです。
ゼロトラストの時代に求められる新しいセキュリティモデル
Runetaleのようなゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(ZTNA)ソリューションが注目される背景には、従来の「境界防御」モデルの限界があります。
従来のVPNは「社内ネットワークは安全」という前提に基づいていますが、実際にはネットワーク内部からの攻撃や、侵入後の横移動による被害拡大が深刻な問題となっています。
一方、ゼロトラストモデルでは:
・すべての通信を検証
・最小権限の原則を徹底
・継続的な監視とログ記録
・アプリケーション単位でのアクセス制御
これらの特徴により、たとえ一部が侵害されても被害の拡大を最小限に抑えることができます。
個人ユーザーも無関係ではない脅威
企業だけでなく、個人ユーザーにとってもセキュリティ対策は重要です。在宅勤務中の個人PCが侵害され、会社のネットワークへの侵入経路として悪用される事例も増えています。
個人でできる基本的な対策として:
1. **信頼性の高いアンチウイルスソフト
の導入**
2. **安全なVPN
サービスの利用**
3. **定期的なソフトウェアアップデート**
4. **強力なパスワードと多要素認証の設定**
特にアンチウイルスソフト
は、マルウェアやフィッシング攻撃から身を守る最初の防御線として極めて重要です。
企業が検討すべき次世代セキュリティ対策
Runetaleのような新しいソリューションを検討する企業が増える一方で、既存のセキュリティインフラとの統合や移行計画の策定には専門的な知識が必要です。
企業のセキュリティ担当者におすすめしたいのは:
1. **現在のVPN環境の脆弱性評価**
Webサイト脆弱性診断サービス
を活用して、自社のWebサイトやネットワークインフラの脆弱性を定期的にチェックすることが重要です。
2. **段階的な移行計画の策定**
一度にすべてを変更するのではなく、重要度の高いシステムから順次移行していく戦略が現実的です。
3. **従業員教育の強化**
どんなに優秀な技術を導入しても、それを使う人のセキュリティ意識が低ければ効果は半減します。
まとめ:セキュリティの未来を見据えて
Runetaleのような革新的な企業が提案する新しいセキュリティモデルは、従来のVPNの限界を克服する可能性を秘めています。しかし、どんな技術も万能ではありません。
重要なのは、自社の環境とリスクを正確に把握し、適切なセキュリティ対策を多層的に実装することです。アンチウイルスソフト
やVPN
といった基本的な対策と、Webサイト脆弱性診断サービス
による定期的な脆弱性チェックを組み合わせることで、より堅牢なセキュリティ体制を構築できるでしょう。
サイバー攻撃の手法が日々進化する中、私たちも常に最新の脅威情報とセキュリティ技術にアンテナを張り、適切な対策を講じていく必要があります。