2025年9月30日、日立ソリューションズがイスラエルのSeraphic社と販売代理店契約を締結し、国内初となるエンタープライズブラウザソリューション「Seraphic」の提供を10月1日より開始すると発表しました。このソリューションは、従来のセキュリティ対策では防ぎきれなかったゼロデイ攻撃やフィッシング攻撃から、Webブラウザを直接保護する革新的な技術として注目を集めています。
エンタープライズブラウザとは何か
エンタープライズブラウザは、企業環境に特化したWebブラウザのセキュリティ強化技術です。従来の個人向けブラウザとは異なり、企業の機密情報保護やサイバー攻撃に対する高度な防御機能を備えています。
現在、多くの企業がWebベースの業務アプリケーションを利用しており、Webブラウザは業務の中心となっています。しかし、このWebブラウザこそが、サイバー攻撃者にとって最も狙いやすい攻撃経路となっているのが現実です。
Seraphicの革新的な防御技術
「Seraphic」の最大の特徴は、特許取得済みの独自技術による「不正なメモリアクセスの無効化」です。この技術により、以下のような攻撃を効果的に防御できます:
- ゼロデイ攻撃:未知の脆弱性を悪用した攻撃
- フィッシング攻撃:偽のWebサイトを使った情報窃取
- ランサムウェア攻撃:Webブラウザ経由での感染
- データ漏洩:コピー&ペースト操作の制限による防止
実際のサイバー攻撃事例から学ぶ重要性
私がフォレンジックアナリストとして調査した事例では、多くの中小企業がWebブラウザ経由の攻撃で深刻な被害を受けています。
事例1:製造業A社のケース
従業員が業務中に閲覧したWebサイトが改ざんされており、ブラウザの脆弱性を悪用したマルウェアに感染。気づいた時には既に機密設計図が暗号化され、身代金を要求されていました。
事例2:サービス業B社のケース
巧妙に作られたフィッシングサイトに従業員がアクセスし、業務システムの認証情報を入力。その結果、顧客データベース全体が不正アクセスされ、個人情報が流出する重大インシデントに発展しました。
従来のセキュリティ対策との違い
従来のアンチウイルスソフト
やファイアウォールは、既知の脅威に対しては有効ですが、ゼロデイ攻撃のような未知の脅威には限界があります。また、パッチの適用までに時間がかかるため、その間は脆弱性が放置された状態となります。
「Seraphic」は、このような既存のセキュリティソリューションの弱点を補完し、Webブラウザレベルでの根本的な防御を実現します。特に、以下の点で優位性があります:
- パッチ適用を待たずに未知の攻撃を防御
- 既存のブラウザをそのまま利用可能
- Fortune500企業での採用実績
- 管理者の負担軽減
企業が取るべきセキュリティ対策
現代の企業におけるセキュリティ対策は、多層防御が基本です。「Seraphic」のようなエンタープライズブラウザソリューションに加えて、以下の対策も併せて検討することが重要です:
基本的なセキュリティ対策
- 定期的なアンチウイルスソフト
の更新と運用
- 従業員へのセキュリティ教育の実施
- VPN
を使用したリモートアクセスの保護
- Webサイト脆弱性診断サービス
による定期的な脆弱性チェック
インシデント対応体制の構築
万が一攻撃を受けた場合に備え、インシデント対応計画の策定と定期的な訓練も欠かせません。特に中小企業では、外部の専門家との連携体制を整えておくことが重要です。
まとめ:新時代のWebセキュリティへの対応
「Seraphic」の国内提供開始は、日本企業のWebセキュリティ対策に新たな選択肢をもたらします。従来の対策では防げなかった高度な攻撃に対する防御力向上が期待できるでしょう。
ただし、どんなに優秀なセキュリティソリューションも万能ではありません。複数の対策を組み合わせた包括的なセキュリティ戦略の構築が、現代の企業には不可欠です。
特に、Webブラウザを多用する業務環境では、エンタープライズブラウザという新しいアプローチは検討価値が高いと考えられます。自社のリスク評価を行い、適切なセキュリティ投資を検討していくことが、今後のサイバーセキュリティ対策の鍵となるでしょう。
一次情報または関連リンク
日本経済新聞 – 国内初、利用中のWebブラウザをエンタープライズブラウザ化し、サイバー攻撃を無効化する「Seraphic」を提供開始