身近な生活に影響を及ぼすサイバー攻撃の現実
最近、SNSで「社食の紙ナプキンが不足している」という投稿を見かけませんでしたか?実はこれ、アスクルがランサムウェア攻撃を受けた影響で物流が停止したことが原因なんです。
サイバー攻撃と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じるかもしれませんが、今や私たちの日常生活に直接影響を与える深刻な問題となっています。
2025年前半に発生した大規模ランサムウェア攻撃
アサヒグループホールディングスへの攻撃
9月末、アサヒグループホールディングスがロシア系ランサムウェア集団「Qilin」(キリン)による攻撃を受けました。この攻撃により:
- 国内全システムが暗号化される
- 生産・出荷・受注業務が全面停止
- 個人情報や内部文書の暗号化と窃取が発生
- 公開脅迫による二次被害の脅威
アスクルへの攻撃とその波及効果
10月にはアスクルがランサムウェア攻撃を受け、さらに深刻な影響が広がりました:
- 社内システムが感染し、物流子会社のシステム障害が発生
- 受注・出荷業務が全面停止
- 取引先企業への波及:無印良品、ロフト、そごう・西武など
- 間接的な被害が拡大し、社食の備品不足まで影響
なぜサイバー攻撃は食中毒より恐ろしいのか
危機管理の専門家は、サイバー攻撃を食中毒よりも恐ろしいと考えています。その理由は:
1. 見えない被害の恐怖
食中毒なら原因、回収、再発防止策という流れが見えますが、ランサムウェアでは:
- 誰が攻撃者なのか特定が困難
- いつから侵入されていたか不明
- どのデータが盗まれたか把握が困難
- どこに情報が拡散されるか予測不可能
2. 終わりが見えない不安
一般的な危機には「終わり」がありますが、ランサムウェアでは:
- 攻撃が本当に止んだかわからない
- 再感染のリスクが常に存在
- 企業も顧客も確信が持てない状況が続く
フォレンジック調査から見える攻撃の実態
現役CSIRTメンバーとしての経験から言えば、このようなランサムウェア攻撃では以下のような被害パターンが多く見られます:
個人・中小企業での被害事例
- 製造業A社:生産管理システムが暗号化され、2週間の操業停止で売上1億円の損失
- 医療機関B院:電子カルテシステムが停止し、手書きでの診療を余儀なくされ患者に大きな迷惑
- 小売チェーンC社:POSシステム停止により全店舗で手計算での対応、信頼失墜
これらの事例から分かるのは、規模に関係なく、どんな組織でもサイバー攻撃の標的になり得るということです。
効果的なサイバーセキュリティ対策
予防対策
1. 基本的なセキュリティ対策の徹底
- 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入:リアルタイム監視とふるまい検知機能が重要 - 定期的なソフトウェアアップデート
- 従業員へのセキュリティ教育
- 多要素認証の導入
2. ネットワークセキュリティの強化
- VPN
の活用:リモートワーク時の通信暗号化 - ファイアウォールの適切な設定
- ネットワークセグメンテーション
3. Webサイトの脆弱性対策
- Webサイト脆弱性診断サービス
の定期実施:攻撃の入り口となりやすいWebサイトの脆弱性を発見・修正 - SSL/TLS証明書の適切な管理
- セキュアなコーディング
事後対応策
研究によると、迅速な開示により信頼回復率が20~30%向上することが示されています。効果的な危機管理には:
- 共感:被害者の立場に立った対応
- 正確:事実に基づいた情報提供
- 継続更新:定期的な状況報告
企業規模別の対策アプローチ
個人・小規模事業者
- コストパフォーマンスの高いアンチウイルスソフト
の導入 - クラウドベースのバックアップサービス活用
- 基本的なセキュリティ教育の実施
中小企業
- 統合的なセキュリティソリューションの導入
- Webサイト脆弱性診断サービス
による定期的な脆弱性チェック - インシデント対応計画の策定
大企業
- 専門的なCSIRT体制の構築
- 高度な脅威検知システムの導入
- サプライチェーン全体でのセキュリティ管理
今すぐできる対策チェックリスト
基本対策(すべての組織)
- 信頼できるアンチウイルスソフト
が最新版に更新されているか確認 - OSや各種ソフトウェアのアップデート状況をチェック
- 重要データのバックアップが定期的に取られているか確認
- 従業員のパスワード管理状況を見直し
- 不審なメールや添付ファイルへの対応方針を再確認
高度な対策(企業向け)
- Webサイト脆弱性診断サービス
の実施検討 - 従業員向けフィッシング訓練の実施
- インシデント対応マニュアルの整備
- サイバー保険の加入検討
- 外部セキュリティ専門家との連携体制構築
まとめ:継続的なセキュリティ対策の重要性
アサヒグループやアスクルの事例が示すように、サイバー攻撃は「起こるかもしれない」リスクではなく、「いつ起こってもおかしくない」現実的な脅威です。
特に重要なのは、攻撃を受けた後の対応です。適切な危機管理により、企業の信頼回復率を大幅に向上させることが可能です。
今すぐできる対策から始めて、段階的にセキュリティレベルを向上させていくことが、あなたの大切な情報や事業を守る最良の方法です。

