韓国の人気タレント・ハン・ヘジンさんのYouTubeチャンネル(登録者86万人)が2025年11月10日にハッキング被害を受け、わずか3日で復旧するという事件が発生しました。この事件は、個人クリエイターや企業のSNSアカウント管理者にとって重要な教訓を含んでいます。
ハン・ヘジン事件の詳細と手口の分析
今回の事件では、ハッカーがハン・ヘジンさんのYouTubeアカウントに不正アクセスし、「エックスアールピー(XRP):ブラッド・ガーリングハウスCEOの成長予測」というタイトルで偽のライブ配信を実施しました。これは典型的な暗号通貨詐欺ライブ配信の手口です。
フォレンジック調査の経験から言えば、このような事件では以下のような攻撃手法が使われることが多いです:
- フィッシングメールによるパスワード窃取
- パスワードリスト攻撃(過去の漏洩データベース悪用)
- 二段階認証の突破
- セッションハイジャック
なぜYouTubeチャンネルが標的になるのか
YouTubeチャンネルの乗っ取りが頻発している理由は明確です。大規模な登録者ベースを持つチャンネルは、詐欺師にとって「即座に多くの人にリーチできる宣伝媒体」として価値が高いからです。
私が関わった過去の事例では、登録者数1万人程度の個人チャンネルでも標的になったケースがありました。その時は投資詐欺の動画が勝手に投稿され、チャンネル主が気づくまでに数千人が視聴してしまいました。
個人クリエイターが実践すべき5つの対策
1. 強力なパスワードと定期的な変更
単純なパスワードは絶対にNGです。最低でも12文字以上で、大文字・小文字・数字・記号を組み合わせたものを使用しましょう。パスワード管理ツールの活用も効果的です。
2. 二段階認証の必須設定
GoogleアカウントとYouTubeアカウントの両方で二段階認証を有効にしてください。SMS認証よりもAuthenticatorアプリの方がセキュリティが高いです。
3. 不審なメールへの警戒
YouTubeやGoogleを装ったフィッシングメールが巧妙化しています。公式からのメールでも、必ずURLを確認し、直接公式サイトにアクセスして確認することを習慣にしましょう。
4. デバイスのセキュリティ強化
PCやスマートフォンには必ずアンチウイルスソフト
をインストールし、常に最新の状態を保ってください。マルウェア感染からのアカウント情報窃取を防ぐ最も基本的な対策です。
5. 定期的なアクセス履歴の確認
Googleアカウントのセキュリティ設定から、不審なログイン履歴がないかを定期的にチェックしましょう。見覚えのない場所からのアクセスがあった場合は、すぐにパスワード変更を実施してください。
もしアカウントが乗っ取られてしまったら
ハン・ヘジンさんのケースでは迅速な対応により3日で復旧できましたが、一般的には以下の手順で対処します:
- 即座にYouTubeサポートに報告 – 公式の報告フォームから被害を届け出る
- 関連アカウントのパスワード変更 – GoogleアカウントとYouTubeアカウントのパスワードを変更
- フォロワーへの注意喚起 – SNSで不正アクセスの事実を告知
- 被害の記録保存 – スクリーンショットなど証拠を保存
企業アカウントの場合はさらに深刻
個人アカウントの被害でも深刻ですが、企業アカウントが乗っ取られた場合、ブランドイメージの毀損や顧客への被害拡大のリスクがさらに高まります。
実際に私が調査した企業の事例では、公式YouTubeアカウントが乗っ取られ、偽の投資セミナー動画が投稿されました。顧客から「御社が推奨する投資話は信頼できるのか」という問い合わせが殺到し、対応に追われる事態となりました。
企業の場合は、Webサイト脆弱性診断サービス
を定期的に実施し、Webサイトとあわせて包括的なセキュリティ対策を講じることが重要です。
ネットワーク接続時の安全対策も重要
外出先でのコンテンツ制作や投稿作業時は、公衆Wi-Fiの利用に注意が必要です。フリーWi-Fiは盗聴リスクが高いため、VPN
を使用してトラフィックを暗号化することをお勧めします。
特にカフェやホテルでのYouTube投稿作業時は、VPN経由でアクセスすることで、アカウント情報の漏洩リスクを大幅に減らすことができます。
まとめ:予防こそが最大の対策
ハン・ヘジンさんの事例は幸い迅速な復旧が実現しましたが、すべてのケースで同様の結果が得られるとは限りません。YouTubeの審査プロセスは複雑で、復旧まで数週間から数ヶ月かかることも珍しくありません。
86万人という大規模な登録者数だったからこそ、YouTube側も優先的に対応したという側面も考慮すべきです。個人クリエイターの皆さんは、「乗っ取られてから対処する」のではなく、「乗っ取られない環境を作る」ことに注力してください。
特に、アカウントの価値が高まるにつれて標的になるリスクも増加します。登録者数が増えてきたら、セキュリティ対策もそれに比例して強化していくことが重要です。

