証券口座乗っ取り被害の実態が衝撃的すぎる
投資を始めたばかりの方、もしくは長年投資をされている方、どちらにも関係する深刻な問題が起きています。
2025年1月から6月までの半年間で、なんと1万2758件もの証券口座乗っ取り被害が報告されています。被害額は不正売却だけで約3044億円、不正買い付け金額は約2666億円という途方もない規模です。
特に4月がピークで、1カ月間だけで5351件の不正アクセスが発生。現在は落ち着いてきたとはいえ、6月でも1539件の被害が続いています。
私がフォレンジック調査で実際に扱ったケースでは、被害者の方が朝起きて証券アプリを確認すると、保有していた日本株がすべて売却され、見覚えのない中国株が大量購入されていました。その中国株は既に大幅下落しており、数百万円の損失となっていたのです。
狡猾すぎる犯行手口の全貌
なぜ「買い付け」だけで被害になるのか?
「勝手に株を買われただけなら、売れば元に戻るんじゃないの?」そう思われる方も多いでしょう。しかし、これこそが犯人グループの狡猾な手口なのです。
- 下準備:犯人グループのメンバーAが、流動性の低い特定銘柄(多くは中国株)を安値で購入
- 乗っ取り実行:犯人グループのメンバーBが、あなたの口座から保有株式を売却し、そのお金で同じ銘柄を大量購入
- 価格操作:大量購入により株価が人為的に釣り上げられる
- 利益確定:メンバーAが高値で売り抜け、巨額の利益を得る
- 被害確定:あなたの口座には高値掴みした株式が残り、その後急落して多額の含み損が発生
この手口の恐ろしいところは、犯人たちが確実に利益を得る一方で、被害者は必ず損失を被る構造になっていることです。
なぜIDとパスワードが流出するのか?
証券会社からの情報流出は確認されていない
まず安心していただきたいのは、主要ネット証券5社(SBI、楽天、マネックス、松井、三菱UFJ)から個人情報が流出した事実はありません。
では、なぜ認証情報が犯人の手に渡ってしまうのでしょうか?
「本人による自覚なき流出」が最大の原因
現在、最も多いとされる原因がフィッシング詐欺です。しかし、従来のような明らかに怪しいメールではありません。
AI技術の発達により、証券会社からの正規メールと見分けがつかないレベルの偽メールが作られています。デザイン、文章、送信者名、すべてが本物そっくりなのです。
実際のフォレンジック調査では、以下のようなケースが多く見られます:
- 「緊急:セキュリティアップデートのお知らせ」といった件名の偽メール
- 本物と区別がつかない偽ログインページ
- 「24時間以内に認証しないとアカウントが停止されます」といった緊急性を演出する文言
被害者の多くは、自分がフィッシング詐欺に遭ったことすら気づいていません。
今すぐできる具体的な対策
1. メールリンクは絶対にクリックしない
証券会社から重要な通知が来た場合でも、メール内のリンクは使わず、必ずブラウザから公式サイトにアクセスしましょう。
2. 二段階認証の必須設定
まだ設定していない方は、今すぐに二段階認証を有効にしてください。これだけで被害リスクは大幅に減少します。
3. パスワード管理の強化
- 証券口座専用の複雑なパスワードを設定
- 他のサービスとは絶対に使い回さない
- 定期的にパスワードを変更する
4. 定期的な口座確認
最低でも週に1回は口座状況を確認し、不審な取引がないかチェックしましょう。
5. セキュリティソフトの導入
フィッシングサイトを事前に検知してくれるアンチウイルスソフト
の導入は必須です。最新の脅威に対応したセキュリティソフトなら、偽サイトへのアクセスを未然に防いでくれます。
6. VPNの活用
公衆Wi-Fiでの取引は絶対に避け、どうしても外出先でアクセスする必要がある場合はVPN
を使用しましょう。通信の暗号化により、中間者攻撃から身を守れます。
企業が取るべき対策
個人投資家だけでなく、証券関連システムを運営する企業の方々にとっても、この問題は他人事ではありません。
Webサイトの脆弱性診断は必須
フィッシングサイトが巧妙化する中、正規サイト自体のセキュリティも重要です。Webサイト脆弱性診断サービス
により、サイバー攻撃の入り口となりうる脆弱性を定期的にチェックしましょう。
従業員教育の徹底
社内からの情報漏洩を防ぐため、フィッシング攻撃への対策研修を定期的に実施することが重要です。
被害に遭ってしまった場合の対応
もし不正取引を発見した場合は、以下の手順で対応してください:
- 即座に証券会社に連絡:24時間対応の緊急連絡先に即座に連絡
- パスワード変更:全アカウントのパスワードを緊急変更
- 証拠保全:スクリーンショットやメールの保存
- 被害届の提出:警察への被害届提出を検討
- 補償制度の確認:各証券会社の補償制度を確認し、必要書類を準備
まとめ:今すぐ行動を起こそう
証券口座乗っ取り被害は、もはや「自分には関係ない」と言えない状況になっています。1万件を超える被害の多くは、ちょっとした油断から始まっています。
今回お伝えした対策は、どれも今すぐ実行できるものばかりです。特に:
- 二段階認証の設定
- アンチウイルスソフト
の導入
- VPN
の活用
- 定期的な口座チェック
これらは必須の対策として、今すぐ実行してください。
大切な資産を守るのは、最終的には自分自身です。サイバー犯罪者たちは日々手口を巧妙化させていますが、適切な対策を取ることで被害は確実に防げます。