EV充電器が狙われる時代到来!知らないと危険なサイバーセキュリティ脅威と対策法

電気自動車(EV)の普及とともに、私たちの生活に身近な存在となったEV充電器。しかし、この便利なインフラに潜む新たなサイバーセキュリティリスクについて、どれだけの人が認識しているでしょうか。

現役のCSIRTアナリストとして、多くのサイバー攻撃事例を分析してきた経験から言えるのは、今後最も危険度が高いのは車両そのものではなく、むしろ私たちが毎日利用するEV充電器だということです。

なぜEV充電器が攻撃者の標的になるのか

EV充電器は、単なる電力供給装置ではありません。実際には以下のような機能を持つ高度なIoTデバイスなのです:

  • カードリーダーによるクレジットカード決済機能
  • RFID による認証システム
  • Wi-Fi・Bluetooth 通信機能
  • スマートフォンアプリとの連携機能
  • クラウドサービスとの通信機能

これらの機能は、サイバー犯罪者から見れば格好の「アタックサーフェス」(攻撃対象面)なのです。特に個人情報や決済情報を扱う機能があることで、金銭的メリットを狙った攻撃の標的となりやすい状況にあります。

実際に発見された脆弱性事例

2024年2月に日本で開催された「Pwn2Own Automotive」というハッキングコンテストでは、実際に複数のEV充電器で深刻な脆弱性が発見されました。特に以下の機種では重大な問題が明らかになっています:

JuiceBox 40(家庭用AC充電器)

Bluetooth通信における認証の脆弱性により、攻撃者が不正アクセスを行い、充電設定の変更や課金システムの操作が可能でした。

AUTEL MaxiCharger(事業者向け充電器)

RFIDリーダーとSIMスロットを備えたこの機種では、通信プロトコルの実装不備により、遠隔からの不正操作が可能な状態でした。

ChargePoint Home Flex(家庭用充電器)

Wi-Fi通信における暗号化の不備により、ネットワーク上の攻撃者による盗聴や操作が可能でした。

想定される攻撃シナリオと被害例

フォレンジック調査の現場で見てきた経験から、EV充電器への攻撃では以下のような被害が考えられます:

個人ユーザーへの被害

  • クレジットカード情報の窃取:カードリーダーの脆弱性を悪用し、決済情報が盗まれる
  • 個人情報の漏洩:アプリ連携機能から氏名、住所、利用履歴などが流出
  • 不正課金:充電していないにも関わらず高額な料金が請求される
  • 充電妨害:遠隔操作により充電が停止され、移動計画に支障をきたす

企業・事業者への被害

  • 顧客情報の大量漏洩:充電ステーション運営者のデータベースが攻撃される
  • サービス停止攻撃:複数の充電器が同時に機能停止し、事業継続に支障
  • 金銭的損失:不正操作による売上の横領や、復旧費用の発生

今すぐ実践すべきセキュリティ対策

個人ユーザーができる対策

家庭用EV充電器を利用する際は、以下の点に注意してください:

  1. 信頼できるメーカーの製品を選ぶ:セキュリティアップデートが定期的に提供される製品を選択
  2. 定期的なファームウェア更新:メーカーからの更新通知を見逃さず、速やかにアップデート
  3. Wi-Fi・Bluetoothの適切な設定:不要な場合は通信機能を無効化
  4. 強固なパスワード設定:デフォルトパスワードは必ず変更
  5. アプリの権限管理:充電器連携アプリには最小限の権限のみ付与

また、アンチウイルスソフト 0を導入することで、スマートフォンアプリ経由での攻撃や、ネットワークを介した不正アクセスから身を守ることができます。

企業・事業者向けの対策

充電ステーション事業者や、社有車でEVを導入している企業は、以下の対策が重要です:

  1. ネットワーク分離:充電器用の専用ネットワークを構築し、基幹システムと分離
  2. アクセス制御:VPN接続による安全な管理体制の構築
  3. 監視体制の強化:24時間体制での異常監視システムの導入
  4. 定期的なセキュリティ診断:専門業者による脆弱性検査の実施

特に企業のネットワークセキュリティを強化する場合は、VPN 0の導入が効果的です。また、Webベースの管理画面を持つ充電器システムについては、Webサイト脆弱性診断サービス 0により定期的な脆弱性チェックを行うことをお勧めします。

今後の展望と注意すべきポイント

自動車業界が100年に一度の変革期を迎える中、EV充電インフラのセキュリティリスクは今後さらに高まることが予想されます。特に以下の点に注意が必要です:

攻撃の高度化

現在は主に研究者やマニアレベルでの攻撃手法の検証にとどまっていますが、金銭的メリットが明確になることで、組織的な犯罪グループの参入が予想されます。

IoTマルウェアの脅威

充電器がボットネットに組み込まれ、DDoS攻撃の踏み台として悪用される可能性があります。

プライバシー侵害

位置情報や行動パターンの詳細な分析により、個人の生活が丸裸にされるリスクがあります。

まとめ:先手必勝のセキュリティ対策を

EV充電器へのサイバー攻撃は、まさに今起ころうとしている現実的な脅威です。映画のような派手な車両乗っ取りよりも、むしろ地味で身近な充電器への攻撃の方が、実際の被害につながりやすいのが現実です。

個人ユーザーも企業も、この新たな脅威に対して先手を打つことが重要です。適切なセキュリティ製品の導入と、継続的な対策の見直しにより、安心してEVライフを楽しむことができるでしょう。

一次情報または関連リンク

元記事:ScanNetSecurity – EV充電器のサイバーセキュリティ脅威について

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