早稲田大学で大規模個人情報漏えい事件発生!IELTS・TOEFLスコア3000件超が外部閲覧可能状態に – 教育機関のセキュリティ対策は万全か?

2025年10月、国内でも有数の名門大学である早稲田大学で、個人情報の大規模漏えい事件が発生しました。今回の事件は、大学側の認識不足により合計3,418件もの受験生の個人情報が外部から閲覧可能な状態になっていたという、教育機関のセキュリティ対策の甘さを浮き彫りにした深刻な事案です。

フォレンジックアナリストの視点から言えば、今回の事件は「内部の設定ミス」が原因の典型的なケースですが、その影響範囲と期間の長さから見て、決して軽視できない重大インシデントと言えるでしょう。

事件の概要:2つの情報漏えいが同時発覚

今回の早稲田大学での個人情報漏えい事件は、実は2つの異なる事案が同時に発覚したものでした。いずれも文化構想学部の英語学位プログラム「Global Studies in Japanese Cultures Program(JCulP)」の入学試験に関連するものです。

1件目:IELTSスコア情報の漏えい(2,641件)

最初の事件は、IELTS(International English Language Testing System)の成績証明書に関するものでした。大学側が受験生のIELTS成績証明書番号(TRF Number)の一覧をウェブサイトに掲載したところ、この番号を使ってIELTS認定機関が公式ポータルサイトから個人情報を照会できる状態になっていました。

漏えい期間: 2025年8月29日から9月9日
対象件数: 2,641件
漏えいした情報: 氏名、生年月日、性別、メールアドレス、顔写真、Candidate ID Document Number、試験結果の詳細

2件目:TOEFLスコア情報の漏えい(777件)

さらに深刻なのが2件目の事案です。こちらはTOEFL iBTの予約番号(Appointment Number)がウェブサイトに掲載され、TOEFLテストスコア利用・受取団体が同じくポータルサイトから個人情報を照会可能な状態でした。

漏えい期間: 2018年8月27日から2025年9月11日(約7年間!)
対象件数: 777件
漏えいした情報: 氏名、顔写真、住所、出生国、メールアドレス、生年月日、性別、第一言語、個人証明書類の種類、個人証明書類の番号下4桁、試験結果の詳細

フォレンジック調査の観点から見た問題点

現役CSIRTメンバーとして、今回の事件を技術的な観点から分析してみましょう。

根本原因:認識不足による設定ミス

今回の事件の根本原因は、大学側が「IELTS認定機関やTOEFLテストスコア利用・受取団体が、成績証明書番号や予約番号を使って個人情報を照会できる」という仕組みを理解していなかったことです。

これは典型的な「設定ミス」による情報漏えいですが、実は企業や組織で最も多いセキュリティインシデントの原因の一つなのです。

影響の深刻性

特に2件目のTOEFL関連の情報漏えいは、約7年間という長期間にわたって継続していました。この期間の長さは、定期的なセキュリティ監査やリスクアセスメントが適切に行われていなかったことを示しています。

漏えいした情報には顔写真や住所、個人証明書類の情報も含まれており、なりすましや個人の特定などの二次被害のリスクも十分に考えられます。

個人・中小企業が学ぶべき教訓

今回の早稲田大学の事件は、大学という大きな組織で起きたものですが、個人や中小企業でも同様のリスクは存在します。

よくある情報漏えいのパターン

  • クラウドストレージの設定ミス: GoogleドライブやDropboxの共有設定を誤って、機密情報が誰でも閲覧可能になる
  • ウェブサイトの設定不備: 本来は非公開にすべき顧客情報が検索エンジンにインデックスされる
  • メール誤送信: BCCにすべきところをCCにして、顧客の個人情報が他の顧客に見える状態になる
  • USBメモリの紛失: 暗号化されていないUSBメモリに顧客データを保存して紛失する

実際のフォレンジック事例から

私が過去に調査した中小企業の事例では、ECサイトの管理画面に顧客の個人情報が表示されるページが、設定ミスによって検索エンジンにインデックスされていたケースがありました。約6ヶ月間、誰でもGoogleで検索すれば顧客の氏名、住所、電話番号、購入履歴が見える状態でした。

この企業は従業員10名ほどの小さな会社でしたが、約500名の顧客情報が漏えいし、最終的に個人情報保護委員会への報告や顧客への謝罪、損害賠償などで数百万円の損失を被りました。

効果的なセキュリティ対策とは

今回のような情報漏えいを防ぐためには、どのような対策が有効でしょうか?

1. 包括的なセキュリティソフトの導入

まず基本となるのが、信頼できるアンチウイルスソフト 0の導入です。現代のセキュリティソフトは、ウイルス対策だけでなく、フィッシング詐欺の検知、怪しいサイトへのアクセス遮断、個人情報の漏えい検知など、多角的な保護機能を提供しています。

2. VPNによる通信の暗号化

特にリモートワークが増えた現在、公衆Wi-Fiや自宅のネットワークから会社のシステムにアクセスする際は、VPN 0による通信の暗号化が不可欠です。VPNを使用することで、通信内容の盗聴や改ざんのリスクを大幅に軽減できます。

3. 定期的な脆弱性診断

企業であれば、定期的なWebサイト脆弱性診断サービス 0の実施も重要です。外部からの攻撃だけでなく、今回のような設定ミスによる情報漏えいのリスクも発見できます。

4. 従業員教育の徹底

技術的な対策と同じくらい重要なのが、従業員に対するセキュリティ教育です。今回の早稲田大学の事件も、担当者が外部システムとの連携の仕組みを正しく理解していれば防げた可能性があります。

今すぐできる対策チェックリスト

個人や中小企業の方が今すぐできる対策をまとめました:

個人向け対策

  • 信頼できるアンチウイルスソフト 0を最新バージョンで利用する
  • 公衆Wi-Fi利用時はVPN 0を必ず使用する
  • クラウドサービスの共有設定を定期的に確認する
  • パスワードは複雑で一意なものを使用し、パスワード管理ツールを活用する
  • 二要素認証を可能な限り設定する

中小企業向け対策

  • 全社員のPC・スマートフォンにアンチウイルスソフト 0を導入する
  • リモートアクセス時のVPN 0利用を義務化する
  • 年1回以上のWebサイト脆弱性診断サービス 0を実施する
  • 個人情報を扱うシステムのアクセス権限を定期的に見直す
  • セキュリティインシデント対応計画を策定する

まとめ:予防が最大の防御

今回の早稲田大学の事件は、どんなに大きな組織でも「うっかりミス」で重大な情報漏えい事件が発生してしまうことを改めて示しました。特に約7年間も継続していたTOEFL関連の情報漏えいは、定期的な点検の重要性を物語っています。

フォレンジック調査の現場でいつも感じるのは、「事後対応は非常にコストがかかる」ということです。情報漏えいが発生してからの調査、報告、謝罪、再発防止策の策定には、多大な時間とコストがかかります。

だからこそ、事前の予防策に投資することが最も効果的なのです。個人であれば月数百円から、中小企業であれば月数千円から始められるセキュリティ対策で、数十万円、数百万円の損失を防ぐことができるのです。

今回の事件を「他人事」として終わらせるのではなく、自分自身や自社のセキュリティ体制を見直すきっかけにしていただければと思います。

一次情報または関連リンク

早稲田大学文化構想学部英語学位プログラムの入学試験での個人情報漏えいについて – ScanNetSecurity

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