三重県警の発表によると、2024年6月末時点でサイバー犯罪の相談件数は1236件に達しました。前年同期比で406件減少したものの、フィッシング詐欺の手口は日々巧妙化しており、私たちフォレンジック調査官のもとにも被害相談が絶えません。
実際に私が担当した事例では、大手通販サイトを装ったフィッシングメールから個人情報を盗まれ、クレジットカードを不正利用された会社員の方がいらっしゃいます。被害額は約50万円にのぼり、復旧までに3ヶ月かかりました。
急増するフィッシング詐欺の実態
フォレンジック調査の現場で見えてくるのは、攻撃者の手口の変化です。以前は明らかに怪しい日本語のメールが多かったのですが、最近は正規の企業メールと見分けがつかないほど精巧なものが増えています。
特に注意が必要なのが、以下のようなパターンです:
- 「緊急:アカウント停止のお知らせ」といった緊急性を煽る件名
- 「24時間以内にログインしないとアカウントが削除されます」という時間的プレッシャー
- 正規サイトと酷似したログインページへの誘導
- QRコードを使った巧妙なリダイレクト
実際のサイバー攻撃被害事例
昨年、私が調査したある中小企業では、経理担当者がフィッシングメールに騙され、銀行のログイン情報を入力してしまいました。その結果、約200万円が不正送金される被害に遭いました。
この事例で特に問題だったのは、セキュリティ対策が不十分だった点です。従業員のPCには基本的なアンチウイルスソフトしか入っておらず、フィッシングサイトへのアクセスをブロックする機能が働きませんでした。
個人でできる5つの対策方法
1. 信頼性の高いアンチウイルスソフト の導入
最新のアンチウイルスソフト
は、フィッシングサイトへのアクセスを事前にブロックする機能を持っています。私も個人的に使用していますが、怪しいリンクをクリックした際の保護効果は絶大です。
無料のソフトでも基本的な保護は可能ですが、フィッシング対策に特化した有料版の方が検知率が高く、誤検知も少ないのが現実です。
2. VPN でネット接続を暗号化
公衆Wi-Fiを使用する際、VPN
は必須です。私が調査した事例では、カフェの無料Wi-Fiから個人情報を抜き取られたケースもありました。VPN
を使えば、たとえ悪意のあるWi-Fiに接続してしまっても、通信内容が暗号化されるため情報漏洩を防げます。
3. メールの真偽確認を習慣化
緊急性を煽るメールほど、一度冷静になって確認しましょう。正規の企業は、重要な手続きをメールだけで完結させることはありません。必ず公式サイトから直接ログインして確認するか、企業に電話で問い合わせることが重要です。
4. 二段階認証の設定
万が一パスワードが盗まれても、二段階認証があれば被害を最小限に抑えられます。特に金融機関やECサイトでは必須の設定です。
5. 定期的なパスワード変更と管理
同じパスワードを複数のサイトで使い回すのは非常に危険です。パスワード管理ツールを活用し、サイトごとに異なる強固なパスワードを設定しましょう。
企業が実施すべき対策
個人向けの対策だけでは限界があります。特に従業員を抱える企業では、より包括的なセキュリティ対策が必要です。
Webサイトの脆弱性診断
企業のWebサイトが攻撃の踏み台にされるケースも増えています。Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施することで、サイトの弱点を事前に発見し、対策を講じることができます。
私が関わった事例では、ECサイトの脆弱性を突かれて顧客情報が流出し、企業の信用失墜と多額の損害賠償が発生しました。月数万円の診断費用をケチった結果、数千万円の損失を招いたのです。
被害に遭った場合の初動対応
万が一フィッシング詐欺の被害に遭った場合、以下の手順で迅速に対応しましょう:
- 金融機関への連絡:クレジットカードや銀行口座の利用停止
- 警察への届出:最寄りの警察署またはサイバー犯罪相談窓口
- パスワードの変更:関連するすべてのアカウント
- 証拠の保全:フィッシングメールやサイトのスクリーンショット
- 専門家への相談:被害状況の詳細調査と今後の対策
まとめ
サイバー犯罪は年々巧妙化していますが、適切な対策を講じることで被害を大幅に減らすことができます。特にアンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせは、個人でも手軽に実践できる効果的な防御手段です。
また、企業においては従業員教育と並行して、Webサイト脆弱性診断サービス
の実施も検討すべきでしょう。予防にかける費用と被害時の損失を天秤にかければ、事前対策の重要性は明らかです。
サイバー犯罪は「自分には関係ない」と思った瞬間が最も危険です。今日からできる対策を一つずつ実践し、デジタル社会を安全に歩んでいきましょう。