Call of Duty: WW2で発生したRCE攻撃の深刻な実態
2025年6月、Game PassでCall of Duty: WW2のPC版に追加された直後、プレイヤーから恐ろしい被害報告が相次ぎました。攻撃者によってメモ帳が勝手に起動し、デスクトップの壁紙が弁護士の顔写真に変更される、さらには「PCを乗っ取った」というエラーメッセージが表示されるなど、まさにホラー映画のような状況が現実となったのです。
これらの被害はすべてRCE攻撃(リモートコード実行攻撃)によるものでした。Activisionは緊急対応として、Microsoft Store PC版のオンライン機能を停止せざるを得ませんでした。
RCE攻撃とは何か?現役CSIRTが解説する攻撃手法
RCE攻撃とは、攻撃者が外部のPCやネットワーク上で悪意のあるコマンドを実行するサイバー攻撃です。簡単に言えば、あなたのPCを遠隔操作で乗っ取る攻撃手法です。
過去の事例から見るRCE攻撃の脅威
実は、ゲーム業界では過去にもRCE攻撃が発生しています:
- GTAオンライン:RCE脆弱性を悪用した攻撃により、一時的にマルチプレイが停止
- ダークソウル:PC版でRCE脆弱性が発見され、緊急メンテナンスを実施
- Call of Duty: WW2:今回の事件で、攻撃者がデスクトップを自由に操作
フォレンジック調査で判明したRCE攻撃の実際の被害
私がフォレンジック調査を担当した過去の事例では、RCE攻撃による被害は想像以上に深刻でした。
個人ユーザーの被害事例
事例1:フリーランスデザイナーのAさん
オンラインゲームをプレイ中にRCE攻撃を受け、作業中のデザインファイルが暗号化されました。バックアップを取っていなかったため、3か月分の作業データを失いました。
事例2:大学生のBさん
ゲーム中にPCが乗っ取られ、SNSアカウントの認証情報が盗まれました。その後、友人に詐欺メッセージが送信され、人間関係にも影響が出ました。
中小企業の被害事例
事例3:IT企業C社(従業員20名)
社員の一人がゲームをプレイ中にRCE攻撃を受け、社内ネットワークに侵入されました。顧客データベースへのアクセスが試みられ、緊急でセキュリティ監査を実施する羽目になりました。
RCE攻撃を防ぐための具体的な対策
1. 個人ユーザーができる対策
基本的な防御策
- 信頼できるアンチウイルスソフト
を導入し、リアルタイム保護を有効にする
- OSやアプリケーションを常に最新版にアップデート
- 不審なファイルやリンクを開かない
- 定期的なバックアップの実施
ゲーマーに特化した対策
- 公式ストア以外からのゲーム入手を避ける
- マルチプレイ時はVPN
を使用してIPアドレスを隠す
- ゲーム用PCと重要データを保存するPCを分離
- Steam、Epic Games、Battle.netなどの公式プラットフォームを使用
2. 中小企業の対策
技術的対策
- 企業向けアンチウイルスソフト
の導入
- ネットワーク分離(業務用とプライベート用)
- 定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
の実施
- 従業員のセキュリティ教育の徹底
運用面での対策
- インシデント対応計画の策定
- 定期的なセキュリティ監査
- 従業員のゲーム利用に関するポリシー策定
- 重要データの暗号化とバックアップ
もしRCE攻撃を受けた場合の対処法
緊急対応手順
- 即座にインターネット接続を切断
- PCの電源を切らず、証拠保全を優先
- セキュリティ専門家に相談
- 関係者への連絡(企業の場合)
- 被害範囲の調査
フォレンジック調査の重要性
実際の被害調査では、以下の点が重要になります:
- 攻撃の侵入経路の特定
- 被害範囲の確定
- 盗まれた可能性のあるデータの特定
- 攻撃者の痕跡調査
- 再発防止策の提案
今後予想されるRCE攻撃の動向
マルウェア情報をまとめるVx Undergroundの専門家が指摘するように、現在の攻撃者は「主にミームを用いて人々をからかう」程度に留まっています。しかし、この技術が悪意のある攻撃者に使われれば、マルウェアやランサムウェアの展開が可能になる極めて危険な状況です。
想定される将来的な脅威
- ランサムウェア攻撃:ゲーム経由でPCを暗号化
- 情報窃取:ゲームアカウントから個人情報へ
- ボットネット化:乗っ取ったPCを攻撃基盤に利用
- 企業ネットワーク侵入:社員のゲーム経由で企業システムへ
まとめ:今すぐできるRCE攻撃対策
Call of Duty: WW2の事件は、ゲームが単なる娯楽ではなく、深刻なサイバーセキュリティリスクを抱えていることを明確に示しました。
今すぐ実践すべき対策
1. **信頼できるアンチウイルスソフト
の導入**
2. **ゲーム時のVPN
使用**
3. **定期的なWebサイト脆弱性診断サービス
の実施**(企業向け)
4. **従業員教育の徹底**
5. **インシデント対応計画の策定**
現代のサイバー攻撃は、日常的な活動の中に潜んでいます。ゲームを楽しむ権利を守るためにも、適切なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。