最近、中国地方の企業や病院で立て続けにサイバー攻撃が発生しているニュースを目にした方も多いのではないでしょうか。物流会社の受発注システムがストップしたり、病院の診療に影響が出たりと、もはや他人事ではない状況になっています。
私はフォレンジックアナリストとして、実際にこうした攻撃の被害調査に携わることがありますが、正直なところ「もう少し基本的な対策をしていれば防げたのに…」と感じるケースが本当に多いんです。
実際に起きた攻撃事例から見える共通点
広島県内の物流会社では、3月にサイバー攻撃を受けて受発注システムが完全にストップしました。この手の攻撃で特に厄介なのは、単純にシステムが止まるだけでなく、取引先との信頼関係にも影響が出てしまうことです。
私が過去に調査した類似事例では、以下のような共通点が見られました:
- 古いソフトウェアを使い続けていた
- 従業員のセキュリティ意識が不十分だった
- 定期的なバックアップを取っていなかった
- 不審なメールやファイルに対する警戒心が薄かった
特に中小企業の場合、「うちみたいな小さな会社が狙われるわけない」という油断が一番危険です。実際には、大企業よりもセキュリティが甘い中小企業の方が狙われやすいのが現実なんです。
今すぐできる基本的な対策
難しい話は置いておいて、まずは今すぐできる基本的な対策から始めましょう。
1. アンチウイルスソフト の導入・更新
これは本当に基本中の基本です。「無料のセキュリティソフトで十分」と思っている方もいるかもしれませんが、ビジネスで使うパソコンには、やはり有料の信頼できるアンチウイルスソフト
を導入することをお勧めします。
無料版と有料版の違いは、検出率だけでなく、リアルタイム保護の精度や、怪しいファイルをクラウドで即座に解析する機能などにあります。月額数百円の投資で、何十万円、何百万円の損失を防げると考えれば、決して高い買い物ではありません。
2. VPN の活用
最近のサイバー攻撃では、公共のWi-Fiを経由した情報窃取も増えています。外出先でのインターネット接続には、必ずVPN
を使用することをお勧めします。
特に、営業担当者が外出先でクラウドサービスにアクセスする際や、在宅勤務でのインターネット接続時には、VPN
は必須と言えるでしょう。
3. 定期的なバックアップ
攻撃を受けても事業を継続できるかどうかは、バックアップがあるかどうかで決まります。理想的には、以下の「3-2-1ルール」を守りましょう:
- 3つのコピーを作成する
- 2つの異なるメディアに保存する
- 1つは離れた場所に保管する
クラウドストレージサービスを活用すれば、比較的簡単に実現できます。
従業員教育の重要性
どんなに高価なセキュリティソフトを導入しても、従業員が怪しいメールを開いてしまえば意味がありません。定期的に以下の点を確認しましょう:
- 知らない送信者からのメールは開かない
- 添付ファイルは慎重に扱う
- 不審なリンクはクリックしない
- パスワードは定期的に変更する
- 同じパスワードを使い回さない
被害を受けた時の対処法
万が一攻撃を受けてしまった場合、パニックにならずに以下の手順で対処しましょう:
- すぐにネットワークから切断する
- 被害状況を確認する
- 警察に届け出る
- 専門家に相談する
- 取引先やお客様に適切に報告する
初動対応を間違えると、被害が拡大してしまう可能性があります。事前に対応手順を決めておくことが重要です。
まとめ:完璧を目指さず、確実な対策を
サイバーセキュリティは「完璧」を目指すと、コストも時間もかかりすぎて現実的ではありません。まずは基本的な対策を確実に実施し、段階的にレベルアップしていくことが大切です。
今回紹介した対策は、どれも今すぐ実践できるものばかりです。「明日からやろう」ではなく、「今日から」始めてみてください。あなたの会社を守るのは、結局のところ、あなた自身の行動なのですから。