2025年10月1日に実施される国勢調査を悪用したフィッシング詐欺が早くも確認されており、フィッシング対策協議会が緊急の注意喚起を行いました。私もCSIRTの現場で数多くのフィッシング被害を見てきましたが、この手の「公的制度に便乗した詐欺」は特に巧妙で、被害者も多いのが実情です。
国勢調査フィッシング詐欺の手口を詳しく分析
今回確認されているフィッシング攻撃は、以下のような特徴があります:
悪質な心理操作テクニック
不安を煽る要素:
- 「全住民に回答義務がある」という正しい情報を悪用
- 「未回答だと罰則対象」として恐怖心を植え付け
- 実際とは異なる勝手な回答期限を設定
興味を引く要素:
- 「先着順の数量限定で記念品を用意」という甘い誘惑
- 「特別な優遇措置」などの偽の特典
詐取される個人情報
偽サイトに誘導された後、以下の情報を要求されます:
- 電話番号
- SMS認証コード
- 住所・氏名などの基本情報
- 場合によってはクレジットカード情報
実際の被害事例から学ぶ教訓
私がフォレンジック調査で関わった類似事例では、以下のような被害が発生しています:
個人の被害事例
事例1:中小企業経営者(50代男性)
「国勢調査の回答が漏れている」というSMSを受信し、慌てて偽サイトにアクセス。電話番号と認証コードを入力した結果、その後数週間にわたって様々な詐欺電話やSMSが届くように。最終的に銀行口座の不正利用未遂事件まで発生しました。
事例2:高齢者夫婦(70代)
メールで「国勢調査の記念品がもらえる」という文言に惹かれてアクセス。個人情報を入力後、身に覚えのない商品の代引き配送が複数回発生し、総額15万円の被害に。
本物と偽物の見分け方
国勢調査の正規の手続きと詐欺メールの違いを明確にしておきましょう:
本物の国勢調査の特徴
- 調査員が直接訪問:調査票の配布は原則として調査員が行う
- 公式ドメインの使用:stat.go.jp など政府機関の正規ドメイン
- 記念品は存在しない:回答に対する景品や記念品の配布は一切なし
- 罰則の具体的内容:実際の罰則は50万円以下の罰金(ただし適用は稀)
詐欺メールの典型的な特徴
- 緊急性を過度に強調する文言
- 「限定」「特典」「記念品」などの誘惑的な表現
- 不正確な期限設定
- 怪しいドメイン(例:gov-census.com など政府を装った偽ドメイン)
被害を防ぐための具体的対策
個人でできる対策
メール・SMS対策:
- 送信者のドメインを必ず確認
- リンクをクリックする前にURLを確認
- 不審なメールは即削除
デバイスのセキュリティ強化:
アンチウイルスソフト
を導入し、フィッシングサイトへのアクセスを自動的にブロックすることで、うっかりアクセスしてしまった場合でも被害を防げます。最新のアンチウイルスソフトは、リアルタイムでフィッシングサイトのデータベースと照合し、危険なサイトを即座に警告してくれます。
通信のセキュリティ対策
外出先でフリーWi-Fiを使用する際は、VPN
を活用することで通信を暗号化し、仮に偽のアクセスポイントに接続してしまった場合でも個人情報の漏洩を防げます。
中小企業が注意すべきポイント
企業では従業員が個人的にこうした詐欺メールを受信し、会社のネットワーク経由でアクセスしてしまうリスクがあります。
企業向け対策
- 従業員教育の徹底:フィッシング詐欺の最新手口を定期的に共有
- セキュリティポリシーの明確化:個人的なメールを業務端末で確認することの禁止
- 技術的対策の導入:メールフィルタリングやWebフィルタリングの強化
Webサイトを運営している企業は、Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施し、自社サイトがフィッシングサイトの模倣対象になっていないかを確認することも重要です。
もし被害に遭ってしまった場合の対処法
万が一、個人情報を入力してしまった場合は、以下の手順で対処してください:
- 即座に関連アカウントのパスワード変更
- 銀行・クレジットカード会社への連絡
- フィッシング対策協議会への報告(https://www.antiphishing.jp/)
- 警察への相談(#9110または最寄りの警察署)
まとめ:日頃からの備えが被害防止の鍵
国勢調査のような大規模な公的制度は、必ず悪用されます。これは残念ながら避けられない現実です。重要なのは、私たち一人ひとりが正しい知識を持ち、適切なセキュリティ対策を講じることです。
特に今回のような心理的な誘導を使った攻撃は、どんなに注意深い人でも一瞬の隙を突かれる可能性があります。技術的な対策(アンチウイルスソフト
やVPN
など)と組み合わせることで、多層防御を構築することが何より大切です。
国勢調査は国民の義務ですが、それを悪用した詐欺から身を守ることも、もはや現代社会を生きる上での必須スキルといえるでしょう。
一次情報または関連リンク
フィッシング対策協議会は、まもなく実施される「国勢調査」に便乗したフィッシング攻撃が確認されているとして注意喚起を行った – Security NEXT