警視庁で発覚した衝撃的な内部脅威事件
2025年11月12日、警視庁で信じられない事件が発覚しました。暴力団対策課の警部補が、捜査対象である犯罪組織「ナチュラル」に対し、極秘の監視カメラの位置情報を漏洩していたのです。
この事件で特に注目すべきは、情報の漏洩方法です。犯罪組織が独自に開発した特殊なスマートフォンアプリを警察官自身がダウンロードし、そのアプリを通じて機密情報を流出させていました。
フォレンジックアナリストとして数多くの情報漏洩事件を調査してきた経験から言えば、これは典型的な「内部脅威(インサイダー脅威)」の事例であり、どんな組織でも起こり得る深刻な問題です。
内部脅威が企業に与える深刻な被害
実際に私が調査した中小企業の事例をご紹介します。ある製造業の会社では、退職予定の営業担当者が競合他社への転職前に、顧客データベースを外部のクラウドストレージに大量コピーしていました。
被害の実態:
- 顧客情報約5万件の流出
- 新製品の設計図面データの持ち出し
- 競合への情報漏洩による売上20%減少
- 顧客からの信頼失墜と契約解除
この事件では、従業員が使用していた個人のUSBメモリや、会社が許可していない外部アプリを通じた情報持ち出しが問題となりました。まさに今回の警視庁の事件と同じような手口です。
なぜ内部脅威は発見が困難なのか
内部脅威が特に危険な理由は、正当なアクセス権限を持つ人物による犯行だからです。
内部脅威の特徴:
- 正規のログイン情報でシステムにアクセス
- 通常業務と区別がつきにくい行動
- セキュリティシステムをすり抜けやすい
- 発覚まで長期間かかることが多い
個人ができる内部脅威対策
1. 信頼できるアンチウイルスソフト の導入
個人のデバイスには必ずアンチウイルスソフト
をインストールしましょう。今回の事件のように、不審なアプリのダウンロードを防ぐことができます。
2. VPN で通信を暗号化
外部とのデータ送受信にはVPN
を使用することで、万が一の情報漏洩時も暗号化された状態を保てます。
3. 定期的なセキュリティチェック
- 不審なアプリがインストールされていないか確認
- パスワードの定期的な変更
- 二要素認証の設定
- ログイン履歴の定期確認
中小企業が実装すべき内部脅威対策
1. アクセス権限の適切な管理
実装すべき対策:
- 最小権限の原則に基づくアクセス制御
- 定期的な権限見直し(3ヶ月に1回)
- 退職者のアクセス権即座削除
- 特権アカウントの厳格な管理
2. ログ監視システムの構築
私が調査した別の事例では、従業員の異常なデータアクセスパターンを早期発見できていれば、被害を最小限に抑えられたケースがありました。
監視すべきログ:
- 大量データのダウンロード
- 通常時間外のシステムアクセス
- 外部デバイスの接続
- 機密ファイルへの異常なアクセス
3. Webサイト脆弱性診断サービス の実施
Webサイトを運営している企業は、Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施することで、外部攻撃だけでなく内部からの不正アクセスの痕跡も発見できます。
内部脅威を防ぐための組織づくり
セキュリティ意識の向上
効果的な教育内容:
- 実際の漏洩事例を用いた研修
- フィッシング訓練の実施
- セキュリティポリシーの周知徹底
- 報告・相談しやすい環境作り
心理的要因への対策
今回の警視庁の事件でも、警部補と犯罪組織との間に「相当程度深いつながり」があったとされています。内部脅威の多くは、金銭的な動機や不満、外部からの脅迫などが背景にあります。
予防策:
- 従業員満足度の向上
- 適切な評価制度の構築
- 相談窓口の設置
- 定期的な面談の実施
フォレンジック調査で見えてくる内部脅威の実態
私がこれまで調査した内部脅威事件の統計を見ると、以下のような傾向があります:
発覚までの平均期間:8.5ヶ月
最も多い漏洩方法:
- メール送信(35%)
- USBメモリ(28%)
- 外部クラウドサービス(22%)
- 専用アプリ(15%)
今回の事件のような専用アプリを使った漏洩は比較的新しい手口ですが、確実に増加傾向にあります。
まとめ:総合的なセキュリティ対策の重要性
今回の警視庁の事件は、どんな組織でも内部脅威のリスクがあることを如実に示しています。特に、犯罪組織が独自開発したアプリを使った情報漏洩は、従来のセキュリティ対策では発見が困難です。
今すぐ実行すべき対策:
- 信頼できるアンチウイルスソフト
の導入 - VPN
による通信暗号化 - アクセス権限の見直し
- ログ監視体制の強化
- 従業員教育の充実
企業のWeb資産を守るためには、Webサイト脆弱性診断サービス
も欠かせません。外部攻撃と内部脅威の両方に対応できる包括的なセキュリティ体制を構築することが、今後ますます重要になってくるでしょう。
セキュリティは一度構築すれば終わりではありません。定期的な見直しと改善を継続することで、組織の信頼性と事業継続性を守ることができるのです。

