個人情報保護委員会が発表した2024年度の情報漏えい件数が、なんと2万1007件と過去最多を記録しました。これは前年度と比べても大幅な増加で、私たちの身の回りでサイバー攻撃がいかに深刻化しているかを物語っています。
情報漏えいの主な原因とは?
今回の調査結果を見ると、民間事業者では以下のような攻撃手法が目立っています:
- サーバーへの不正アクセス
- 書類の誤交付
- フィッシング詐欺
一方、行政機関では書類の紛失や誤送付が主な要因となっていますが、これらの数字は氷山の一角に過ぎません。実際には報告されていない被害も数多く存在するのが現実です。
現役CSIRTが見た実際の被害事例
私がフォレンジック調査で関わった事例の中でも、特に印象的だったのは地方の中小企業での事件です。従業員50名程度の製造業の会社で、ある日突然PCが暗号化され、身代金を要求されました。調査の結果、フィッシングメールから始まったランサムウェア攻撃だったことが判明しました。
この企業では、幸い事前にバックアップを取っていたため大きな損失は免れましたが、復旧作業に1週間、調査費用だけで100万円以上かかりました。しかし最も深刻だったのは、顧客情報の一部が外部に流出していた可能性が高いということでした。
個人でもできる効果的な対策
企業だけでなく、個人のデバイスも標的になることが増えています。実際に、個人のPCが感染し、そこから勤務先のネットワークに侵入されたケースも複数確認しています。
1. 信頼できるアンチウイルスソフトの導入
最新の脅威に対応するには、やはり専門的なアンチウイルスソフト
が不可欠です。無料のソフトでは検出できない高度な攻撃も多く、特にゼロデイ攻撃やファイルレス攻撃には専門的な対策が必要となります。
私が調査した事例でも、有料のアンチウイルスソフト
を使用していた企業の方が、被害の拡大を早期に食い止められているケースが多く見られます。
2. VPNによる通信の暗号化
特にテレワークが増えた現在、公衆Wi-Fiを使用する機会も多いでしょう。しかし、これらのネットワークは盗聴のリスクが高く、実際に空港やカフェのWi-Fiから情報を窃取された事例も確認しています。
信頼できるVPN
を使用することで、通信内容を暗号化し、第三者による盗聴を防ぐことができます。VPN
は個人情報保護の観点からも非常に重要なツールと言えるでしょう。
フォレンジック調査で見えてくる攻撃の実態
デジタルフォレンジック調査を行っていると、攻撃者の手口がいかに巧妙化しているかがよく分かります。最近では、正規のソフトウェアに偽装したマルウェアや、システムの正常な機能を悪用するLiving off the Land攻撃なども増加しています。
ある個人事業主の方の事例では、メールに添付された請求書を開いただけで、PCが完全に制御されてしまいました。調査の結果、マクロを悪用したマルウェアが仕込まれており、銀行口座の情報まで窃取されていたことが判明しました。
今すぐできる対策のまとめ
情報漏えい件数が過去最多となった今、個人レベルでの対策がこれまで以上に重要になっています。以下の基本的な対策を確実に実施することをお勧めします:
- 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入と定期更新
- VPN
による通信の暗号化
- 定期的なソフトウェアアップデート
- 怪しいメールやリンクを開かない
- 重要なデータの定期的なバックアップ
サイバー攻撃は「もしかしたら自分も」ではなく「いつか必ず自分も」という意識で対策を講じることが重要です。事前の備えが、将来の大きな被害を防ぐ最良の投資と言えるでしょう。