政府が発表した2024年度の個人情報保護委員会年次報告によると、個人情報の漏えい事案が前年度比約57%増の1万9056件となり、過去最多を記録しました。さらに、マイナンバー関連の漏えい事案も334件から2052件へと大幅に増加しており、私たちの身の回りでサイバー攻撃による情報漏えいリスクが急激に高まっていることが浮き彫りになっています。
エムケイシステム事案が示すサイバー攻撃の深刻さ
今回の報告で特に注目すべきは、人事・労務業務支援システムを運営するエムケイシステムのサーバーが不正アクセスを受けた事案です。この一件だけで漏えい件数を大幅に押し上げたとされており、一つの攻撃が如何に甚大な被害をもたらすかを物語っています。
実際に私がフォレンジック調査を行った類似の事例では、ある中小企業が人事システムへの不正アクセスを受け、従業員の個人情報約500件が漏えいしました。攻撃者は脆弱性を突いてシステムに侵入し、約3ヶ月間にわたって情報を窃取していたのです。被害企業は対応費用だけで数千万円を要し、信用失墜により事業継続にも大きな影響を受けました。
個人ユーザーが直面するリアルな脅威
企業だけでなく、個人ユーザーも同様のリスクに晒されています。最近調査した個人のケースでは、自宅のパソコンがマルウェアに感染し、オンラインバンキングの認証情報が盗まれて不正送金被害に遭いました。被害者は「ちょっと怪しいメールを開いただけ」と話されていましたが、その「ちょっと」が重大な結果を招いたのです。
富士通Japan事案から学ぶヒューマンエラーの怖さ
報告書では、高松市のコンビニで他人の住民票が誤って交付された事案も取り上げられています。システムを運用する富士通Japanが指導を受けたこの事例は、技術的な脆弱性だけでなく、運用面でのミスも重大な情報漏えいに繋がることを示しています。
私が担当したある調査では、社員が業務用パソコンに個人のUSBメモリを接続したことで、ランサムウェアに感染し、顧客データベース全体が暗号化される被害が発生しました。復旧に1ヶ月以上を要し、その間の機会損失は計り知れないものでした。
今すぐできる効果的な対策
これらの事例から分かるのは、サイバー攻撃は「いつか起こるかもしれない」ものではなく、「いつ起こってもおかしくない」現実的な脅威だということです。特に個人ユーザーの場合、以下の対策が重要になります:
1. 信頼性の高いアンチウイルスソフト の導入
マルウェアやランサムウェアの感染を防ぐため、リアルタイム保護機能を持つアンチウイルスソフト
は必須です。無料版では検出精度や保護機能に限界があるため、大切な個人情報を守るには有料版の導入を強く推奨します。
2. VPN による通信の暗号化
公衆Wi-Fiの利用時や重要な情報をやり取りする際は、VPN
を使用して通信を暗号化することが重要です。攻撃者による通信傍受を防ぎ、個人情報の漏えいリスクを大幅に軽減できます。
CSIRTの現場から見た防御の重要性
現役CSIRTとして多くのインシデント対応に携わる中で痛感するのは、「予防に勝る治療なし」ということです。一度情報が漏えいしてしまうと、その影響は長期間にわたって続きます。金銭的な被害だけでなく、精神的なストレスや社会的な信用失墜など、回復困難な損害を被るケースも少なくありません。
ある個人の方は、パソコンのセキュリティ対策を怠ったために個人情報が流出し、その後数年間にわたって迷惑メールや詐欺電話に悩まされ続けました。「もっと早くきちんとした対策をしておけば良かった」という後悔の言葉が今でも印象に残っています。
まとめ:今こそ本格的なセキュリティ対策を
2024年度の個人情報漏えい事案の急増は、私たち一人ひとりがサイバーセキュリティに真剣に取り組む必要があることを示しています。企業任せではなく、個人レベルでも適切な対策を講じることが、自分自身と家族の大切な情報を守る鍵となります。
特にアンチウイルスソフト
とVPN
の組み合わせは、個人ユーザーが手軽に導入できる一方で、高い防御効果を期待できる現実的な解決策です。月々わずかなコストで、計り知れない損失から身を守ることができるのです。
情報漏えいの被害者にならないために、今すぐ行動を起こしましょう。明日では遅いかもしれません。