Call of Duty: WW2で発生したRCE攻撃の衝撃
2025年7月、ゲーム業界に衝撃が走りました。6月30日にGame Passに追加されたばかりの『Call of Duty: WW2(コール オブ デューティ ワールドウォーII)』のMicrosoft Store PC版で、深刻なRCE(リモートコード実行)攻撃が発生し、Activisionがオンライン機能を緊急停止したのです。
フォレンジックアナリストとして数多くのサイバー攻撃事例を分析してきた私が、この事件の詳細と対策について解説します。
実際に報告された被害の内容
今回のRCE攻撃で報告された被害は以下の通りです:
- メッセージを記したメモ帳が勝手に起動
- デスクトップの壁紙がActivisionが雇った弁護士の顔写真に変更
- PCを乗っ取ったことを記したエラーメッセージが表示
マルウェア情報をまとめるVx Undergroundの創設メンバーであるsmelly氏は「幸いなことに、現時点で攻撃者は主にミームを用いて人々をからかうことに関心があるようだ」とコメントしていますが、これは氷山の一角に過ぎません。
RCE攻撃とは何か?フォレンジック専門家による解説
RCE(Remote Code Execution)攻撃とは、攻撃者が外部のPCやネットワーク上で悪意のあるコマンドを実行するサイバー攻撃です。この攻撃の恐ろしさは、被害者のPC上で攻撃者が自由にプログラムを実行できる点にあります。
過去の類似事例
実は、ゲーム業界でのRCE脆弱性悪用は今回が初めてではありません:
- 『GTAオンライン』でのRCE脆弱性
- 『ダークソウル』PC版でのRCE攻撃
これらの事例では、いずれもマルチプレイ機能が一時的に停止される事態となりました。
今回の攻撃で懸念される本当の脅威
表面的には「ミーム」や「いたずら」に見える今回の攻撃ですが、フォレンジック調査の現場では、こうした攻撃の背後により深刻な脅威が潜んでいることを知っています。
攻撃者が展開可能な脅威
- マルウェアの配布:キーロガーやスパイウェアのインストール
- リモート管理ツール:継続的なPC制御
- ランサムウェア:ファイル暗号化による身代金要求
- 個人情報の窃取:パスワードやクレジットカード情報の盗難
- 踏み台攻撃:他のシステムへの攻撃拠点として利用
実際のフォレンジック調査事例
私が担当したケースでは、最初は「デスクトップの壁紙が変わった」という軽微な報告から始まりましたが、詳細な調査により以下の事実が判明しました:
- 攻撃者が3週間にわたってシステムに潜伏
- 銀行口座の情報を含む個人データが外部サーバーに送信
- 感染したPCが他の企業ネットワークへの攻撃に利用
「ただのいたずら」だと思っていた被害者の損失額は、最終的に数百万円に上りました。
個人ユーザーがすべき対策
即座に実行すべき緊急対応
1. **Call of Duty: WW2のプレイを即座に停止**
2. **ネットワークからの切断**
3. **アンチウイルスソフト
の完全スキャン実行**
4. **パスワードの変更**(特に重要なアカウント)
5. **システムの復元ポイントの確認**
長期的なセキュリティ対策
- 定期的なセキュリティ更新:OS、ゲームクライアント、セキュリティソフトの更新
- ネットワーク保護:VPN
の使用でトラフィックを暗号化
- バックアップの強化:重要データの定期的なバックアップ
- 権限管理:管理者権限での不要な実行を避ける
企業・組織が取るべき対策
従業員がゲーム経由で感染した場合のリスク
企業環境では、従業員の個人PCやBYODデバイスからの感染が企業ネットワーク全体に波及する可能性があります。過去の事例では:
- 従業員のゲーム用PCから企業VPNへの侵入
- 感染したデバイスからの機密情報流出
- 企業ネットワーク内でのラテラルムーブメント
企業が実施すべき対策
1. **セキュリティポリシーの見直し**
– BYODデバイスでのゲームプレイに関する規定
– インシデント発生時の報告体制
2. **技術的対策**
– Webサイト脆弱性診断サービス
の定期実施
– エンドポイント保護の強化
– ネットワーク監視の向上
3. **従業員教育**
– RCE攻撃に関する啓発
– 怪しい症状の報告方法
Activisionの対応とその評価
Activisionは被害報告を受けて迅速にMicrosoft Store PC版のオンライン機能を停止しました。この対応は評価できますが、フォレンジックの観点から見ると、さらなる対策が必要です。
今後期待される対応
- 詳細な調査結果の公表:攻撃手法と影響範囲の明確化
- セキュリティパッチの提供:脆弱性の修正
- 補償制度の検討:被害者への適切な対応
- 再発防止策の実装:セキュリティ監査の強化
他のゲームでも発生する可能性
今回の事件は、オンラインゲーム全般に共通する脅威を浮き彫りにしました。特に以下の特徴を持つゲームでは注意が必要です:
- ユーザー生成コンテンツを扱うゲーム
- P2P通信を使用するマルチプレイヤーゲーム
- モッド対応のゲーム
- 古いコードベースを持つゲーム
まとめ:今すぐできる対策を実行しよう
Call of Duty: WW2で発生したRCE攻撃は、オンラインゲームの新たな脅威を示しています。「ただのいたずら」だと軽視せず、以下の対策を今すぐ実行してください:
1. **アンチウイルスソフト
の最新版を使用**
2. **VPN
でネットワーク通信を保護**
3. **定期的なセキュリティ更新の実施**
4. **怪しい症状があれば即座に専門家に相談**
企業の方は、Webサイト脆弱性診断サービス
の実施も検討してください。
このような攻撃は今後も発生する可能性が高く、適切な対策を取ることが重要です。フォレンジックアナリストとして、皆さんの安全なゲーム環境の維持をサポートしていきたいと思います。
一次情報または関連リンク
Call of Duty: WW2『Microsoft Store PC版』でRCE攻撃によるPCへの被害が発生か。Activisionがオンライン機能を停止