海中に潜むゴーストフィッシングと企業システムのゴーストアクセスの共通点
北海道羅臼町で取り組まれている海中ごみ回収事業を見て、私はデジタルフォレンジックの現場で遭遇する問題との共通点を感じました。
知床の海では、古い漁網が海底に残って「ゴーストフィッシング」を引き起こし、海洋生物に被害を与えています。これって、企業のITシステムにも似たような現象があるんです。
企業システムに潜む「デジタルゴースト」の正体
私がフォレンジック調査で遭遇した実際の事例をお話しします。
ある中小企業で、退職した従業員のアカウントが削除されずに残っていたケースがありました。その「ゴーストアカウント」が、実は外部の攻撃者によって悪用されていたんです。
- 退職者のアカウントに不正アクセス
- 機密データの窃取
- ランサムウェア感染の踏み台として利用
海中の古い漁網が魚を捕らえ続けるように、放置されたアカウントやシステムの脆弱性は、知らないうちに企業に被害をもたらし続けるんです。
なぜ「デジタルごみ」は放置されるのか
羅臼町の海中ごみ回収事業では、しけや流氷で漁網が海に流出してしまうのがやむを得ない事情でした。
企業のIT環境でも似たような「やむを得ない事情」があります：
人員不足と予算の制約
- IT担当者の不足
- セキュリティ対策への予算確保の困難
- システム更新の先送り
可視化の困難さ
海中のごみが見えにくいように、企業システム内の脅威も目に見えません。私がフォレンジック調査をしていて驚くのは、多くの企業が自社システムの全体像を把握できていないことです。
実際に遭遇したサイバー攻撃事例
ケース1：製造業A社の場合
- 古いWebサーバーの脆弱性を放置
- 攻撃者が侵入し、3ヶ月間潜伏
- 顧客データ10万件が流出
- 業務停止による損失：約2,000万円
この会社では、使わなくなったWebサーバーをそのまま放置していました。まさに「デジタルのゴーストフィッシング」状態だったんです。
ケース2：小売業B社の場合
- 退職者のアカウント削除忘れ
- そのアカウントが乗っ取られる
- 社内ネットワークへの不正侵入
- ランサムウェア感染で全店舗システム停止
「デジタルごみ」から企業を守る具体的対策
知床のダイビング企画が継続的に海中ごみを回収するように、企業も継続的なセキュリティ対策が必要です。
1. 定期的なシステム棚卸し
- 使用していないサーバーの洗い出し
- 不要なアカウントの削除
- 古いソフトウェアのアップデート
2. アクセス権限の見直し
私が調査した企業の多くで、必要以上の権限を持つアカウントが放置されていました。
- 最小権限の原則の徹底
- 定期的な権限見直し
- 多要素認証の導入
3. セキュリティツールの活用
個人レベルでできる対策から始めることが重要です：
- 個人向けアンチウイルスソフト
：マルウェアの検出・除去 - VPN
：通信の暗号化でデータ保護
- 企業向けWebサイト脆弱性診断サービス
：システムの脆弱性診断
：システムの脆弱性診断継続的な取り組みの重要性
知床ダイビング企画の関代表が「継続が大切」と語っているように、セキュリティ対策も一度やって終わりではありません。
私がCSIRTで対応してきた経験から言えるのは、**攻撃者は常に新しい手法を使ってくる**ということです。
年間スケジュール例
- 四半期ごと：システム棚卸し
- 半年ごと：アクセス権限見直し
- 年1回：包括的な脆弱性診断
- 随時：セキュリティ意識向上研修
中小企業でもできるセキュリティ対策
「うちは小さい会社だから狙われない」と思っていませんか？
実は、中小企業こそ狙われやすいんです。大企業と違ってセキュリティ対策が手薄だからです。
すぐにできる対策
- パスワード管理の徹底
- 定期的なバックアップ
- 従業員のセキュリティ教育
- 基本的なセキュリティソフトの導入
特に、アンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせは、個人・小規模事業者にとって効果的な「最初の一歩」となります。
まとめ：デジタル環境の「持続可能な保全」を
知床の海中ごみ回収事業は「サステナブルツアー」として観光客も参加できる取り組みに発展しました。
企業のセキュリティ対策も同じように、全社員が参加する「持続可能な取り組み」にしていく必要があります。
- 経営陣の理解と支援
- 従業員全員の意識向上
- 継続的な投資と改善
- 外部専門家との連携
海の生き物を守るために海中ごみを回収するように、企業の大切な資産を守るためにも「デジタルごみ」の除去は欠かせません。
まずは身近なところから始めて、徐々に範囲を広げていく。そんなアプローチで、あなたの会社のデジタル環境も守っていきませんか。
