NTTグループがサイバー攻撃対応支援サービス開始、インシデント対応からフォレンジックまで包括的にサポート

現役のフォレンジックアナリストとして、数々のサイバーインシデントの現場を見てきた私が、NTTグループの日本情報通信が発表した新たなセキュリティーサービスについて詳しく解説します。このサービスは、企業のサイバーセキュリティ対策に革新をもたらす可能性を秘めています。

「NI+Cインシデント緊急収束サービス」の全貌

NTTグループの日本情報通信が開始したこの新サービスは、サイバー攻撃への対応を包括的に支援する画期的なものです。VLCセキュリティーアリーナ(旧サイバージムジャパン)との協業により、平時の予防から緊急時の対応まで、企業のセキュリティ体制を総合的にバックアップします。

サービスの核となる4つの柱

1. セキュリティアラートの専門的トリアージ

サイバー攻撃検知システムが発するアラートの危険度分析と対応判断を代行します。これまで多くの企業が頭を悩ませていた「このアラートは本当に危険なのか?」という判断を、専門家が迅速に行います。

2. インシデント発生時の緊急対応支援

実際にサイバー攻撃や情報漏洩が確認された場合の初動対応から収束まで、全工程をサポートします。被害状況の把握、証拠保全、関係者対応まで包括的に支援するのは心強い限りです。

3. デジタルフォレンジック(電子鑑識)の実施

攻撃の証拠となる電子データの保全・解析を専門的に行います。これは法的対応や再発防止策の策定において極めて重要な作業です。

4. 平時の予防的セキュリティ対策

年1回のペネトレーションテスト実施や、3ヶ月ごとのセキュリティ勉強会開催など、攻撃を受ける前の予防策も充実しています。

現場で見た中小企業のインシデント対応の課題

私がこれまでに対応したインシデントの中で、特に印象深い事例をご紹介します。

ケース1:製造業A社(従業員50名)のランサムウェア被害

ある製造業の企業では、従業員がフィッシングメールに騙されてランサムウェアに感染しました。しかし、社内にセキュリティの専門知識を持つ人材がおらず、初動対応で貴重な時間を失ってしまいました。結果的に:

  • 証拠となるログデータが上書きされ、攻撃経路の特定が困難に
  • 適切な封じ込めができず、被害が拡大
  • 警察への報告タイミングが遅れ、捜査に支障
  • 復旧作業に1ヶ月以上を要し、生産ラインが停止

ケース2:小売業B社(従業員30名)の個人情報漏洩

ECサイトを運営する小売業では、Webアプリケーションの脆弱性を突かれて顧客情報が流出しました。この企業も専門的な対応体制がなかったため:

  • 漏洩範囲の特定に時間がかかり、顧客への報告が遅延
  • メディア対応が不適切で、企業イメージが大きく損なわれる
  • 証拠保全が不十分で、攻撃手法の詳細が不明のまま

これらの事例を見ると、今回のNTTグループのサービスがいかに価値のあるものかがわかります。

サービス料金と費用対効果の分析

基本プランは月額77万5000円(年払い)からとなっており、以下が含まれます:

  • 年間36回のセキュリティアラート対応
  • 年1回のインシデント発生時収束支援
  • 年1回のペネトレーションテスト
  • 年4回のセキュリティ訓練

一見高額に感じるかもしれませんが、専門のセキュリティ人材を1名雇用する年収(800万円程度)と比較すると、包括的なサービス内容を考慮すれば妥当な価格設定といえるでしょう。

個人・中小企業が今すぐできるセキュリティ対策

大企業向けのサービスが充実する一方で、個人や中小企業でも実践できる基本的なセキュリティ対策は依然として重要です。

個人向けの基本対策

まず何より大切なのは、信頼性の高いアンチウイルスソフト 0の導入です。最近のサイバー攻撃は非常に巧妙化しており、従来の無料ウイルス対策ソフトでは十分に対応できないケースが増えています。特にランサムウェアやゼロデイ攻撃に対する防御力は、有料の高品質な製品との差が顕著に現れます。

また、リモートワークやオンラインショッピングの機会が増える中、通信の暗号化も重要な課題です。信頼性の高いVPN 0を利用することで、公衆Wi-Fiなどの危険なネットワーク環境でも安全な通信が可能になります。

中小企業向けの対策

中小企業にとって特に重要なのが、Webサイトやオンラインサービスの脆弱性対策です。攻撃者は大企業だけでなく、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業も標的にします。定期的なWebサイト脆弱性診断サービス 0の実施により、潜在的な脆弱性を事前に発見・修正することができます。

未来のセキュリティ対策の方向性

今回のNTTグループの取り組みは、日本企業のセキュリティ対策が新たな段階に入ったことを示しています。従来の「予防中心」から「予防・検知・対応・復旧」を包括的に支援する「レジリエンス重視」のアプローチへの転換は、今後のトレンドになるでしょう。

特に注目すべきは、セキュリティ専門人材の不足という課題に対して、サービスとして専門的な対応を提供するという解決策です。これにより、自社でセキュリティ人材を確保できない企業でも、高度なセキュリティ対策が可能になります。

まとめ:包括的セキュリティ対策の重要性

サイバー攻撃の脅威が日々進化する中、単発的な対策ではなく、包括的で継続的なセキュリティ対策が求められています。NTTグループの新サービスは、企業規模に関わらずプロフェッショナルレベルの対応を可能にする革新的な取り組みです。

個人や中小企業においても、基本的なセキュリティ対策を怠ることなく、段階的により高度な防御体制を構築していくことが重要です。今回紹介したような包括的サービスの登場は、日本全体のサイバーセキュリティレベル向上につながることでしょう。

一次情報または関連リンク

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