また起きてしまった企業への不正アクセス事件
日本ゼオングループの株式会社トウペで発生した不正アクセス事件、みなさんはご存知でしょうか?3月6日にサーバ機器でシステム障害が発生し、その後の調査で不正アクセスが判明したという事例です。
私がCSIRTで対応してきた数々の事件を振り返ると、この手の「最初はシステム障害だと思っていたら実は不正アクセスだった」というパターンは本当に多いんです。
企業の不正アクセス事件から見えてくる攻撃の手口
今回のトウペの事件で興味深いのは、まず「サーバ機器の一部でシステム障害」として認識されていた点です。現場でフォレンジック調査を行っていると、この初期対応の段階で多くの企業が判断を誤ってしまうケースを目の当たりにします。
攻撃者は巧妙で、最初は目立たないように活動します。システムの動作を少しずつ不安定にさせて、管理者が「ただの障害かな?」と思わせるんです。その間に、水面下で以下のような活動を行います:
- 内部ネットワークの偵察
- 権限昇格の試行
- 重要データの特定と窃取
- バックドアの設置
個人や中小企業でも起こりうる同様のリスク
「でも、これって大企業の話でしょ?」と思われるかもしれませんが、実は個人や中小企業こそ注意が必要なんです。
私が調査した事例では、フリーランスのWebデザイナーの方が、クライアントからの依頼メールと思ってマルウェア付きの添付ファイルを開いてしまい、PCが乗っ取られたケースがありました。その後、そのPCを踏み台にして、クライアント企業のネットワークまで侵入されてしまったんです。
また、従業員10名程度の小さなIT企業では、古いVPNソフトウェアの脆弱性を突かれて、社内の顧客データベースが丸ごと流出した事件もありました。
個人でできる効果的な対策
企業レベルのCSIRTを持てない個人や小規模事業者でも、しっかりとした対策は可能です。
基本的な防御の要
まず最も重要なのが、信頼性の高いアンチウイルスソフト
の導入です。「無料のもので十分」と考える方も多いのですが、現役のフォレンジックアナリストとして断言します:有料のアンチウイルスソフト
は投資する価値があります。
無料版と有料版の違いは、検出精度だけではありません。リアルタイム監視、ヒューリスティック検知、ゼロデイ攻撃への対応力など、実際に攻撃を受けた時の「守備力」が全然違うんです。
通信の安全性確保
次に重要なのがVPN
の活用です。特にリモートワークが当たり前になった現在、公衆Wi-Fiを使う機会も増えていますよね。
先月対応した事件では、カフェの無料Wi-Fiを使ってオンラインバンキングにアクセスした個人事業主の方が、通信を傍受されて不正送金の被害に遭いました。VPN
を使っていれば防げた事件です。
早期発見のためのチェックポイント
トウペの事件のように、初期段階では「ただのシステム障害」に見えることも多いです。以下のような症状があったら、不正アクセスを疑ってみてください:
- PCの動作が急に重くなった
- 見覚えのないソフトウェアが起動している
- ネットワーク通信量が異常に多い
- 勝手にファイルが作成・削除されている
- ログイン履歴に覚えのないアクセスがある
まとめ:備えあれば憂いなし
今回のトウペの事件は、企業のセキュリティ対策の重要性を改めて教えてくれました。しかし、個人や小規模事業者だからといって関係ないわけではありません。
適切なアンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせ、そして日頃からの注意深い観察。これらがあれば、大部分の攻撃は防ぐことができます。
被害に遭ってからでは遅いんです。今日から、できることから始めてみませんか?
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