ロッテカードハッキング事件が暴いた業界の闇
2024年に発生したロッテカードの大規模ハッキング事件。この事件をきっかけに、韓国カード業界全体のセキュリティ投資実態が明らかになり、その実態は衝撃的なものでした。
金融監督院の調査によると、韓国の専業カード会社8社の年間総予算に占める情報保護予算の割合は、なんと平均わずか約1.5%程度。特にロッテカードに至っては0.3%という驚愕の数値でした。
各社の情報保護予算配分比率(年間総予算比)
- KB国民カード:4.5%(最高水準)
- ウリカード:3.6%
- ハナカード:3.0%
- 現代カード:1.1%
- BCカード:0.8%
- サムスンカード:0.6%
- 新韓カード:0.4%
- ロッテカード:0.3%(最低水準)
この数値を見て、私はフォレンジック調査を行ってきた経験から背筋が寒くなりました。海外の金融機関では、情報保護予算は最低でも総予算の2〜3%は確保するのが常識です。
情報保護人材の配置も課題山積み
予算だけでなく、人材配置にも大きな問題があることが判明しています。
各社のIT人材に占める情報保護専門人材の割合は以下の通りです:
- サムスンカード:15.6%
- ロッテカード:15.5%
- 現代カード:12.1%
- ウリカード:11.8%
- KB国民カード:9.8%
- BCカード:9.3%
- 新韓カード:8.9%
- ハナカード:7.3%
興味深いことに、ロッテカードは情報保護人材の割合では2位という数値を示しています。しかし、これが示すのは「人材はいるが、予算が圧倒的に不足している」という深刻な状況です。
サイバー攻撃被害の実態:中小企業の事例から学ぶ
私がこれまで手がけたフォレンジック調査では、セキュリティ投資を怠った企業の被害は甚大でした。
ある中小企業のランサムウェア被害事例
年商50億円の製造業A社では、IT予算の1%未満しかセキュリティに投資していませんでした。結果として:
- ランサムウェアにより全社システムが3週間停止
- 復旧費用だけで2000万円
- 機会損失を含めると被害総額は5億円超
- 顧客情報流出により賠償責任も発生
この事例からも分かるように、「セキュリティは投資ではなく保険」という考え方が重要です。
個人ができるセキュリティ対策
企業のセキュリティ体制に問題がある以上、個人レベルでの対策が必要不可欠です。
基本的な防御策
- アンチウイルスソフト
の導入
マルウェアやフィッシング攻撃から身を守る最初の防御線です。特に金融機関のWebサイトにアクセスする際は必須です。 - VPN
の活用
公共Wi-Fiでの金融取引時などに通信を暗号化し、盗聴を防げます。 - 多要素認証の設定
カード会社のオンラインサービスでは必ず多要素認証を有効にしましょう。 - 定期的なパスワード変更
特に金融関連のアカウントは3ヶ月に1回は変更することをお勧めします。
企業が取るべき本質的対策
適切な予算配分
海外の事例を参考にすると、年間IT予算の最低20%、総予算の2〜3%は情報保護に投資すべきです。ロッテカードの0.3%は論外と言えるでしょう。
定期的な脆弱性診断
Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施することで、攻撃者に狙われる前に問題を発見・修正できます。特に金融機関では月1回の診断が推奨されます。
インシデント対応体制の構築
私の経験では、被害を最小限に抑える企業は必ず以下の要素を備えています:
- 24時間体制のSOC(Security Operation Center)
- インシデント対応チームの明確な役割分担
- 定期的な訓練と体制見直し
- 外部専門機関との連携体制
政府の対応と今後の展望
ロッテカード事件を受け、韓国政府は企業に対する重い懲戒方針を発表しました。これは日本の金融機関にとっても他人事ではありません。
日本でも金融庁による「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」が年々厳格化されており、セキュリティ投資は「やるかやらないか」ではなく「どの程度やるか」の問題になっています。
まとめ:今すぐできる対策から始めよう
ロッテカードハッキング事件は、企業のセキュリティ投資不足がいかに深刻な問題を引き起こすかを示した典型例です。
個人として今すぐできることは:
- 信頼できるアンチウイルスソフト
を導入する
- 安全なVPN
を利用する
- 金融サービスのセキュリティ設定を見直す
- 不審なメールやリンクを絶対にクリックしない
企業経営者の方であれば、Webサイト脆弱性診断サービス
の定期実施を強くお勧めします。
サイバーセキュリティは「転ばぬ先の杖」です。被害を受けてからでは遅すぎることを、ロッテカード事件から学び取りましょう。