韓国政府が打ち出した「本気のボイスフィッシング対策」とは?
現役のCSIRTメンバーとして、これまで数多くのサイバー詐欺事件を分析してきましたが、韓国政府が今回発表した「振り込め詐欺根絶総合対策」は、正直言って驚きの内容でした。
特に注目すべきは、ボイスフィッシングに使われた電話番号を申告から10分以内に遮断するという迅速対応システム。これまで私が対応してきた事例では、詐欺師が同一番号を使い回すケースが多く、「もう少し早く遮断できていれば…」と歯がゆい思いをすることが頻繁にありました。
10分以内遮断システムの革新性
従来の対応では、被害報告から電話番号の遮断まで数時間、場合によっては翌営業日まで待たされることも珍しくありませんでした。
しかし韓国では:
- 警察庁ボイスフィッシング統合申告対応センターを3倍規模に拡大
- 137人体制の「ボイスフィッシング統合対応団」を24時間365日運営
- 申告受付から10分以内の番号遮断を実現
実際のフォレンジック調査で分かったことですが、詐欺師は同一番号で平均30~50件の架電を行います。つまり、10分以内の遮断により、潜在的な被害者数十人を救えることになるんです。
携帯電話への探知機能標準搭載が画期的
これまで高級スマートフォンにのみ搭載されていたボイスフィッシング探知機能が、今後は中低価格帯の端末にも標準装備されるようになります。
私が手がけた事例では、特に高齢者や機械に不慣れな方が被害に遭うケースが多く見られました。こうした層の多くは価格重視で端末を選ぶため、今回の措置は非常に効果的だと考えられます。
実際の被害事例から見る探知機能の重要性
昨年対応した事例の中で印象的だったのは、70代の個人事業主の方のケースです。「息子が事故を起こした」という典型的な手口で、約200万円を騙し取られました。
事後調査で分かったのは:
- 詐欺師は事前に家族構成を調査済み
- 息子の名前や職場を正確に把握
- 通話中に背景音として救急車のサイレンを流していた
このような巧妙な手口に対して、携帯電話の探知機能があれば、通話開始時点で警告が表示され、被害を防げた可能性が高いのです。
金融会社の「無過失賠償責任」導入の衝撃
今回の対策で最も注目すべきは、金融会社に「無過失賠償責任」を課すという点です。これは被害者が直接送金した場合でも、金融会社が損害を補償するという画期的な制度です。
従来の問題点
これまでの「非対面金融事故責任分担基準」では:
- パスワード偽造・変造による第三者送金のみが対象
- 被害者が騙されて自ら送金した場合は補償対象外
- 実質的な救済に至らないケースが多発
新制度の革新性
無過失賠償責任の導入により:
- 被害者の過失に関係なく補償を受けられる
- 金融機関のセキュリティ投資インセンティブが向上
- 異常取引探知システム(FDS)の精度向上が期待
仮想通貨を使った新手の詐欺への対策
最近の傾向として、仮想通貨を使った資金移動が急増しています。私が分析した2024年の事例では、全体の約30%が仮想通貨経由での送金でした。
仮想通貨詐欺の特徴
- 追跡が困難で資金回収率が極めて低い
- 国境を越えた資金移動が容易
- 取引所での本人確認が不十分なケースが存在
韓国では「通信詐欺被害還付法」を改正し、仮想通貨取引所にも以下の義務を課す予定です:
- 異常取引の探知・監視
- 取引目的の確認強化
- 支払い停止措置
- 被害金の還付システム構築
日本企業・個人が学ぶべき防御策
韓国の先進事例を踏まえ、日本国内でも取り入れるべき対策をご紹介します。
個人向け対策
1. 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入
– リアルタイム脅威検知機能
– フィッシングサイト自動ブロック
– 不審な通信の監視
2. 通信暗号化のためのVPN
活用
– 金融取引時の通信保護
– 公衆Wi-Fi利用時のセキュリティ確保
– 個人情報漏洩リスクの軽減
中小企業向け対策
実際に私が対応した中小企業の事例では、経理担当者がCEO詐欺(ビジネスメール詐欺の一種)により500万円を送金してしまいました。事前に適切なセキュリティ対策が講じられていれば防げた事案です。
企業に必要な対策:
- 従業員へのセキュリティ教育の徹底
- 金融取引の承認フローの見直し
- 定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
の実施
AIを活用した高度な詐欺手口への警戒
最新の調査で明らかになったのは、AI技術を悪用した「ディープフェイク音声」による詐欺の増加です。
実際の事例
今年対応した事例では、詐欺師が被害者の家族の声を数秒間収集し、AIで音声を合成。まるで本物の家族が電話しているかのような状況を作り出していました。従来の「声が違う」という判断基準が通用しない時代になっています。
対策のポイント
- 電話での金銭要求は一旦切って折り返し確認
- 事前に家族間で合言葉を決めておく
- 緊急事態でも必ず第三者を介した確認を行う
まとめ:包括的なサイバー詐欺対策の重要性
韓国政府の今回の対策は、単なる対症療法ではなく、システム全体を見直した包括的なアプローチです。特に注目すべきは:
- 迅速な初期対応システム(10分遮断)
- 技術的予防策(探知機能標準搭載)
- 金融システム全体での責任分担見直し
- 新たな詐欺手口への先制的対応
日本国内でも、個人・企業問わず、多層的な防御策を講じることが不可欠です。サイバー詐欺は年々巧妙化しており、「自分は大丈夫」という過信が最大のリスクとなります。
現在のサイバー脅威環境では、単一の対策だけでは不十分です。アンチウイルスソフト
、VPN
、そして企業の場合はWebサイト脆弱性診断サービス
を組み合わせた多層防御が、あなたの資産と情報を守る最も確実な方法なのです。