こんにちは。現役CSIRTメンバーとして日々サイバー攻撃の最前線で戦っている私が、今回話題になっている自衛隊サイバー防衛隊の初公開と能動的サイバー防御法について、皆さんにわかりやすく解説したいと思います。
自衛隊サイバー防衛隊が初めてテレビ公開された理由
先月、国会で成立した「能動的サイバー防御」に関する法律。これまで秘密のベールに包まれていた自衛隊サイバー防衛隊が、なぜ今回初めてテレビカメラの前に姿を現したのでしょうか?
答えは単純です。それだけサイバー攻撃の脅威が深刻化しているからです。
東京・市ヶ谷の防衛省地下にある執務室では、24時間体制で複数の隊員がチームプレーでサイバー攻撃に対処しています。フォレンジックアナリストとして現場を見てきた私から言わせてもらうと、この光景は決して大げさなものではありません。
「受け身」から「攻め」へ:能動的サイバー防御とは?
これまでの日本のサイバー防御は、いわば「城壁を高くして敵を待つ」スタイルでした。しかし、新法成立により、以下のことが可能になりました:
- 平時からの通信情報の収集・分析
- 攻撃予兆のあるサーバーへの侵入
- 攻撃ツールの無害化
これは国家レベルの話ですが、実は個人や中小企業も同じような発想の転換が必要なんです。
現場で見た被害事例:なぜ個人・企業の対策が急務なのか
私がフォレンジック調査で関わった実際の事例をいくつか紹介します(もちろん詳細は伏せています):
事例1:地方の製造業A社
従業員50名の製造業で、ランサムウェア攻撃を受けました。最初の侵入経路は、社長のパソコンにインストールされていた古いソフトウェアの脆弱性でした。被害額は復旧費用だけで500万円を超えました。
事例2:個人事業主Bさん
フリーランスのデザイナーが、クライアントとのやり取りで使っていたメールアカウントを乗っ取られ、偽の請求書を送信されるBEC(ビジネスメール詐欺)の被害に。信用失墜で契約を失いました。
こうした事例で共通しているのは、基本的なセキュリティ対策が不十分だったことです。
個人・中小企業が今すぐできる「能動的防御」
国家レベルの能動的サイバー防御は自衛隊に任せるとして、私たち個人や中小企業ができることは何でしょうか?
1. 高品質なアンチウイルスソフト の導入
「無料のアンチウイルスで十分」と思っている方、それは危険です。最新の脅威に対応するには、リアルタイム検知機能やランサムウェア対策機能を持つ有料版が必要です。私が現場で見る限り、無料版では防げない攻撃が増えています。
2. VPN による通信の暗号化
テレワークが当たり前になった今、公衆Wi-Fiを使う機会も増えました。しかし、暗号化されていない通信は攻撃者にとって「のぞき見し放題」の状態です。特に重要なデータを扱う際は、VPNで通信を保護することが必須です。
3. 定期的なバックアップ
ランサムウェア攻撃を受けても、適切なバックアップがあれば被害を最小限に抑えられます。クラウドと物理メディアの両方にバックアップを取ることをお勧めします。
人材不足は国だけの問題ではない
記事でも触れられていますが、自衛隊はサイバー人材を2027年度末までに4000人まで増やす計画です。しかし、人材不足は民間企業でも深刻です。
だからこそ、一人ひとりがセキュリティ意識を高め、基本的な対策を確実に実行することが重要なのです。
まとめ:今すぐ行動を
自衛隊サイバー防衛隊の公開は、日本のサイバーセキュリティが新たなフェーズに入ったことを示しています。しかし、国の防御体制が整っても、私たち個人や企業が無防備では意味がありません。
サイバー攻撃は「いつか起こるかもしれない」ものではなく、「いつ起こってもおかしくない」ものです。今回紹介した対策を、ぜひ今すぐ検討してください。
特にアンチウイルスソフト
とVPN
の導入は、費用対効果が高く、すぐに始められる対策です。被害を受けてから後悔するより、今行動することをお勧めします。