アスクルを標的にしたRansomhouseの手口とは?企業が今すぐ講じるべきサイバー攻撃対策

2025年10月30日、オフィス用品通販大手のアスクルが、ランサムウェアグループ「Ransomhouse」によるサイバー攻撃を受けたことが明らかになりました。同グループは約1.1テラバイトという膨大なデータを窃取したと主張しており、日本企業を標的とした攻撃として注目を集めています。

現役フォレンジックアナリストの立場から、この事件の詳細と企業が今すぐ実践すべき対策について詳しく解説していきます。

Ransomhouseとは?「暗号化しない」新種のランサムウェアグループ

Ransomhouseは2022年3月に出現した比較的新しいランサムウェアグループです。しかし、従来のランサムウェア攻撃とは異なる特徴を持っています。

Ransomhouseの特異な手口

一般的なランサムウェア攻撃では、企業のデータを暗号化して身代金を要求しますが、Ransomhouseは「暗号化を行わず、恐喝のみ」を目的としています。これは「多面的恐喝脅威」と呼ばれる新しい攻撃手法で、以下のような流れで行われます:

  • 企業のシステムに侵入
  • 機密データを大量に窃取
  • データを暗号化せずにそのまま保持
  • 「データを公開する」と脅迫し、金銭を要求

このやり方は、被害企業にとってはある意味でより厄介かもしれません。データが暗号化されていないため、一見すると通常業務は継続できますが、機密情報が外部に流出するリスクが常に存在するからです。

アスクル攻撃の詳細分析

今回のアスクル攻撃について、現在判明している情報を整理してみましょう。

窃取されたデータの内容

セキュリティ専門機関の調査によると、今回窃取されたデータには以下が含まれているとされています:

  • 物流に関する担当者の情報
  • 企業のサポートに関する情報

これらの情報が悪用されれば、取引先企業や顧客への二次被害も懸念されます。特に物流業界では、配送先情報や在庫情報などが漏洩すると、競合他社に利用されたり、更なるサイバー攻撃の足がかりにされる可能性があります。

Ransomhouseの侵入経路と手口

フォレンジック調査の観点から、Ransomhouseがどのような方法で企業システムに侵入するかを分析してみましょう。

主な侵入手法

1. フィッシングメール・標的型攻撃メール

最も一般的な侵入経路です。従業員を騙して悪意あるリンクをクリックさせたり、添付ファイルを開かせることで、マルウェアを仕込みます。

2. サードパーティシステムの脆弱性悪用

企業が利用している外部サービスやソフトウェアの未修正の脆弱性を悪用して侵入します。特にVPNやリモートデスクトップサービスの脆弱性が狙われがちです。

3. 認証情報の不正取得

ダークウェブで販売されている認証情報や、過去のデータ漏洩で流出したパスワードを使った総当たり攻撃も行われます。

実際の被害事例から学ぶ教訓

私がフォレンジック調査を担当した中小企業の事例では、従業員が受信した「請求書確認のお願い」という件名のメールに添付されたExcelファイルを開いたことが発端でした。そのファイルにはマクロが仕込まれており、開くと同時にバックドアが設置され、数週間かけて機密データが外部に送信されていました。

この企業では被害発覚まで3か月以上かかり、最終的に約500GBのデータが流出。復旧とセキュリティ強化にかかった費用は総額で約2000万円に上りました。

企業が今すぐ実践すべき対策

Ransomhouseのような攻撃から身を守るために、企業が今すぐ実践すべき対策を、優先度順に紹介します。

1. 従業員のセキュリティ教育(最優先)

攻撃の多くは人的要因から始まります。定期的な教育とフィッシング訓練を実施しましょう。

2. アンチウイルスソフト の導入・更新

企業レベルのアンチウイルスソフト 0を導入し、常に最新状態を保つことが重要です。特にメールセキュリティ機能が強化されたものを選びましょう。

3. VPN による通信の保護

リモートワークが増加する中、VPN 0は必須のセキュリティツールです。通信の暗号化により、中間者攻撃や盗聴を防げます。

4. 定期的な脆弱性診断

自社のWebサイトやシステムに脆弱性がないかを定期的にチェックすることが重要です。Webサイト脆弱性診断サービス 0を利用することで、専門家による詳細な診断を受けられます。

5. バックアップ戦略の見直し

「3-2-1ルール」に従ったバックアップ体制を構築しましょう:

  • 3つのコピーを作成
  • 2つの異なる媒体に保存
  • 1つはオフサイト(物理的に離れた場所)に保管

被害を最小限に抑えるための初動対応

万が一攻撃を受けた場合の初動対応も重要です。

攻撃発覚時の対応手順

  1. ネットワークの隔離:感染が疑われる端末を即座にネットワークから切断
  2. 証拠保全:ログファイルやメモリダンプの取得
  3. 関係者への連絡:社内のインシデント対応チーム、必要に応じて警察・専門機関へ通報
  4. 影響範囲の調査:どのデータが影響を受けたかの特定
  5. 復旧計画の策定:バックアップからの復元とシステムの正常化

日本企業を狙う攻撃の増加傾向

Ransomhouseは今回のアスクル攻撃以外にも、2024年に元旦ビューティ工業、2025年10月にも別の日本企業への攻撃を行っており、日本企業を継続的に標的にしていることが分かります。

この背景には、以下の要因が考えられます:

  • 日本企業のサイバーセキュリティ対策の遅れ
  • 高い身代金支払い能力
  • サプライチェーン攻撃の効果的なターゲットとして価値が高い

まとめ:プロアクティブなセキュリティ対策の重要性

今回のアスクル攻撃は、日本企業がサイバー犯罪グループにとって魅力的なターゲットであることを改めて示しました。Ransomhouseのような「恐喝のみ」を目的とするグループの出現は、従来の対策だけでは不十分であることを意味します。

重要なのは、攻撃を受けた後の対応ではなく、攻撃を防ぐための予防的措置です。アンチウイルスソフト 0VPN 0の導入、定期的なWebサイト脆弱性診断サービス 0の実施など、多層防御の考え方に基づいた包括的なセキュリティ対策を構築することが、企業の存続に関わる重要な投資といえるでしょう。

サイバー攻撃は「もしも」ではなく「いつ」起こるかの問題です。今すぐ対策を始めることが、あなたの会社と顧客を守る第一歩となります。

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