新興プラスチックスがランサムウェア被害|中小企業のサイバー攻撃対策の現実

2025年6月18日未明、新興プラスチックス株式会社(東京都江東区)がランサムウェア攻撃の標的となり、社内の情報システムが暗号化される深刻な被害を受けました。この事件は、中小企業が直面するサイバーセキュリティの現実を如実に示しています。

事件の概要と被害状況

今回の攻撃では、外部からの不正アクセスにより複数の社内システムがランサムウェアに感染し、重要なデータが暗号化されました。同社は迅速に対策本部を設置し、外部の専門家の支援を受けながら復旧作業を進めています。

幸い、現時点では情報漏えいの事実は確認されておらず、日常の受発注業務や取引先とのやり取りには影響が出ていないとのことです。しかし、この状況は決して楽観視できるものではありません。

中小企業を狙うランサムウェアの実態

私がフォレンジック調査で関わった事例では、中小企業のランサムウェア被害が年々増加しています。攻撃者は大企業よりもセキュリティ対策が手薄な中小企業を意図的にターゲットにしているのが現状です。

なぜ中小企業が狙われるのか

  • セキュリティ専門人材の不足
  • 限られたIT予算によるセキュリティ投資の優先度の低さ
  • 従業員のセキュリティ意識のばらつき
  • 古いシステムやソフトウェアの継続使用

ランサムウェア攻撃の典型的な手口

フォレンジック調査の経験から、ランサムウェア攻撃は以下のような段階を経て実行されます:

  1. 初期侵入:フィッシングメールや脆弱性を突いた侵入
  2. 権限昇格:システム内での権限拡大
  3. 横展開:ネットワーク内の他のシステムへの感染拡大
  4. データ窃取:暗号化前の機密情報の収集
  5. 暗号化実行:ランサムウェアによるデータ暗号化
  6. 身代金要求:復号キーと引き換えの金銭要求

実際のフォレンジック調査事例

ある製造業の中小企業では、従業員が受信したフィッシングメールから始まったランサムウェア攻撃により、3日間の業務停止を余儀なくされました。調査の結果、攻撃者は侵入から暗号化まで約2週間をかけて慎重に準備していたことが判明しています。

この事例で特に問題だったのは、バックアップシステムも同時に暗号化されていたことです。多くの企業がバックアップを取っていても、適切に分離されていないケースが散見されます。

効果的なランサムウェア対策

1. エンドポイント保護の強化

従来のアンチウイルスソフト 0では検知できない未知のランサムウェアが増加しています。AI技術を活用した次世代のアンチウイルスソフト 0により、行動分析ベースでの検知が重要になっています。

2. ネットワークセキュリティの向上

社外からのアクセスにはVPN 0の利用が効果的です。特にリモートワークが増加している現在、安全な通信経路の確保は必須要件となっています。

3. バックアップ戦略の見直し

3-2-1ルール(3つのコピー、2つの異なるメディア、1つのオフサイト保管)に従ったバックアップ運用が重要です。エアギャップ(物理的に分離された)バックアップの実装も検討すべきでしょう。

インシデント発生時の対応手順

もしランサムウェア攻撃を受けた場合、以下の手順で対応することが重要です:

  1. 被害拡大の防止:感染端末のネットワーク切断
  2. 証拠保全:フォレンジック調査のためのデータ保護
  3. 関係機関への報告:警察、監督官庁への通報
  4. 専門家への相談:外部セキュリティ専門家の支援要請
  5. 復旧作業:クリーンな環境でのシステム復旧

今後の展望と対策の重要性

ランサムウェア攻撃は今後も巧妙化・多様化していくことが予想されます。新興プラスチックス株式会社の事例のように、適切な初動対応により被害を最小限に抑えることは可能ですが、予防策の実装が何より重要です。

中小企業においても、限られた予算の中で効率的なセキュリティ対策を講じることで、このような脅威から組織を守ることができます。特に、エンドポイント保護とネットワークセキュリティの両面からのアプローチが効果的です。

一次情報または関連リンク

セキュリティ対策Lab – 新興プラスチックス株式会社ランサムウェア被害

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