医療機関を狙ったランサムウェア攻撃で患者死亡 – 個人でもできるサイバー攻撃対策とは?

病院のシステム停止が命に関わる時代に

2024年、英国で衝撃的な事件が発生しました。ロシアのサイバー犯罪グループ「Qilin」による病理検査会社Synnovisへのランサムウェア攻撃で、血液検査結果の遅延が原因で患者1名が死亡したのです。これは、サイバー攻撃が直接的に人命に関わった初の確認事例として、世界中の医療関係者に大きな衝撃を与えました。

現役のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)として数多くのサイバー攻撃事例を見てきましたが、医療分野での被害はここ数年で急激に深刻化しています。特に気になるのは、攻撃者が「人命に関わるシステム」を意図的に狙ってきている点です。

医療機関が狙われる理由とは

なぜ医療機関がサイバー犯罪者の標的になりやすいのでしょうか。フォレンジック調査を通じて見えてきた理由は以下の通りです:

1. 機密データの価値が高い
医療情報は個人情報の中でも特に価値が高く、闇市場では一般的な個人情報の10倍以上の価格で取引されています。

2. システムの復旧が急務
命に関わるシステムのため、被害組織は身代金を支払ってでも早急な復旧を望む傾向があります。

3. セキュリティ対策の遅れ
医療機器の特性上、セキュリティパッチの適用やシステム更新が後回しになりがちです。

個人でもできる医療データ保護対策

「医療機関の問題だから個人には関係ない」と思われるかもしれませんが、実は私たち一人ひとりができる対策があります。

オンライン診療や健康アプリの利用時の注意点

最近、オンライン診療や健康管理アプリを利用する方が増えています。しかし、これらのサービス利用時にも注意が必要です。

実際に調査した事例では、健康管理アプリの脆弱性を突かれ、利用者の医療情報が大量に流出したケースがありました。この時、被害を最小限に抑えられたのは、アンチウイルスソフト 0を使用していたユーザーでした。リアルタイムでの脅威検知により、不審な通信をブロックできたためです。

医療機関での個人情報保護

病院での診察時や検査時にも、意外な情報漏洩リスクが潜んでいます。例えば:

・公共Wi-Fiを使った医療アプリへのアクセス
・病院内での機密性の高い会話
・検査結果の電子メール送信

特に公共Wi-Fiでの医療情報アクセスは危険です。過去の調査では、病院の無料Wi-Fiから患者の診療情報が盗み見られた事例も確認しています。このような場面ではVPN 0の利用が効果的です。通信を暗号化することで、第三者による盗聴を防げます。

家族の医療情報を守るために

高齢の家族がいる場合、特に注意が必要です。オレオレ詐欺の手口が巧妙化し、「病院から電話があった」として医療情報を聞き出そうとするケースが増えています。

実際に対応した事例では、「お母様が入院されているようですが、保険の確認のため生年月日と既往歴を教えてください」という電話で個人情報を騙し取られたケースがありました。このような詐欺から身を守るためにも、日頃からの情報セキュリティ意識が重要です。

今後の医療とサイバーセキュリティ

今回のSynnovis事件を受けて、世界各国の医療機関はサイバーセキュリティ対策の見直しを進めています。しかし、完璧なセキュリティシステムは存在しません。

私たちにできることは、自分自身の情報を可能な限り保護し、医療サービスを安全に利用することです。特に:

・信頼できる医療機関を選ぶ
・個人の端末でのセキュリティ対策を徹底する
・怪しい連絡や要求には応じない

これらの基本的な対策が、結果的に医療全体のセキュリティ向上にもつながります。

まとめ:命を守るサイバーセキュリティ

サイバー攻撃が人命に直接関わる時代となった今、セキュリティ対策はもはや「あったほうがいい」ものではなく、「なければ危険」なものになりました。

医療機関のシステムダウンで治療が受けられない、検査結果が遅れる、こうした事態が現実のものとなっています。私たち一人ひとりができる対策から始めて、より安全な医療環境の実現に貢献していきましょう。

一次情報または関連リンク

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